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年賀状はSNSより強力なプラットフォーム

今年の年賀状は一昨年の半分にも満たなかった。

毎年、去年届いた分を確認して宛名を打ち込み直すのだが、昨年は喪中だったため、ほとんど年賀状は来なかった。
今年は一人一人夫と一緒に確認しながら打ち込んだ。
「もう何年も会っていないな」「どうしてるかな」
と言いながらも、今回から出さない事にした古い友人、遠い親戚が数十人。
何となく、知人を篩にかけているようで、申し訳ない気になったりもした。
ただ、確かに何十年も年賀状だけの付き合いになっている知人は多い。

年賀状はパソコンなどで簡単に作れるようになったが、それでも年末の忙しい時期は毎年面倒に感じるものである。
ただ、新年の朝、家のポストを覗く時は、ワクワクする。
写真入りの年賀状から、結婚や出産、子どもの成長がうかがえる。
何より「皆無事で元気にしている」という安否確認ができるのだ。
年賀状が来ていないとどうしているのか気になったりもする。

また、現在も変わらず現住所で在住していることが確認できる。
住所氏名の個人情報を交換するわけだから。
たとえ何十年と会っていない知人でも、一年に一回、安否と現住所を知ることができる。
引っ越した際は、年賀状を新しい住所に届けてもらうため、転居届なるものも事前に出しておく。(もちろん年賀状のためだけではないが)
繋がりを断たないための大切な仕事だ。

しかし、昨今、こうした年賀状の交換はどんどん減少しているらしい。
うちの子ども達も、ほとんど年賀状を出さなくなった。
新年の挨拶はLINEなどのSNSで済ませるようだ。
今年届いた年賀状には「年賀状は今年最後にします」と書かれたのものもあった。メールアドレスが添えられていて、今後はネットでの新年の挨拶にかえるとのことだ。
面倒な年賀状作成をやめるためなのか。
それとも、面倒な繋がりを断つためなのだろうか。

Web上の繋がりの中にプラットフォームというのがある。
プラットフォームとは、基盤や土台を指す言葉であるが、最近ではオンライン上のサービス利用に不可欠なものとなっている。
LINEやInstagram、Facebookなどは無料でアカウントを取得すれば、誰とでも繋がれるSNSのプラットフォームだ。
SN Sは、無限に広がる人との繋がりを広げてくれる土台。
今や私たちおばさん世代にとっても必要不可欠なものとなっている。
簡単に遠くななれた知人とも繋がれるし、一度も会ったことのない赤の他人とも繋がることができる。
簡単で手軽、しかも幅広くて無限。

ただ、その中身はどうだろう。
SNSは、発信する側、受け取る側双方ともに自己中心的に感じられる。
IT音痴のおばさんの私個人の主観であるが、人と人との繋がりの中身が、何となく、自分本位の物のように思えるのだ。
自分の要求を満たす物であったり、自分を表現する物であったり、また時には利益を得るためであったりすることもあると思う。

年賀状は、確かに儀礼的なものになりつつある。
何年も会わない人に対して、安否や住所を知らせる必要なあるのか。
現に、今回うちも知人を篩にかけて、ほとんど付き合いのない人には年賀状を出さないことにした。
言わば、年賀状をツールとして、人間関係を整理したとも言える。

ただ、年賀状を書きながら、懐かしい知人の顔を一人一人思い浮かべるのは楽しい作業だった。
知人たちと一緒に新しい年を迎える喜びをお互いに言い合う、日本独自の挨拶状である年賀状。
清々しい新年の朝に届く年賀状は、SNSより強力な、人間関係のプラットフォームのように思える。
来年も再来年もずっと、年賀状は書きたいし、受け取りたいと思う。




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