珍道する桂馬part6
なんとなくやりたいけど、やれていないことがる。
石窯でピザを焼く、本格轆轤、オーケストラのダンスパーティー、等々。それなりのきっかけがないとなかなか実行にいたらない。
歩き方をペラペラとめくっていると、紅海に面したハルガダという街があった。ハルガダは世界中のダイバーが集まってくるらしい。というのも紅海は沿岸に大きな都市がなく、注ぎ込む川がないため、透明度が高い海として有名とのこと。
ダイビング…なんだかんだやれていないことの代表格である。
気づいたら僕は海風を受けていた。
船上は欧州系の観光客が多かった。彼らの半数くらいは歩くのが精一杯と思えるほど肥えていた。その恐ろしくたるんだ腹と透き通った紅海の対比は資本主義という感じで趣があった。
同じ船に日本人のおばさんが1人いた。もう10年くらいダイビングを続けているらしい。ダイビングスポットに向かうまでの間、おばさんは戦争とかワクチンとかずっと熱弁していたから全て無視しておいた。
さて、スポットに到着すると各々海に飛び込んでいく。
やべえええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!
巨大珊瑚礁と極彩色の魚。
警戒心がないのか魚がこちらに寄ってくる。触ろうと手を伸ばす。慌てて魚が逃げる。これの繰り返し。楽しすぎて轟竜になる。
よく見るとアホほど多様な魚がいる。視界全てがカラフルでなんだか異世界に迷い込んでしまった気分だ。残業後に電気を全て消して真っ暗なオフィスを眺めた時くらい異世界感があった。いや、なんか違うかも。
船に戻るとおばさんが仁王立ちして僕に言った。
「私は世界の全ての海に潜ったけど紅海が一番綺麗だよ」
えぐ。
翌日はシュノーケルをした。
イルカと遭遇。
20分くらいイルカと一緒に泳ぐことができた。
好奇心からなのか人間に寄ってくるのだ。人懐っこい野生のイルカがいるなんて信じ難い。
イルカがスィーと泳ぐとみんなでそれを追いかける。イルカが適当な場所で折り返してまたみんなでそれを追いかける。
調和。
駿、見ているか、これが人類と自然の共生だ。