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太陽に思い知る

頭の中がぐるぐると絡まった毛糸のように騒がしくて、文章を書こうにも言葉が浮かんでこないし、誰かに話を聞いてもらおうと思っても何を話せばいいのかわからないし、歌を歌ってみようと思ってもうまく声が出せなかったりした。
まるで何かに閉じ込められたみたいに、息苦しくて、どうしようもなくて、背中ががちがちと強張る感覚から抜け出せなかった。

太陽は容赦ない。
わたしの好きな「お日さま」とは最早言えないような厳しさを朝から向けてくる。あの暖かく柔らかい光の線が好きだったけど、今の季節にはその優しさが感じられない。
わたしが子供の頃は、こんなにも日差しに厳しさを感じることはなかったと思う。扇風機をつけて、前を陣取って声を出したら、勝手に宇宙人みたいな声になるのを楽しめていたし、畳に寝転んだら接触冷感のシーツなんてなくてもひんやりして気持ちよくお昼寝ができた。
夕方になれば打ち水をして、家の前に生ぬるくも心地いい風が吹いたし、気怠い日はアイスクリームを食べたら体が冷えすぎて寒くなるほどだった。
子供の頃の、甘い夏の記憶。
いつからこんなに夏に厳しさを感じるようになったんだろうか。

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