宮本常一 メモは全てカタカナで
宮本先生に初めて会ったのは、昭和39年。週刊読売の記事を一読、「先生らしくない顔をした面白そうなおじさんだ」と、着任したばかりの研究室を訪ねた。先生は「いいところへ来た」と言わんばかりに喋りまくり、私が岡山の神主の倅だと聞くと各地方の神主の拝み方の違いを熱弁した。何度か通ううち、「あっちへ行こう」「こっちへ行こう」と連れ出され、終いには「就職なんてやめて、歩け」。成り行き任せの私は先生にすっかり惑わされたのだ。
「咳払いや笑い声以外は全部書け」調査では後ろでひたすらメモを