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想像的思考力を育む4つの原則からcommonが目指す理想を見出す。

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ライフロング・キンダーガーデン 創造的思考力を育む4つの原則 ミッチェル・レズニック 村井裕実子 阿部和宏 著 日経BP社

この本の原文の著者である、ミッチェル・レズニック氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボの教授であり、日本の教育現場でも幅広く利用されている「scratch」の開発チームリーダーを務めています。また、彼は30年以上にわたってレゴ社と協力し、プログラミング学習にもよく用いられるレゴ マインドストームロボットキットなどの開発にも大きく寄与されています。

そんなレズニック氏が構える研究グループの名前は”ライフロング・キンダーガーデン”。つまり生涯幼稚園です。21世紀になり、社会はこれまでとはまったく異なる学びを必要としています。社会が目まぐるしく変化し、予測不可能な時代になっている中で必要な創造力を育むために必要なものは何か、その解決策は幼稚園にありました。幼稚園における学習方法、それは遊びながら学ぶこと。例えば積み木で塔を建てる活動において、より高くするにはどうすればいいか構造について考える、またはできた塔を中心とした物語を紡いでいく。物語の中に登場するキャラクターについて理解を深める・・・

これをレズニック氏は”クリエイティブ・ラーニング・スパイラル(創造的な学びのスパイラル)”として捉えています。

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ライフロング・キンダーガーデン 創造的思考力を育む4つの原則より引用

レズニック氏が開発に大きく関わったscratchは、まさにこのスパイラルを実践できるツールとして作られています。ポイントとなるのは「共有」という部分。ただ自分で作るだけでなく、オンラインコミュニティに共有することで、他の人からのフィードバックをもらったり、または他人の作ったプログラムに対して、感想を述べたり。そういった活動を振り返ることで、次の新しい発想が生まれていく。

この創造的な学びを様々な場面で実現していくために、レズニック氏は4つの基本原則を見出しました。それが4つのPと呼ばれるものです。

・プロジェクト(project)
・情熱(passion)
・仲間(peers)
・遊び(play)

そしてこの著書ではこの4つのテーマに沿った形で、レズニック氏が実際に実践してきたこと、目にしてきたことを具体的な事例として紹介しています。

その一つ一つはどれも心が躍るような事例ばかりで、そこで描かれている少年少女は素晴らしい成長を遂げています。もちろんすべてがうまくいくわけではないでしょうし、取り上げられているケースは特筆すべきものだと思います。しかし、レズニック氏が提唱する4つのPが創造的学びにおいて、非常に有効であることは疑う余地はありません。

そしてこの本の最後に書かれれているのは、レッジョ・アプローチです。レズニック氏は社会全体でこういった学びの価値を育むしくみを構築するためのアイデアとインスピレーションがここにあると述べています。

私たちcommonは、試行錯誤をテーマに子どもたちのあらゆる活動を、地域と共に支援することを目指しています。

試行錯誤はまさにクリエイティブ・ラーニング・スパイラルに繋がるものであり、自ら発想したことを、遊びを通じて創造していきます。そしてcommonにおける重要な活動、ミーティングはその創造したことを共有する場になります。発表することは共有するとともに振り返る機会となり、次の発想のヒントを得ていく。試行錯誤とミーティングは両方あることで、その価値は高まります。

さらにレッジョ・アプローチと同じく日々の活動を記録し、それを社会全体で共有していく、それは現代で言えばSNSにあたるでしょうか。特に地域との連携を強めていくことで、社会全体の力を終結させて子どもたちを育んでいく。まさに地域が一体となって子どもたちの成長を支援していく。これがcommonの目指す学びの形です。

私たちはなぜ遊ぶのか?どうやって遊ぶのか?何を遊ぶのか?その答えはこの本の中にすべてありました。普段の活動ではなかなかお伝えしきれないcommonの理想。ぜひこの本を手に取っていただきたいなと思います。

common施設長 山下


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