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バルトーク音楽論選(2018年6月刊 ちくま学芸文庫)

 私の大好きな音楽家メシアンは「鳥の声」を、ヤナーチェクは民衆の話し言葉の抑揚を楽譜化する「発話旋律」の採集に熱心でしたが、作曲家バルトークはハンガリーの「農民音楽や民謡」の採取に熱心だったらしい。

 バルトークは同じハンガリーの作曲家リストの作品を調べていたとき、リストが書いた「ハンガリアン・ラプソディ」がリストが主張する「ジプシーの音楽」(民謡)ではなく、都市の音楽ではないかと疑問を感じた。そして、自らハンガリーの農民音楽の研究を始めた。研究は、ハンガリー語圏のみならず、スラブ語圏やルーマニア語圏、トルコ語圏にも及んだ。農村に自らおもむき、現地の人に思いつく限り歌ってもらった。都市の人が農民音楽を蔑んでいる空気を感じて、警戒されて歌ってくれなかったり、女性は「いかがわしい言葉」が含まれた民謡を恥ずかしがって歌ってくれなかったり、トルコの女性に至っては身内の男性以外の前で歌ったりしないそうで歌うことを拒否されたりして、録音採集に苦労したようです。

 ハンガリーの民謡には3つのリズムがあり、①パルランド・ルバートのリズム、②拍節の変化を伴った厳格なリズム、③「付点」リズムがあるそうです。どんなリズムなのか言葉の説明だけではわかりにくいので、バルトークが作曲した「8つのハンガリー民謡」を聴きました。まるでヤナーチェクの歌曲を聞いているような素朴で郷愁(ノスタルジー)のある美しい歌でした。バルトークの声楽曲は今までオペラ「青ひげ公の城」しか聴いたことがなかったのですが、今回聴いた歌はとても慈愛のある歌曲でしたので、これからバルトークの歌曲を色々聴いてみたいと思いました。

8つのハンガリー民謡 より

https://www.youtube.com/watch?v=YV5Ueugbaw8

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