漫画『球場のシャーロット』(著:黒宮魚)単行本1巻発売に寄せて
令和の世の中は、コンテンツであふれている。
クリエイターたちは、自分の創作物を見てもらうための戦略を、これまで以上に意識しなければならない世の中となった。
かく言う私も、noteを執筆する際にはSEO対策に気を配っているし、それが功を制して検索結果の上位に自分の記事が表示されると、とてもうれしい。
そういった状況の中、マーケティングにマーケティングを重ね、「バズること」を第一目標としてコンテンツが作られることも、このご時世増えているように思われる。
私自身、それ自体を別に悪いことだと思っているわけではない。
ただバズり第一主義のご時世の中、「作者の好き」が詰まった創作の原点のような作品に出会うと、思わず胸が躍ってしまうのである。
私は芳文社の漫画アプリ『COMIC FUZ』(以下FUZ)の月額プランに、長年課金している。
ある日私がFUZを開くと、見覚えのある球場をバックに赤髪のかわいい女の子が立っているビジュアルが目に飛び込んだ。
「もしかして、FUZでカープ女子の漫画が始まった……?」
期待に胸膨らませながら、私は新連載「『球場のシャーロット』の第1話を読んだ。
期待以上だった。
舞台は広島、広島に席を置く球団(なお広島東洋カープではない。察しましょう)を愛する義妹との義兄妹ラブコメ……。
私の好きなものがあまりにも全部詰め込まれ過ぎていて、危うく作者が私かと勘違いするところだった(作者の黒宮魚先生ごめんなさい🙇♀️)。
まずは作品の舞台。
広島県民は、広島のことが大好きである。
これはあまりにも自明な事実のため、ソースは不要である。
かく言う広島在住の私も、広島のことが大好きである。
広島の球団をテーマに扱っている『球場のシャーロット』の舞台は、もちろん広島である。
作中では、マツダスタジアムそっくりの球場(なおマツダスタジアムではない。察しましょう)や、山陽本線・広島電鉄(通称:市電)の駅などが精緻に描かれていたり、広島市内にあるバッティングセンター・ビバーチャにそっくりなバッセン(なおビバーチャではない。察しましょう)が登場したりする。
加えて、野球選手以外の苗字は「白市」「天神川」「瀬野」と、山陽本線の駅名から取られていたり、ヒロインのシャーロットが推している野球選手の名前が「銀山(『かなやま』って読むんよ)」だったりと、多くのキャラクター名に広島の地名が使われている。
作品を一通り読むだけでも、作者の広島愛がひしひしと伝わってくる。
さすが作者は、Xの居住地欄を「輝きの向こう側(広島)」と設定しているアイマスPなだけある。
続いて、広島東洋カープ要素。
もちろん作中の球団「広島ゴールドフィッシュ」や各選手は全て架空のものであり、実際の人物とは全く関係がない。
しかし、ゴールドフィッシュとカープの同じ背番号の選手は、名前、人柄、ポジションやフォームといった野球選手としての特徴など、非常に似通っている部分が多い(小声)。
またこれは、敵チームの選手についても同じことが言える。
また、シャーロットが「つらいです……」とベソをかくなど、随所にカープ関連の小ネタがはさまれる。
カープファンなら、より本作品を楽しめることだろう。
野球やカープに興味がない場合は、FUZのコメント欄に小ネタを解説してくれるニキがたくさんいるので、そちらを活用するとより作品が楽しめるであろう。
かく言う私自身も、決して知識量が豊富なカープファンな訳ではないため、「代走・野間を探す松山」ネタなどは、コメ欄の指摘で気付くことができた。
そして、なにげに最大の魅力は「義兄妹ラブコメ」という点である。
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を筆頭に、2010年代は数多くの妹もののラブコメアニメが放映されていた。
しかし流行り廃りもあるのか、最近ではめっきり見かけなくなっている。
妹ものの供給がない。これは由々しき事態である。
かく言う私自身も、現在進行形で読んでいるヒロインが妹とラブコメは、蒼樹うめてんてーが『ひだまりスケッチ』と並行して連載している『微熱空間』しかない。
ちなみに、夏アニメの『義妹生活』は楽しみにしている。
そこに現れた義妹のシャーロットちゃん!
シャーロットちゃんかわいいよシャーロットちゃん!!
シャーロットちゃん野球に詳しいよシャーロットちゃん!!!
シャーロットちゃん!!!!!!!(語彙力)
また、恐らく数少ない女性読者としての視点としては、主人公の秋葉もかなり好みどストライクなのである。
いきなりの自分語りで恐縮だが、私が好きな男性キャラランキング不動の第1位は、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の比企谷八幡である。
『神のみぞ知るセカイ』の桂木桂馬も捨てがたいが、やはりヒッキーが一番好きである。
『球場のシャーロット』しかり、前作の『先輩、ちょっといいですか?』しかり、黒宮作品の主人公はどことなくヒッキーに近いものを感じるのである。
具体的には、重めの黒髪といったビジュアルや、無気力な雰囲気を醸し出しながらも、ヤレヤレ……とヒロインたちの世話を焼く性格などである。
作者のXを確認したところ、ヘッダーが『江口拓也のぼっちラジオ。』のメール採用者に送られるステッカーだったため、俺ガイルから影響を受けているのは間違いないであろう。
令和の世の中は、コンテンツであふれている。
バズる努力をしないと、せっかく創作したコンテンツは人の目に留まらない。
もちろん、黒宮先生だってバズる努力をしている。
なんと言ったって、『理解る後輩ちゃん』シリーズで多くのフォロワーを獲得するなど、SNSで認知度を大幅に上げた漫画家の代表例である。
だが、そんなマーケティング第一の世の中だからこそ、作者の「好き」が詰まった、作者の好きなものへの「熱量」が詰まった作品が正当に評価されてほしい。
私はそう願わずにはいられない。
野球、広島、年下ヒロイン。
黒宮先生の好きなものへの愛がこれでもかと詰まった熱量の高い作品を、あなたも読んでみてはいかかだろうか。
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