The Losers Club《Club with Sの日 第10回レポ》
Club with Sの日は週にたった一時間。
だけど、その一時間で話すテーマについて考えた時間、その一時間で自分を語る覚悟ができるまでの時間はとてつもなく長い。
特に今回のテーマは、10年以上前から悩み続けてきた。
身体性。
トランスジェンダーやノンバイナリー当事者なら一度は見聞きしたことがあるかもしれない言葉“身体違和”。
「ノンバイナリー当事者全員に身体違和があるわけではない」
とか
「身体違和があるから○○の手術(or治療)をする」
とか。
単語が用いられる文脈は様々だけれど、必ずといっていいほどどこか悲しげな空気が漂っている。
そりゃそうだ。
簡単には変えられないものだから。
ジェンダー・マイノリティではなくても、自分の体について悩んでいたり、コンプレックスを抱えている人はたくさんいるはず。
身長や体格、肌質、髪質、声質、目や顔などのパーツの大きさ、歯並び、あるいは傷跡etc……
全く同じ悩みを持っている人とはなかなか出会えないかもしれないけど、身体性についての話は共感し合える人が多いのではないだろうか。
なのに。
身体について誰かに話すことはなんだかタブーとされているみたいだ。
もちろん、自分の体について具体的に話すのはとても勇気のいることだし、恥ずかしいと思う気持ちもすごくわかる。
でも、自身のコンプレックスをカミングアウトしなくても、“身体性”という普遍的なテーマについて語り合うことはできるよね?
そして、これは自虐ネタではない。
自分の弱点をさらけ出して笑いに変える必要はない。
すべての体は肯定され、尊いものとして扱われていい。
いや、扱われるべき。
前向きに語る方法はいくらでもある。
身体性に関するトークを、もっとカジュアルに。
もっとオープンに。
そして、もっと自由に。
今、ここからはじまる #BodyPositive ムーヴメント。
では、Club with Sで既成概念を軽く超えていこう。
ジェンダー表現特集の最終回。
テーマは『ノンバイナリーな身体とは?』
ノンバイナリーを自認してから、身体性について考える時間が増えた。
それは、「反対の性別になりたい」という願望ではなく、「女性性と男性性がひとつの体に同時に存在すること」への混乱だった。
“身体違和”は理想と現状とのギャップがあるからこそ生じる(気がする)けど、自分の場合はゴールがわからず、かつ現在の姿の曖昧さも納得できず、という感じだ。
このなんともいえない気持ちを解消したくて、いろんな工夫をはじめた。
まず、体幹トレーニング。
これは体格を変えるため。
外出自粛生活が続き、何か健康のためにできることをしよう、と考えていた。
でも、運動ってなかなか続かないんだよね(笑)
そこで、体力のためだけではなく、少しでも中性的な体に近付けるためだ、と自分に言い聞かせた。
そうしたらもう数ヶ月、毎日続いているよ。
次に、低音ボイストレーニング。
どんなに髪型や服装を工夫しても、一言話した瞬間、「ああ、君の性別は○○か」と勝手に決めつけられてしまう。
声を発するたびに、相手の想像していたジェンダーと違った場合、「おや?」という顔をされるのも嫌だ。
だから、ハスキーな声に憧れた。
低い声を出すためのトレーニングをGoogleで調べて練習したりもした。
今はシンガーの性別に関係なく音程(発声)が低めの歌を日々歌っている。
自分は洋楽が好きなので、英語の歌詞や発音に自然と慣れて良き。
そして、Club with Sでのメンタルヘルスケア。
身体性を変えるための自分なりの工夫や努力、その裏にある様々な感情をコミュニティのメンバーにお話してみる。
話したからって体が突然変化するわけじゃない。
だけど、心が軽くなる。
こんなセンシティブな話を共有し合える場がある、という事実に救われる。
本人の意思だけではどうにもできないことがある。
それを痛いほど知っているからこそ、君が“どうにもできなさ”を背負いながら生きている今を、まずは肯定したい。
一向に終わる気配がない身体違和との戦い。
そもそも、この戦いの勝ち負けってなんだ?
コンプレックスを抱いてしまった瞬間、僕らは負け組か?
見た目を変えることに成功したら、あるいはそのままの姿で居続けることができたら、勝者なのか?
勝利のクィアの神様は、いったい誰に微笑む?
こんな自問自答を繰り返しているうちはきっと、負け組なのだろう。
#BodyPositive ムーヴメントは優しさと励ましだけでは成り立たない。
そこには痛みも叫びも伴う。
自分や誰かの苦しみを見て見ぬふりするくらいなら。
それなら、The Losers Clubでいよう。
周りの視線や自己嫌悪に耐えられなくなっても。
信念だけは持ち続けているのなら。
僕らは、The Losers Club with Sでいよう。
読んでくださってありがとうございます。いただいたサポートは【Club with S】運営メンバーがジェンダー論を学ぶ学費(主に書籍代)に使わせていただきます。