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親子と地域を繋げたい!つながり、ひろがる!加茂お絵かきプロジェクト

Community Nurse Company 株式会社の本社・拠点がある島根県雲南市。
雲南市では「元気になるおせっかい」を広げたいとの思いから、既にコミュニティナース的存在として活動しているまちの人を巻き込み、一緒に成果を出していきましょうとチームで動き出しています。
医療職にこだわらず、お互いの強みを出し合いながら全力で議論する「地域おせっかい会議」から生まれるアクションとまちの人とのストーリーを「思いを繋ぐおせっかいのバトンリレー」として連載を始めます。

2021年6月、雲南市の加茂郵便局の窓ガラスに子どもたちが元気いっぱいに描いた絵は、訪れる人の心を和ませました。その後も小学生、中学生と回を重ねるごとに世代を広げ、関係者を巻き込み進んでいった加茂お絵描きプロジェクト。実は地域おせっかい会議を通じて様々な関係者の「願い」と「できること」が編み合わさって実現しました。

その発端として地域おせっかい会議で発案した青木さんと、プロジェクトを支えた加茂郵便局の速水さんにお話を聞きました。

青木 優子(あおき・ゆうこ)
  加茂子育て支援センター 職員/社会福祉法人 たんぽぽ
速水 久弘(はやみ・ひさひろ)
  雲南市加茂郵便局 局長

——まずは地域おせっかい会議での発案のきっかけとなった、青木さんの「願い」は何だったのでしょう。

青木:私が働いている「加茂子育て支援センター」は、地域に住む親子が遊びに来る場所です。利用される方たちと関わる中で、最近は子育て中の親子と地域の多様な世代の人たちの関わりが少なくなってきたなと感じていました。例えば以前は小さなお孫さんをおじいさん、おばあさんが連れてくることもあったのですが、それも少なくなりました。地域での繋がりが希薄化する一方で、子育て中の親子さんは地域の季節行事に関心があったり、交流を求めているのを感じました。

そこで子育て中の親子と地域住民が多世代交流できるような、そんな「地域に開かれた子育て支援センターになりたい」という思いで地域おせっかい会議で発案させてもらいました。

地域おせっかい会議で発案する青木さん

——その後すぐに加茂郵便局長の速水さんから「よかったら郵便局にお絵描きしに来ない?」とお誘いがあったのですよね。速水さんはなぜすぐに声を掛けられたのですか?

速水:昔から、この郵便局の窓ガラスに誰か絵を描いてくれないかな。描いてくれたらかっこいいのにな、と思ってたんです。

加茂郵便局長 速水さん

それと実は、青木さんたちからは地域おせっかい会議で発案する以前にも相談を受けていて、地域の人と気軽につながるきっかけづくりを何か一緒にできないかという話をしていたんです。けどその時は妙案が出なくて。絵を描く話も少しはあったと思うのですが、具体的な話には至りませんでした。

そして、青木さんたちが発案された会議に自分も参加していたのですが、他の参加者さん達から「地域に開かれた子育て支援センターになるには、外に出て活動してみては」という意見が多く出たんです。

それを聞いて、郵便局の窓に絵を描いてもらう活動で来てもらえるかな?と思ったんです。外向きの活動という方向性には自分も賛成でしたし、あとは実際のところ、子育て支援センターさんがいきなり地域に出て活動するのはハードルが高いのではと思ったので、一緒にやりませんか?とお声をかけしました。

実際の加茂郵便局の外観

——そこから実際の活動にはどのようにつながっていったのですか。

速水:まずは雲南ゆかりのプロの画家の方にも協力してもらおうという話もあったので、その方を交えてオンラインでの打ち合わせから始まりました。その方からは「テーマを明確にした方がいいですよ。地域の人が見て楽しく、書き手も楽しいものがいい。新型コロナの影響もあるので、その辺りも考えて決まるといいですね。」とアドバイスをいただきました。

青木:それがまずこの活動に向き合う機会でしたね。6月には子どもたちとお絵描きができるのかを試したくて、実際に子育て支援センターに来る子どもたちと郵便局の窓に絵を描いてみることにしました。けれど子育て支援センターに来るお子さんは未就学児が多いので、「絵」にはなりにくいのではと思い、小学生の子を持つ地域の知り合いにも声をかけてお絵描きをしてみました。

速水:子どもたちの描いた絵は地域の方にもとても好評でした。そしてその経験はその後、メンバーの中で「大きなイベントや、立派な作品をつくることもいいけど、小さな子が絵を描き、それを親子で見に行ったりするのが素敵じゃない?」という気づきにつながったと思います。

——実践から皆さんが大切にされたい思いが再確認できたのですね。そしてその気づきを踏まえて、どのような活動に展開されたのでしょうか。

速水:次の活動は何をするか話し合った会議で、一番やりたいことは何かと聞かれ、自分は花火の絵を描きたいと言ったんです。新型コロナの対策で加茂町の「二十三夜祭」という夏祭りが前年は中止となり、その年も実施未定だったので(実際は中止)、「二十三夜祭の花火を描こう!」というテーマに決まりました。それを今度は小学生に描いてもらったら面白いね、という話になったんですが、その会議には小学校ともつながりの深い加茂の自主組織に詳しい人も参加していて、その方を通じて加茂まちづくり協議会さんにも一緒に活動してもらえないかすぐに打診してもらうことができました。

するとありがたいことにご快諾。加茂まちづくり協議会さんは毎年夏に、小学生の夏休みの居場所づくりの事業もされており、その時も丁度児童が交流センターの外でも、地域住民と一緒に活動できる企画ができないか検討されていたそうです。そこで、お絵描きプロジェクトに居場所づくり事業として連携していただき、小学校への告知やチラシ作りも含め全面的にご協力いただきました。

——そしてこの小学生を中心としたお絵描きの回には、加茂中学校の生徒さんや校長先生にも来てもらっていたんですよね。

青木:そうなんです。実は加茂子育て支援センターの責任者である森山さんは、もともと加茂中学校の活動にも関わりがあり、忙しい中学生も、地域のことに関わってほしいなという思いがありました。森山さんは、中学校と「おせっかい人マップ」という取り組みでも連携していたので、コミュニケーションもとりやすく、美術部の顧問の先生や校長先生にもお願いしてくれました。描いてもらう絵のテーマは、例年なら10月に開催される運動会「加茂町 町民体育大会(通称:町体)」。この年も新型コロナの影響で中止が決まっていました。

速水:加茂中学校の美術部のところへは、森山さんと一緒に自分もお願いに行きました。ちょうど校長先生も、「生徒達に学校の外でも活動させてあげたい」という願いがあったそうで、お絵描きプロジェクトへの参加も快く承諾していただきました。

そして中学生の手で10月に描き上がった「町体」の絵、これがすごかった。力作でした。けれど日が短くなる時期に差し掛かり、下校時には暗くなり絵が見えにくいので、暗くなるので、せっかくならと、12月くらいまでライトアップをしたりしていました。中学生たちにも改めて森山さんとお礼に行ったら、「またやりたい」と言ってくれて嬉しかったですね。

——活動を続けるにつれ、より多くの関係者の「もっとこうしたいな」という思いと「こんなことできそうだよ」というおせっかいが加わっていったんですね。地域の方からはどんな反応がありましたか?


青木:最初のお絵描きをした後、用事で郵便局に行くことがあり、たまたま居合わせたおばあさんに私つい「絵を見られました?」って声を掛けちゃったんです。それから2人で絵を見に行くと、「コロナのことで気が滅入ってたけど、元気が出たわ!」と、とても喜んでもらえて嬉しかったです。

速水:まさか窓ガラスに絵が描いてあるなんて、という反響も大きかったです。元気のいい絵に光が射し込むと、ステンドグラスみたいな雰囲気も出ていました。土日にもわざわざ見に来てくださった方も多くいたと教えてくれた人もいました。

——加茂郵便局が面しているのは往来が多い道なので、たくさんの人が目にされたでしょうね。活動を通じて、加茂子育て支援センターにはどんな変化があったのでしょう。利用する方たちと地域とのつながりを感じることは増えましたか?

青木:子育て支援センターの利用者さんも、私たちが一緒に活動をしていることで他の地域活動にも関心が増して、「参加してみたい」という声も聞くようになりました。また地域の方にも参加いただける「焼き芋会」という行事には、速水さんや加茂交流センターのスタッフさんや地域おせっかい会議事務局の高木さんたちも来てくださり、直接交流してもらう機会もつくれました。

また速水さんは子育て支援センターの入り口にメダカを持ってきてくださっているのですが、よく様子を見にきてくれては「足しといたよ!」と声を掛けてくれて。それを見て児童クラブを利用する小学生や児童クラブのスタッフまで「メダカほしいな〜。ちょっともらっていい?」と。

「いいですよ〜、また郵便局の速水さんに頼んでおきますね」なんて言うコミュニケーションも生まれています。

——お話を伺うとお二人ともとても楽しそうに話されるのが印象的です。このプロジェクトが楽しく進んだ理由は何だと思われますか?

青木:実は当初プロの画家さんにも来てもらおうという話をしていたときには、そのための費用も助成金を申請しようか、クラウドファンディグをしようか、という話題もあがっていました。けれどメンバーの中から「最初に大きなことをすると、それで燃え尽きて終わっちゃうかもしれない。それは寂しいから、できる範囲で続けて、少しずつ広がればいい」という意見があって、私もそれもそうだなと思ったんです。

速水:最初から大きなことをしようとしないほうが動きやすいかもしれないね。結局「細く長くでも地域と繋がりながらやっていこう」という方針に落ち着いた頃から、自然と人の繋がりも増えたように思います。また、月に1回は加茂子育て支援センターに集まって会議をしていたのも、メンバー間の連携を生むポイントだったと思います。

青木:その集まりは途中から「加茂おせっかい会議」と呼ぶようになりました。集まるうちに少しづつ顔ぶれも増えていって。子育て支援センターだけではできなかったことも、メンバーの「あの人もこういう思いがあるから一緒にできるんじゃない?」というアイデアと紹介がどんどん加わって、たくさんの方の協力や見守りが得られたと感じています。

——活動する人の「楽しい」が中心にあることで、さらに色んな人の思いとおせっかいが引き出され、うまく重なっていったんですね。

——
青木さんにとっては「出ると元気になるところ」であり、速水さんにとっては「楽しいこと探しができる場所」だという地域おせっかい会議は、あなたの「こんなおせっかいをしたい」という願いを表明することで、さらに色んな人から素敵なおせっかいが引き出されるきっかけになるかもしれない場所。

地域おせっかい会議は、あなたの「健康おせっかい」の種もお待ちしています。

ライター 平井ゆか


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