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クセナキスは語るーいつも移民として生きてきた

フランソワ・ドゥラランド著 青土社  2019年4月発行

 現代作曲家クセナキスに関する新刊が出ました。この本は、1981年ラジオ局フランスミュージックの朝の番組「音楽家たちの朝」で放送された、ドゥラランドとクセナキスの対談を、文字に起こしたものです。

 ヴィブラートを使いたくないこと、偶然性もひとつの構造形式であること、音楽を図形を用いて考えること、空間を使った作曲、建築家としての視点など、従来にない作曲の考え方に触れて、とても斬新でした。まるで異世界に来たみたい。

 クセナキスさんはギリシャからの移民で、すべてにおいて、「つねに移民(よそもの)の意識をもって」いるそうです。「それでこそさらに新鮮で、鋭く、深いまなざしを持つことができる」からだそうです。

楽曲解説で一番関心を引いたのは、「ポンピドゥーセンターのディアトープ」で演奏された電子音楽「エルの伝説」。

 パリ、ポンピドゥー・センターのオープニング記念として製作された、7チャンネル音声による作品です。クセナキス自身が設計した美しい曲線をもつテント内で、レーザー光線などヴィジュアル効果をふんだんに使用しておこなわれた音と光のイヴェント“La Diatopoe”において初演され、3ヶ月にわたる上演期間中には数千人の観衆が訪れたそうです。

「エルの伝説」は、

●プラトンの「国家」10巻からの引用
●精神を照らす知の光にかかわるもの
●パスカルから引用
●ジャンパウルの「ジーベンケース」から引用

の4つのテクストから構成され、異なる時代を通じた、人間、その道徳、宇宙観などの諸問題が要約されています。
最初は、綺麗な音なのですが、だんだんノイズが増えてきて、最後にまた綺麗な音に戻るというユニークな作品でした。
こんな感じの演奏です。

https://www.youtube.com/watch?v=Nh7tVwcknb4&t=969s
注)2019年5月22日の過去記事です。

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