この危機感,的外れだといいが

少し悲しいニュースを見た。

ニュースで見ただけなので詳しいことは言えないが,ある劇団の公演が軒並み延期・中止になっているそうなのである。

身の回りでもその手のニュースは事欠かない。

例えばアーティストのライブも軒並み中止。閉館したライブハウスも国内にあるようだ。筆者の好きな歌手のツアーも中止になってしまったようで…涙がいくらあっても足りない。


また,国立西洋美術館で行う予定だったナショナルギャラリー展も延期。かなり豪華だっただけに延期も相当ショックなのである。この延期・中止が及ぼしうる影響については素晴らしいnoteを見つけたのでそちらをご覧いただきたい。

近所で行う予定だった版画展も美術館自体休館になったので当然見られない。

緊急事態に優先されるもの

昨今の事情から,とうとう日本国内全域に緊急事態宣言が発動されることになった。感染症の蔓延を防ぐ意味合い,抵抗力の少ない方への感染を防ぎ,国民の健康と医療資源のセーブ。これらを狙った宣言であると理解した。

当然感染を防ぐため外出は控えるようお達しが来ている。この状況であればよほどのことがない限り外出はしたくないだろう。自分もそうだ。食料品や生活必需品以外は成るべく買いに行かない方が賢明だろう。

特に仕事を休むことになった人,学校を休むことになった人,子供が休みになり仕事を休むことになった保護者,生活が崩れた人は数知れないだろう。収益が少なくなった人は明日の食事や家賃を考えるので精いっぱいだと思う。

自分は業種の兼ね合いでこの事態でも休むことは厳しい。それでいて感染リスクもなかなかある。
そんな自分が,この社会状況・医療状況を理解したうえでかなり的外れな危機感を抱いている。

優先順位の低い危機感

冒頭でも話したが,様々な文化事業が軒並み中止や延期に追い込まれている。おそらくだが,なじみのあるコンサートもこのままだと中止せざるを得ないだろう。(2020/4/19:中止が決定しました。)
そうやって様々な芸術や文化に触れる機会がなくなっていく。これがなんとなくだが怖いと感じてしまっている。

「世の中お金ではない」という言葉が世間にはあるがその言葉の説得力が皆無になるのが芸術の世界かもしれない。そう思う瞬間が度々ある。

昔楽器をやっていたのでなんとなくわかるが,楽団の運営,楽器のメンテナンス,消耗品の整備,会場の手配,演奏会一つやるのにも莫大なお金が絡んでいる。アーティストのコンサートはもっとかかっているだろう。ゲストを呼ぶ,演出を考える,曲を考え練習する。莫大なお金と時間がかかっている。

さきほど引用させていただいたスージー・ワイさんのnoteにもあったが美術展をやるのにも莫大な時間とお金がかかっている。ナショナルギャラリーのようなビックイベントはもちろん,ほかにもイベントを抱えている美術館や博物館は多くあったはず。

冒頭で話した劇団は,近くの小中学校でも出前公演をしているようだがそれも今回の緊急事態宣言に伴う休校で中止。

芸術・芸能系の業界は多かれ少なかれ赤字のところが多いだろう。そして一度落ち込んだ収益が戻るまでには時間を要する。芸術の前で「お金」はかなり重要度の高い話だ。もし今回のことで「芸術がお金にならない」と世論や経済を動かす集団が判断したら…
取り返しのつかないことになるのではないか。そんな危機感をずっと感じている。

主張が必要な時

この時期に働きに出ていることから自分が芸術や芸能関係の仕事でないことはお察しいただけるだろう。

少し明かすと医療関係の仕事をしている。
いままで自分は人の健康はすべての文化活動や経済活動を支えている,いわば土台のようなものと思っていたのだ。だから健康は大事なのだ。そう考えていた。

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ところが今回の騒動でその考えは少し違うと思い始めた。

例えば体の健康を守るためにはバランスのいい食事や適度な運動が必要なわけだがまずバランスのいい食事をするにもそれなりにお金が必要である。それだけでない。適度な運動をしてそのあと汗の処理をできるだけの入浴設備だって必要。これがないと汗で体が冷えて風邪をひいてしまう。

また,経済活動には稼ぐ活動も入る。稼ぎ貯蓄を作ることで心身の安定を図る人が大半であろう。投資をする人もいるかもしれない。経済活動自体が人々の健康を支えていた部分もあると改めて知った。

そして一番大事なものである。文化的な活動も心身の健康を助けていたと,数々のイベントの中止を受けてひしひしと感じている。芸術イベントがなくなり,モチベーションが上がらない人もいる。このような事態においても家で楽しめる本や漫画,音楽,アニメ,ドラマなど様々な芸術に心を救われている人間がここにいる。

ここ数日で芸能人が視聴者を元気づけるために歌を作ったり,替え歌を歌ったり,セッションできそうな題材を作ったり…これらの活動が心の健康を保っていることを実感している。

医療や健康は人の活動の基盤となるのは事実だ。しかし社会や文化,経済がなければ医療や健康もまた崩れてしまう。これらのものは持ちつ持たれつの関係であったということにいまさら気づいた。

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感染症は確かにきっちり防いでいかないといけない。今人類が戦うべきなのはウイルスなのは間違いない。

しかし感染症の防止を目的とする自粛が過剰になり,明日を生きるだけで精一杯になり,心身の健康が崩れては元も子もない。

そして心身の健康を保つのに数ある文化・芸術は大事になってくる。それが忘れ去られそうで怖いのだ。
いまこそ,文化や芸術の利点・意義をもっと身近に感じる人が増えてもいいのではないか。もっとそれらが我々を助けていると主張していかないとこれらは下手したらなくなってしまう。自分はそれは嫌である。

それどころではない!と怒られるかもしれない。

しかし心身の健康にかかわることであれば反対する人ばかりではあるまい。
これから文化や芸術のすばらしさを少しでも主張したい。

芸術がなくなった世界で生きるのは,その世界で今の仕事をするのは嫌である。

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