吉本ばなな(1992)『TUGUMI』中公文庫

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風景に吸い込まれるような経験をしたことがある。海を目の前にした時、高い熱にうなされて朦朧としている時、祭りの日の夜に出店の光に近づいていくような時。そうした時の身体の感覚が、とてつもなく美しい言葉で描かれているような一冊。

主人公のつぐみの言葉遣いにはいまだに慣れないものの、だからこその作中での存在感だとも思える。作者の技術の高さはもちろんのこと、モデルになった作者自身の個性もとても魅力的なのだろうなと感じられる。世界の美しさを詰め込んだ傑作。

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