見出し画像

ととのい、否、地獄。

いってきましたよ。ヒナタの杜 小戸の湯どころ  っと、さわやかなオープニングといきたいところだが、今回は冷静ではいられない話だ。訂正させていただきたい。逝ってきましたよ!!!

福岡県は西区、マリノアシティのすぐそばにそれはある。2019年オープンの比較的新しい温浴施設で、外観も内装も綺麗だ。浴場の導線にもこだわりを感じるし、露天風呂の植栽も美しく、現実から乖離したリラックスを味わうことができる。サウナ室は露天風呂に面していて、一面がガラスとなっているため開放的。水風呂も深くて広いし、ととのいスペースもしっかり確保されている。非常に高評価だ。

悲劇はサウナ室で起こった。遅い時間に入館した僕は、脱衣所でアウフグースの案内が書かれているポスターを見つけた。たまたまその日最後のスケジュールに時間がちょうどよかったので、嬉しくなって時が来るのを待つことにした。

10分前くらいにアナウンスがあり、サウナー達がゾロゾロとサウナ室に集まってきた。僕はサウナストーブに1番近い上段の席に腰かけた。時間になると、紺色のユニフォームを着て頭にタオルを巻いた熱波師が、ロウリュに使うバケットとラドル、それと赤くて大きなうちわをサウナ室に置いてサウナ室から一度出て行った。

うちわのパターンだ…。

勝手にタオルの方を想像していた。小生、タオルによる熱波しか受けたことがなかったので少し緊張。とはいえまぁ大丈夫だろうと思っていた矢先、サウナ室に戦慄が走る。

サウナ室に戻ってきた熱波師の装いがヤバい。両手に真っ赤な軍手をしている。さらには、顔にタオルを巻き、鼻と口は覆われている。めちゃくちゃ怖い。長袖に真っ赤な軍手、頭と顔はタオルに覆われているせいで、見える部分は目しかない。

おいおい、ほぼテロリストだろ。

そしてその装いに相応しい暴力的なアウフグースが始まる。小さめサイズのサウナ室の割に、デカいサウナストーブにロウリュしていく。1回、2回。3回、4回…。5回、6回!?7回、8回…!?おい、多くないか!?
しまいにはかけるというより、水をサウナストーンに叩きつけていた。やりすぎです。何もしてないのにめちゃくちゃ熱い。そして赤い大きなうちわを手に取り、大きく振りかぶってサウナストーブに向かってマン振りし始めた。大マン振りである。うちわが風を切り裂く音がする。

ヒュンヒュンヒュンヒュン!

上品さやリラクゼーションの要素などかけらもない。地獄。跳ね返りの熱風だけで我慢できないくらい熱い。この時点で暑さに耐えかねたサウナー達が半分は慌てるようにして部屋から出ていった。滑稽でめちゃくちゃおもしろい

そして拷問が始まる。端から順に熱波を浴びせ始めた。マン振りで。うちわがヒュンヒュンヒュンヒュン鳴いている。怖い。怖すぎる。自分の番が来るまでの間、何度もリタイアしようか悩んだ。しかしそれは僕のプライドが許さなかった。恐怖を押し殺して熱波をこの体で受け止めることを決意した頃、テロリストが僕に照準を合わせた。その目には殺気すら感じる。うちわという名の兵器を振りかぶり全力で僕に振り下ろす。

ヒュンヒュンヒュンヒュン!!

あっつ!あっつ!!

熱すぎる。身をよじらせながらなんとか堪える。

ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!!

テロリストの攻撃はなかなかおさまらない。もうやめてくれ。もういい。もういいんだ!

ヒュンヒュンヒュンヒュン!!

あっつい!あっっつ!

長い。辛い時間は長く感じるというが、まさにその通りだ。早く終われと願いながらなんとか耐える。

ヒュンヒュンヒュンヒュン!!

あっつ!あっつ!!!

ヒュンヒュン…ヒュン……ヒュ

攻撃がやんだ…。終わった。耐え抜いた。僕は勝ったのだ!恐怖と熱波に打ち勝ったのだ!
そう思った矢先、テロリストがこう言った。

「これからもう1段階温度を上げていきます。」

はい!ギブアップ!!
無理でっす!!!!

僕は迷うことなくひょこひょこと頭を下げながらサウナ室を出て、水風呂に逃げ込んだ。これまた滑稽。そんなこんながありつつも、しっかりととのったのだが、あの出来事はいつ思い出しても笑える。勇気のあるサウナーはあの熱波に挑んでみてほしい。僕は遠慮しておきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?