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メタバースの開発組織が100名になるまでの変遷

こんにちは、メタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスター株式会社の岩崎です。主に人事を管掌しています。

クラスターでは、Podcastを使って、クラスター社の歴史やサービス、組織やカルチャーの話を配信しています。

以前に、共同創業者であり執行役員CTOの田中(じょんそん)をゲストに迎えて、クラスター社の創業直後から2022年末にかけて、開発組織が100名になるまでの組織の変遷について語ってもらいました。今回、その内容を文字起こしてお届けします。

まだチームという形もない頃から、人数増加に伴って徐々に組織化し、いろいろなトライアンドエラーを経て形を変えてきた開発組織の変遷を網羅した内容になっています。

▼Podcastの内容はこちら

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ホスト:取締役 岩﨑 司

京都大学法学部卒業後、三菱商事株式会社入社。三菱自動車の海外販売・オートローンを担う営業部門の事業管理を担当。 2014年、キャリア女性支援サイトを運営する株式会社LiBの創業期に参画。創業事業のサービス立ち上げや営業企画等を担当。2017年、クラスター株式会社に参画後、COO、CFOを経て、2022年10月より経営企画・人事を管掌。

ゲスト:執行役員CTO 田中 宏樹

京都大学理学部休学中、現クラスタ―CEO加藤と共にいくつかのWebサービスやスマホゲームアプリの開発を経験。後に京都大学を中退。
2015年に加藤とともにVR技術を駆使したスタートアップ「クラスター」を起業。2017年、大規模バーチャルイベントを開催することのできるVRプラットフォーム「cluster」を公開。サービスの大規模同期通信システムを独自に開発した。現在はCTOとしてクラスター社のソフトウェア開発全般を管掌している。
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メンバー全員で1つのプロダクトに集中する日々(〜15名規模)

岩﨑:2015年に加藤さん、田中さん、エンジニア、デザイナーの4名でスタートしたクラスター。まずは当時のエピソードについて教えていただけますか?

田中:最初は僕と加藤さんだけで、その1か月後くらいに、エンジニアとデザイナーが加わりました。創業初期なので、加藤さんの役割は、エンジニア兼デザイナー兼プロデューサー。みんなで顔を突き合わせて、毎日開発に励んでいましたね。

その時はまだclusterは作っていなくて、いろんなタイプのプロトタイプを作っては壊してを繰り返していました。ただサービスの方向性は、今のclusterと同じような仮想空間内にアバターで集まるサービスが多かったように思います。

岩﨑:その後、私が入社した2017年、シリーズAで2億円の資金を調達したこともあって採用に力を入れたんですよね。開発組織としては10人いかないくらいでしょうか?

田中:そうですね。人数が少なかったので、その頃もメンバー全員で1つのプロダクトを作っていました。オフィスに集まって、プロダクトバックログ的なものをホワイトボードにポストイットで貼って、上からガンガン作業するような感じだったと記憶しています。基本的には、加藤さんのやりたいことをスピード感を持って進めていました。

岩﨑:翌2018年はバーチャルYouTuberが流行り始めて、アバターがアップロードできるようになったり、その延長線上で夏にソニー・ミュージックさんと一緒にバーチャルYouTuberの音楽ライブをやったりと、トピックもたくさんありました。そのような中で人が増えて、どんな変化がありましたか?

田中:2018年のチームメンバーは15名程度。さすがにこれまでのように動くことの弊害のほうが多くなってきました。なので、この時から徐々に職能ベースでチームを組むようになりましたね。当時は「班」と名付けて、開発チーム内でUnity班、サーバー班などと呼んでいました。

clusterのようなVRプラットフォームのサービスを作るには、ゲーム開発に近い技術スタックがマッチします。特に当時のclusterはスマホに対応しておらず、PC、VR向けのみ。フロントエンドはUnity、バックエンドはGo言語に移行して開発をしていました。

岩﨑:ちなみに班ごとの目標はどう決めていたんですか?

田中:当時は、チームで明確な数字目標を掲げて動くことはしていなかったです。ただ、加藤さん中心に「いつまでにこの機能をリリースしよう、やり切ろう」ということは決めていました。その目標に向かって、みんなで走っていましたね。

PM、QAの専任を採用して組織拡大(20名規模)

岩﨑:加藤さんがプロダクトマネージャー(PM)を担当していましたが、2019年には別でPMを専任で置くようになりました。ここでの変化について教えてください。

田中:それまでは加藤さんがPMとして、かなり細かいところまで開発組織の方針を決めていました。でも組織が拡大していく中で、ずっとこの体制を続けるのは現実的ではありません。そこでちゃんとPMを立てないとねと白羽の矢が立ったのが東峰さんです。

東峰さんはクラスターではデザイナーの業務を担当していましたが、元々PMの経験もあったので、適任ではないかとなりました。

岩﨑:PMの専任者も置いて徐々に組織になっていく中で、2020年に新型コロナが流行りました。このタイミングでクラスターではスマホアプリをリリースし、法人向け事業で大きな案件にも携わるようになりました。QAのポジションもこのタイミングで採用。この人数規模・フェーズでQAを採用したのは他社や入社者に驚かれることもありますが、どのような意図だったのでしょうか?

田中:専任の担当が1つ1つの案件をしっかりチェックした方が良いと判断したからです。QAの専任が入社する前は、エンジニアやイベントプランナーなど専門知識を持たない人が頑張ってチェックをしていました。しかし、兼任だと本来の業務に集中できないし、負担も大きい。QAが横串を通すことで、組織全体の生産性が上がることも期待して採用しました。採用した方が優秀だったこともあり非常に助かりました。

岩﨑:次の変化点としては2021年4月。組織も20名を超えたタイミングだったと思いますが、どんな変化がありましたか?

田中:クラスターでは2020年3月にスマホ対応をしました。この時はスマホのUIを最適化するために、iOSならiOS、AndroidならAndroid、それぞれに強いエンジニアを採用しようと動いていた時期です。

クラスターではバーチャル空間に入る手前の部分をアウトルーム(outroom)、バーチャル空間内をインルーム(inroom)と呼んでいます。outroomはネイティブアプリ、inroomはUnityで実装して、フロントエンジニアもそれに合わせてoutroom班、inroom班に分けました。それとは別枠でサーバー班も存在していましたが、サーバー班は2名程度だったので、UIの領域とは関係なく共通で見る体制を採っていましたね。

2021年夏頃にはサーバーエンジニアが増えたので、フロントエンドとバックエンドの人を同じチームでプロダクト領域の体験ベースで割り、チームを組みました。グロースチーム、エンジンチームという名前でした。グロースチームがどちらかというとoutroomの領域、エンジンチームがcluster内の3D空間のコアな体験部分を主に担当していました。

権限移譲とマネージャー設置(30〜100名規模)

岩﨑:2021年末、クラスターは30名規模の組織になりました。この頃にエンジニアリングマネージャー(EM)というポジションを設置しましたが、どのような意図だったのでしょうか?

田中:組織全体を見た時に、自分がボトルネックになっている認識があったからです。この時期、きちんとした評価制度を導入したタイミングでもあり、これ以上見るメンバーが増えたら回らないなと思いました。権限を移譲するタイミングだと捉え、社内で2人指名してEMを置いたのが2021年10月頃です。結果としては、彼らの能力が高かったこともあり、自分のイメージよりもちゃんとチームとして機能していきました。

岩﨑:EMも入ってさらに組織が強化されたのですね。2022年7月の時点では、70人規模の組織になったと認識しています。この辺りでチームの分け方が変わったと思うのですが、どう分けましたか?

田中:グロースチームとエンジンチームの2つから4つのチームに細分化しました。大きくざっくり2つに分けてしまったので、どこからどこまでが担当領域なのかふわっとしていたんですよね。チームを4つに分けたことで、EMも新しく2名採用しました。

岩﨑:ちなみに今までの4名は社内からの抜擢ですよね。外部からの採用ですぐにEMを任せてもらえることもあるのでしょうか?

田中:外からマネージャーを採用して、すぐチームを持たせるのは現時点でそこまで考えていません。まずはプレイヤーとして開発に携わってもらい、その人が他メンバーからリスペクトを集めた状態でマネージャーになった方がやりやすいと思うんです。なので、マネージャー候補として採用したとしても、まずはプレイヤーからスタートすることを考えています。結果的にはその方法が一番スムーズにマネージャーになれる道だと思います。

いよいよ100名のチームに。これからの展望は?

岩﨑:ありがとうございます。いよいよ現在に戻ってきました。開発メンバーも100名を超えるタイミング。2023年の今年、そしてこれからどんな変化が起こると思いますか?

田中:EMに登用されるメンバーがさらに増えて、チームも増える予定です。2023年からはインフラ専任チームを設置しますし、環境改善の開発チームも作るかもしれません。プロダクト領域で機能を作るチーム以外の体制強化にも力を入れていこうと考えています。

今後については、EMが10〜20名になった時に大きな変化があると思います。私だけではチームを見れなくなるタイミングです。組織として、階層がどんどん深くなった時に、思想やカルチャーを今まで通り浸透できるか。ここが課題になるのかなと予想しています。

他にも、開発組織が増えるということはPMも増えていくので、PMの組織構造も考えないといけません。現在は、加藤さんと直接コミュニケーションができますが、今後は別のメンバーもPMを行うことになります。ビジョンが今と同じ熱量で伝わるかが課題になってくるのではと考えています。

岩﨑:最後に、0から100に至るまでをこうして振り返ってみて、まとめのコメントをお願いできますか?

田中:その時その時で、規模感やプロダクトのフェーズにあった組織の作り方を自分としてはうまいことやれているのかなという気はしました。ただ、ここ1、2年でメンバーは急速に増え、目まぐるしく変化しているので、振り返る間もなくフェーズが変わってしまうというのも正直な感想です。今後も最適な組織の形をつくり、ビジョン実現に向けて邁進していきます!

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クラスターはまだまだエンジニア募集中で、今後は海外展開も考えています。興味がある人はぜひご応募をご検討ください。