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「3歳の童子」

 私の記憶にいまだに残って消えない人の1人が、高校で3年間連続して授業を受ける機会のあった英語のT先生だ。文語調の話し方を交えた拡張の高い話し方、抑揚をはっきりさせた英語の発音などが記憶に残っている。

 そのT先生がよく使っていた口癖で死ぬまで忘れないだろうものが、以下の言葉だ。

「3歳の童子でもわかる」

(さーんさいのどーじでもわかるーー)

これくらいは簡単にわかる、ということをT先生なりに使った言葉だろう。

 この言葉、ここ2~3年、思い出すことが増えてきた。というか、増えざるを得なくなった。国内外のいろいろな組織、出来事、事件、国際情勢、SNSの投稿に対して、私が心の中で「3歳の童子でもわかるだろう」と叫ぶことがずいぶん増えた気がする。それだけ不条理なこと、おかしなことが増えている感じだ。2020年からのあのコロナウイルスの流行やこれが社会に及ぼした影響も寄与しているかもしれない。

 いや?今年に入って、もしかしたら、「3歳の童子でもわかる」よりも、以下の言い方が正しいのではないか?という疑念がわいてきた。

 世の中は、「3歳の童子“だからこそ”わかる」ことに満ち溢れている

 この疑念を抱くに至った「ペルソナ」が、真っ先に2人思いついた。

1)ロブ・マンフレッド(MLBコミッショナー)

 「中立な立場に立つ」「MLBファンを第一に考える」「リーダーシップを発揮する」これがコミッショナーの必要条件ということは、まさに「3歳の童子でもわかること」。「ファン離れを絶対に招いてはいけない」これも「3歳の童子でもわかること」だろう。しかし、これが全く分かっていないように見えるのが、マンフレッドという人物だ。

 知る人ぞ知る通り、2021年12月初めに期限切れを迎えた旧労使協定に代わる新労使協定がまとまらず、マンフレッドは球団施設を選手に使わせず球団の機能を一切停止するという「ロックアウト」という暴挙に出た。そして、新しい労使協定はいまだにまとまらずロックアウトは継続、スプリングトレーニングはいまだに始まらず、開幕から2週間の試合が中止になる顛末になった。

 マンフレッドのひどいところは、「オーナーの利益の代弁者」言い換えれば「オーナーの犬」としてしか動いていないということだ。そのため主張はオーナーサイドのことしか言わず、オーナーの言い分をそのまま代弁するだけ。「ギリギリになれば選手会は慌てて合意して要求を引き下げるだろう」という計算のもとでロックアウトから1か月以上も全く交渉を行おうとしない、直前になって夏休みの宿題をやるかのように慌てて長時間の交渉をやる、その際「同意しないと開幕は延期だ!」と選手会を恫喝する、決裂後の記者会見では笑顔を浮かべてゴルフスイングの真似…

 そもそも、マンフレッドになってから各球団の利益は右肩上がりに伸びているのに、選手の年俸は伸び悩みというのもおかしい。儲けたら還元する必要があるのも「3歳の童子でもわかること」だ。

 しかし、これを理解する雰囲気は、マンフレッドには全く感じられない。マンフレッドは元は敏腕の企業弁護士で、MLBに引っ張られて交渉の矢面に立って成果を上げてきたとのことだ。だからこそその立場を「悪用」して、ファンではなくオーナーの利益を第一に動いていると言わざるをえないだろう。弁護士の世界で法律的な駆け引きや「クライアントであるオーナーへの忠誠」しか見えなくなったからこそ、「3歳の童子でもわかる」優先事項が見えなくなっているのだろう。MLBの労使紛争をめぐる特にマンフレッドやオーナーサイドの動きをみるに、「3歳の童子“だからこそ”わかる」ことに満ち溢れている感じだ。この原因は突き詰めれば「目先の利益」か。

2)ウラディミール・プーチン(ロシア大統領)


 簡単に書こう。

・人殺しはいけません

・他の国を勝手に攻撃するのはいけません

・みんな仲良くしましょう

これって、3歳になるともう親から教えてもらっていることですよね…人が傷つくのを見るのは悲しいのは、3歳の童子でもわかりますよね…

でも、征服欲や個人的怨念が先に立つと、こういう「3歳の童子でもわかる」ことって、分からなくなるのかなあ…

 ロシアに限らず、各所で起こってきた紛争を見ると、「平和」「友好」は、もしかしたら、一部の国家の「ボス」にとっては、「3歳の童子“だからこそ”わかる」ことで、大人になると輪からなくなることになるのではないか?と思わされる。

 ここで思い出したのが、福岡の質店である「高山質店」のCM。いくつかあるが、このCMが実に本質をついている。20秒くらいより後に着目。

https://youtu.be/tRyuovzFbQg

 「嘘をつかないことが、大人になるとできなくなる」これが後半の趣旨。上記マンフレッドやプーチンは、その典型的なペルソナと言わざるを得ない。そして、「大人だから」「大人のしがらみ、利害関係にまみれるから」できなくなること、分からなくなることが増えてしまうのではないだろうか?

 まずは、マンフレッドもプーチンも「仲良くする」「協力する」「平和にする」ということを早く思い出せ!!これがわからないならどちらも3歳以下だ!!


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