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経験者が語る「2組の夫婦と語る地域みらい留学」開催レポート

登壇者 
・島根県立隠岐島前高校 卒業生保護者 後藤ご夫妻
・島根県立津和野高校 在校生保護者 池本ご夫妻

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自己紹介

池本 父)子どもが2人います。長男は大学1年生。次男が高校進学のタイミングで地域みらい留学に行き、現在島根県津和野高校3年生に在学中です。家はさいたま市にあり、子どもたちが生まれてからはずっとさいたま市育ちです。

後藤 父)横浜市に住んでいます。息子が今年の春に隠岐島前高校を卒業して、大学に進学しました。コロナの関係で大学には行けてはいませんが、今は、一緒に横浜で住んでいます。


Q 地域みらい留学フェスタでの過ごし方、お子さんの進路選択に関する何かアドバイスなどがあったら教えてください。

池本 父)私たちの場合は、次男が中学3年生のときに、地域みらい留学フェスタについて知りました。息子が地方に興味があったということもあって、一緒に行ってみようと思い、家族でフェスタに参加しました。

フェスタでは、色々の高校を見ることが大事だと思ったので、たくさんのブースを回りました。ブースを回っていると、高校生が主体で説明している高校、校長先生が一生懸命説明されている高校、地域活動を支えてくださる方が主体で説明されている高校など、学校ごとに特徴がありました。また、宿泊先も、寮や下宿など地域の特徴も様々だったので、数多く見ることで色々な学校について知ることができてよかったです。ブースは5~6ヶ所回ったと思います。都道府県も色々なところを見てみました。各ブース15~30分でまわることができたので、1番南は鹿児島の高校まで、色々な高校を見た記憶があります。

後藤 父)私たちの家族の場合は、多くの学校の話を聞いたわけではありませんでした。東京や地元の高校もいくつか訪問していて、たまたま島留学があるというのを知って、まずは親だけでどんなのか見に行こうと思って見に行きました。最終的には子どもが決めないと意味がないので、その後オープンスクールに行かせてもらって、本人が「ここに行く」と言って決めたという感じです。

 今の(コロナの)状況では、なかなか現地に足を運ぶのが難しい部分もあるので、高校選びが難しいところはあると思いますが、私としては、親が「この高校いいね」などといった、意見やアドバイスをするのはどうかなと思っているところがあります。かといって、子どもたちが自ら色々な高校を調べることができるかといったら、もちろんできる子もいると思いますが、そうでない子もいると思います。私たちの家庭の場合も、子どもが積極的に高校について調べていたというわけではなかったので、親としては、ちょっと声をかけるみたいなことはしていましたが、なるべく本人が決めるという形をつくらないと思っていました。


Q 各学校の説明会に参加する際、注目していたポイントや意識したことはありましたか?

池本 父)子どもが持病をもっていたので、いざとなったときに医療体制がどうなっているか、お世話になる下宿先の設備などを確認しました。

 また、次男が地域で活動したがっている感じがしたので、高校生が活動するには、どのような実績やサポート体制があるのか質問しました。どうしても、活動をしたいと思っても高校生1人がいきなりするのは難しいと思ったので。


Q 今お子さんが中学3年生だとしたら、どんな様子だと思いますか?

後藤 父)部活だったり、今の中学の活動が重要だと思って生活していると思います。次に高校どうしようというのを子どもが現実的に考えているかというと、自分の息子はそこまで意識していたわけではありませんでした。なので親としては、「こんなとこあるよ」「こんなとこ楽しそうだね」という風に声はかけていました。

 今は現地に直接足を運ぶのは難しい状況ではあると思いますが、オンラインという形でも、現地の関係者の方の話をちょっとでも聞いてもらえると面白いかなと思います。高校の関係の方たち、地元の大人の方たちなど、どういう方が関わっているのかというのを肌で感じてほしいと思います。子どもたちがどんな大人や生徒さんたちに囲まれて過ごすことになるのかというのを、本当なら直接会って話をできるのが1番だと思いますが、オンラインでも感じることが大切だと思います。


Q 地域みらい留学をきっかけに、留学に行かれたご本人やご家庭でどのような変化があったのかお聞きしたいです。

後藤 母)本人の変化は、入学当時より体が大きくなった、大人っぽくなったというくらいで、具体的に何が変わったかというのは、今の時点ではあまり感じるものはないというのが正直なところです。家から学校に通っていた中学までの生活から、全く別の生活になった高校3年間というのは、そのこと自体が大きな変化です。でも実際に地域みらい留学に行っている本人からしてみれば、留学先が生活の場になっていて、それが特別なこという意識はなく、そこで過ごしていると思います。もちろん、色んな事を感じながら生活しているとは思いますが、それはこちらに親には全く分からないこと。なので、本人にしか分からない内面はまだこちらには伝わってきていないのだと思います。本人の人生の中でその変化というのが、いつ出てくるのかは分かりません。でも、何かのときに、「ああ、留学中のこの経験が...」っていうのが、意識的な無意識的なのか分かりせんが、感じられるときが来るのかなと思っています。


Q 3年間でご両親に変化はありましたか?

後藤 妻)私自身に大きな変化があったと思っています。子どもの人生は子どもが決めるべきだし、そうしてきたつもりではありましたが、親は子どもに愛情がありますし、いつも気になる存在なので、近くにいると何かしら影響を与えてしまう部分があると思います。一緒にいたら、多かれ少なかれ口を出したり、「こうじゃない?」と意見を言ったりして、影響を与えてしまうことがあると思います。でも離れて過ごすことで、物理的に親は何もできない状態を3年間過ごして、子どもは子どもの人生を生きる、やりたいことを子どもが自分で決めていかなければならない、ということを頭だけじゃなくて、体の全てを通して、本当にそうあるべきなんだなと感じた自分の変化がありました。そういう風に思ったのは、徐々にかもしれません。「ああ、こういうものなんだな」と、時と共にじわじわと感じていきました。

後藤 夫)親から離れることで、子どもは親以外の大人たちに育てられているとう感覚があると思います。でもそれは、親のそばではできないことだと思うんですよ。親は子どもに対してどこかで期待をもちますよね。でも子どもに対しての期待って、子どもに伝えてもいいのか悩むときが多くありました。伝えるということは、親の考えを伝えることで、それが子どもに影響を与えてしまうことになる気もするのでそこが難しいとこです。アドバイスまではしてもいいのか、期待をしているということをどこまで伝えていいのか、と悩む部分がありました。でも、物理的に離れることで親が成長したのかもしれません。

池本 母)本当にその通りだと思います。そばにいると、気になっちゃうこととかたくさんあると思うんです。でも、離れて暮らすことで、良くも悪くもそれが見えなくなるので、親も子ども自分で決めたりとか、自分でやっていくということをできたというのはすごくよかったと思っています。

 我が家では、わりと父親がアドバイスをしすぎてしまうタイプで「あんまり気にしないほうがいいよ」と子どもに言うのが私の役目だったので、離れることによってその頻度が減ってよかったと思っています。家では進路のアドバイスなどをするのが、お父さんの仕事で、彼のほうがやりがたりですし、色んな人脈を駆使して、情報を集めて「これでどうだ!」とプランを持ってきて、さらに「俺はこう思うぞ!」っていうのを熱く語っているのを横で見ていて、ちょっと誘導しているんじゃないかと思うところがあったので。そうじゃなくて本人が僕ここがいいというところにして欲しかったので、母としては、「お父さんの意見を聞くのはいいけど、決めるのは絶対自分で決めてね!」と息子には言っていました。

池本 父)中学から3者面談はお父さんが行くと決めていたんです。母親が家庭を中心に見ていて、僕が社会に出ているから、中学、高校、大学って社会に近づいていく局面があるからそこにお父さんの出番があるだろうというと思って、進学に関しては僕が役割としてはもっているという役割分担をしていたんだけど、今のようなのが本音だったということですね 笑。


Q 次男が留学をすることで、兄弟への影響はありましたか?

池本 母)直接的にはそんなに。兄のほうが先に進路を決めて高校にいったので、あまり影響はなかったと思います。でも、長男に話を聞くと、「色んなところに出ていって、色んなことをやってすごいな」というのは思っていたようです。長男はこの春に大学に受かって、大学は家から通える距離なのですが、大学の入学説明と一緒にシェアハウスのちらしをもらったらしく、ちょっといいかも!と思ったみたいで、弟に「シェアハウスに住むの、どう思う?」って聞いてみたらしいんですね。そしたら、弟に「絶対いったほうがいい。今のうちに自分で色んな事できるようになったほうが絶対いいよ。社会人になったら時間がなくてそんなことできないかもしれないから!」と言われたそうで、5月の終わりからずっとシェアハウスに入りたいって言っていますね。


Q 保護者として、 学校へ訪問したり、保護者会などはあったりしましたか?学校訪問や交流はどのようにしていましたか?

後藤 妻)学校行事にはできる限り行きたいなという気持ちがあり、年に3回くらい行っていました。この間数えてみたら、オープンスクールから卒業式までトータル12回行っていました。入学式、卒業式と、文化祭、体育祭、面談や授業などに行っていました。

池本 妻)そうですね。私たちも、年に3、4回くらい行っていました。夏と冬にある面談と文化祭、体育祭。何回か行くと、お友達ができて、待ち合わせてご飯を食べたりと、親同士の交流がありました。息子は下宿に住んでいるので、下宿先の子の親御さんと仲良くなったりということもありました。


Q 県外から入学する生徒と地元から進学する生徒がいると思いますが、その違いを感じたことはありますか?

後藤 父)県外からの人たちは、色々な地方から来ていて、入学していからは寮で団体生活をしています。一方、隠岐の子たちは、小さいころから一緒に育った子たちばかりが一緒にいる世界なので、もちろん違いはあります。違いがあるということが、良い悪いということではなくて、違う環境で育った友達同士が付き合っている姿を見ていると、お互いに刺激しあっているというのを感じます。

隠岐島前の場合は島の人たちが、県外生を快く受け入れてくれているというのを感じたので、親としても入りやすかったです。県外から来ていても、歓迎していただいて仲間に入れてもらえるという感覚があり、体育祭、文化祭があると一緒に参加させてもらえる感じがよかったです。少人数だからだと思いますが、1人1人の顔が見えているという感じが良かったですね。

池本 父)これは、地元にずっといる親御さんから教えてもらった話なのですが、次男に会ってから、お子さんが将来あんなことやりたい、こんなことやりたいと言い出したそうなんですね。ずっと地域で育ってきていると、外から入ってきた人の意見や刺激があまりないという中で、次男が色々と活動している姿を横でみたり、話をしていて、お子さんも「大学に行ってみたい」「こんなことを学んでみたい」と言い出したそうで、ありがとうございますみたいな話をされた。それを言われてすごく嬉しかったのを覚えています。それが県内生と県外生が交わるいいことなのかなと思います。

 次男から聞く話だと、県外から来ている子には、2タイプいるそうです。1つ目のタイプは、意識が高く、何かやりたいと思っている子。そういう子は部長になったり、学級委員になったり、生徒会長になったり、主体的にいろいろやるタイプ。一方で、東京や都心の学校があんまり合わなくて県外生として来ているという子たちも結構いるようで、そういう子たちは、地域みらい留学に行くことでリセットした環境でゼロスタートが切れる。だから、彼が見ている限りだと、みんな最初に入ってきた状態よりは、今のほうが自分が出せていて、居心地がよさそうという話でした。

 その話を聞いていて、そういう環境だと県内生の子たちも「県外生=こういう人」というのが固まってなさそうで、いろんなやつがいるんだなと見れていて、それぞれに居場所を作れている感じはしますね。


Q 年に2、3回お子さんの地域みらい留学先に行くことで、保護者の方にも地域に対しての愛着が生まれますか?

池本 母)はい。まちの色んなお店に行って、「息子が高校でお世話になってます」って話をすると、「あーあの子のご両親ですか?」と言っていただくことが多くて。イベントで関わらせてもらったという話をきいたり、何回か行くと「また来たの?」と声をかけていただいたりして。この間も津和野でクラウドファンディングをするということで、一生懸命応援していました。

池本 父)ふるさと納税もしています。あれだけお世話になっていて、町の人や友達に育ててもらっているので、そういう気持ちには自然になりますね。

後藤 父)オープンスクールにいった時点で、私自身もすっかり気に入ってしまって、いいところだなと。自分からすれば、子どもが3年間お世話になったということはもちろん、純粋にそこでの島や海、自然が大好きになっていくというのはありますよね。なので何か出来ることあるなら、協力しないという気持ちがあります。今後も機会があれば、足を運びたいと思っています。たまたまですが、息子の後輩が隠岐島前に行っているので、そうやってまた繋がりが出来ていて嬉しく、次はいつ行けるかとワクワクしています。


Q 地域みらい留学の1番の魅力って何だと思いますか?

池本 父)息子と話していると、コミュ力が上がったとよくいっていますが、地域みらい留学に行って、人と会話する力があがったというのが1番だと思います。同級生同士じゃなくて、地域の大人の人たちと話す機会が圧倒的に増えることで、会話力が上がったという話をしていました。

 息子は東京のイベントにもよく参加しています。例えば、イベントで奥多摩のほうにいって、林業をしている方のお話をきいて感想文にまとめるワークショップに参加したり、科学みらい館のワークショップに参加したりしていました。以外とこれって埼玉にいたら参加していないんじゃないかと思うんですよね。

 地域みらい留学では、学校の先生だけじゃない大人が関わってくださっているおかげで、もしかしたらこういうイベントに興味があるのかな?ということを、個別で勧めてくれます。情報を得ようと思えば自分で検索すればいいのかもしれませんが、本当に自分に合っているものを見つけることは簡単ではないと思います。でも、地域の方々が目配せして、いろいろご紹介いただいて、それにチャレンジするという機会を得られたというのが、意外な発見でした。なので、息子は結構東京の方にも帰ってきます。そういった活動などに興味がある方は、これは高校を選ぶ段階で、そういったサポートをしてくださるの方がいるのか質問してみたらいいと思います。

後藤 父)地域みらい留学に行く子って、受験勉強を一所懸命がんばろうと思って行く人は少ないと思うんですね。それより、自分探し、自分がどういう人間で、どうなっていくかということを考える場を提供してもらいたかったという人が多いのではないかと思います。地域みらい留学に行くことで、親元を離れて、すごく魅力的な大人の方たちに囲まれて育つ生活は、人としての魅力を育てるということ。自分はどういうことが向いているか、自分は何者かというのは、大人になっても問い続けることが多いと思いますが、そういうことを、高校生の時期に出来るということが、とても貴重だと感じました。


Q お子さんの卒業後の進路について聞かせてください。

池本 父)今まだ悩み中のようですが、AO推薦などは始まろうとしていて、1番早い大学は8月の13日に願書を出さないといけないので、それに向けて地域での活動をまとめて、進路サポートをしてくださる方とディスカッションをしているようです。

 とりあえず2つくらいは行きたい大学が見つかっていて、その大学のAOや推薦にチャレンジをするみたいです。普通の受験は本人はあまり好きじゃないみたいで、自分がやりたいことや学びたいことについて話して、それを受け入れてくれる大学がいいなと思っているみたいです。

後藤 父)理系だったので、マネジメントサイエンスみたいな名前の学科に入りましたけど、一般受験ではなくて、自分がやってきたことを一生懸命アピールしていました。自分が人と違うことを経験してきたということを活かすことで、進路につながっていった部分があると思いますので、これからもそういった経験を通じて、その先につながる経験をしていってもらえればと思っています。


おわりに

 7月25日・26日、2日間のフェスタで計6回開催された、「経験者が語る」シリーズ。この記事では、「2組の夫婦と語る地域みらい留学」での対談の様子を紹介しました。親元を離れて、見知らぬ地域に飛び込む地域みらい留学。地域みらい留学に行く!と決意することは、留学をする本人はもちろん、ご家族にとっても大きな決断です。親としては、子どもに期待をするし、こうなって欲しいと思ってしまうこともある。それでもやっぱり、子どもの人生は子どものもの。親だからこその悩みや気づきについて、それぞれの家庭が、語ってくださりました。

 地域みらい留学は、留学をする本人だけでなく、家族みんなの挑戦です。簡単じゃないこと、大変なこともあると思いますが、それを共に乗り越えることで、より深い絆ができる。そうした経験を通して、自分が生まれ育った故郷以外に、もう1つのふるさとができる。それってとても素敵なことだな、と地域みらい留学の魅力を再発見できる会となりました。

地域みらい留学の留学校が全国から集まり説明は聞ける「地域みらい留学フェスタ」次回は、8月22日(土)8月23日(日)に開催されます。
こちらのサイトからお申込みの上、ぜひご参加ください!

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