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温暖化の影響?春の気温推移の不安定化:福岡の3~5月のデータを例に

 気象庁は、2023年6月1日に、今年の春の平均気温が過去最高を更新したことを発表した。今年の3~5月の平均気温は、平年値(2020年までの30年平均値)を1.59度上回り、1898年の統計開始以降過去最高だったとのことである。

 もう1つ私が気になっていることがある。春なのに暖かい日や暑い日が増えた一方、時には寒い日が訪れているような気がする。そう、気温の推移が不安定になっているのだ。気象データを改めてみると、やはり気温の行方が不安定になっていたのだ。

 私の住む福岡市を例に、2020年~2023年の3~5月の各日を対象に、以下の分析をやってみた。
(1)平均気温、最高気温の回帰分析を行い、その回帰式やRの二乗(決定係数)の比較を行う。決定係数が小さければ、日ごとの気温の上昇の仕方にばらつきがあり、不安定ということになる。
(2)平均気温、最高気温との平年値との差に関する分散や標準偏差の比較を行う。

(1)平均気温、最高気温の回帰分析
 3月1日を1日目、3月2日を2日目…4月1日を32日目…5月31日を92日目として、2020~2023年の平均気温や最高気温の回帰分析を行った。なお、日をx、気温をyとしている。
 結果のまとめは以下のとおり。

2020~2023年の平均気温や最高気温の回帰分析:福岡に関して

以下の特徴がある。
・平均気温、最高気温とも、決定係数(Rの二乗)は、2023年<2021年<2022年<2020年となり、波がありながらも決定係数は低下傾向を示している。
・決定係数の小さい2023年、2021年は傾きが小さい一方で切片が大きい。2020年、2022年はその逆である。
・全般に、最高気温の決定係数は平均気温のそれよりも小さい。

 こうみると、2020~2023年の間の気温の推移は年々不安定になり、最高気温の方が平均気温より不安定な推移を示していることがうかがえる。言い換えれば、気温だけみても、春が年々不安定に、すなわちVolatileになっているのだ。
 なお、傾きと決定係数の相違は、3月の気温によるところが大きい。3月についていえば、2020・2022年の平均気温の平均値は12℃台なのに対し2021・2023年のそれは13℃台になっている。2020・2022年の最高気温の平均値は16℃台なのに対し2021・2023年のそれは18℃台になっている。4月~5月の各気温の平均値は、2022年の4月が低位なのを除いては、各年大きな差は見られない。

各年の平均気温、最高気温の平均値:福岡に関して

【平均気温の4年間の回帰分析】

福岡の各日の平均気温の回帰分析(2020年)
福岡の各日の平均気温の回帰分析(2021年)
福岡の各日の平均気温の回帰分析(2022年)
福岡の各日の平均気温の回帰分析(2023年)

【最高気温の4年間の回帰分析】

福岡の各日の最高気温の回帰分析(2020年)
福岡の各日の最高気温の回帰分析(2021年)
福岡の各日の最高気温の回帰分析(2022年)
福岡の各日の最高気温の回帰分析(2023年)

(2)平均気温、最高気温との平年値との差の分散・標準偏差
 平均気温、最高気温とも、この4年間で各日の平年値との差に関する分散や標準偏差は増加している。言い換えれば、平年値との差に関しても各日のばらつきは年々大きくなり、気温の面では春の天候が不安定になっていることがうかがえる。

福岡における各日の平均気温・最高気温の平年差の状況

まとめ
 ここ4年間で不安定になっている春の気温の推移は、地球温暖化の影響の一環と言えるかもしれない。これまでの一般の通説では、春や秋は偏西風が日本付近を通り、暖かい空気と冷たい空気のバランスが取れている。しかし、この地球温暖化が進むに従い、偏西風が蛇行しやすくなり、北に蛇行すれば暖気が入り暑くなり、南に蛇行すれば寒気が入り寒くなる。極端に暖かかった3月に見られるように、地球温暖化がもたらしたこの蛇行が、春の気温の推移の不安定化の要因になっているのではないか。

<追記:東京に関して>
 
2023年につき、各日の平均気温、最高気温の回帰式や決定係数(Rの二乗)は、以下のようになった。なお、xは経過日数、yは気温である。平均気温、最高気温とも、福岡に比べて決定係数が小さい。
 平均気温:y = 0.0968x + 11.571 R² = 0.507
 最高気温:y = 0.0914x + 16.926 R² = 0.3365

2023年東京の平均気温の回帰分析
2023年東京の最高気温の回帰分析

 2023年の平均気温、最高気温の平年差に関する平均、分散、標準偏差は以下になった。いずれに関しても、平年差のプラス幅、分散、標準偏差とも福岡を上回っている。
 平均気温:平均+1.92℃、分散8.93℃、標準偏差2.93℃
 最高気温:平均+2.10℃、分散14.02℃、標準偏差3.74℃

 2023年の春は、少なくとも気温については、東京の方が福岡に比べ不安定だったと言える。

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