アルコール依存症専門病棟①/ベンゾジアゼピン系の認識が異なる

 アルコール依存症専門病棟に異動になって4ヶ月目。急性期に分類されているが、これまでの精神科病棟とは異なることが多く、新たな発見と、認識を改めなければならないことを知る。
 その1つに、ベンゾジアゼピン系(脳に鎮静作用として働くマイナー・トランキライザー)薬剤の、ロラゼパムの認識である。定期処方に入っていたり、抗不安薬として頓用薬処方される薬だが、この病棟に来るまでその薬効を感じることはなかった。看護師間では、「ペッツのほうが効く薬」や、「プラセボゼパム」などと揶揄していた。慢性期統合失調症患者や覚醒剤使用歴のある患者の症状出現時には役に立たないのが実際の現場共通認識である。
 しかし、急性期アルコール依存症離脱症状に対してはこの薬がメインの投薬となる。CIWA-ARという指標を使って離脱症状を点数化し、点数に応じてロラゼパムを投与する。自分が対応にあたったとき、点数が高かったためロラゼパムを指示に基づき投薬したが、他スタッフよりCIWAを再検していないことを指摘された。1時間程度の間隔で測定して離脱症状が消失するまで投与し続ける扱いであることを知った。そもそも効くと思っていないで投薬していたので、症状が消失するまで投与する、ロラゼパムでなんとかするといった発想がなかった。
 アルコール依存症離脱期の薬物療法は、ビタミン剤とロラゼパム(ベンゾジアゼピン系)投与が基本となっている。不足しているビタミンを投与して欠乏症を予防し、アルコールを断つことによって初期に起こる脳内伝達物質の不均衡から起こる離脱症状に対してロラゼパムを、つまりアルコールをベンゾジアゼピン系薬剤に置き換えることが治療となる。だからアルコール依存症専門病棟の看護師はロラゼパムへの信頼があつい。
 各病棟(年齢層や疾患が異なる)で同じ薬剤を使っていても使用感覚が違うということ、それこそが現場経験に当たるものだと思う。薬理の教科書や薬剤の添付文章に載ってこない感覚。事故、インシデントに発展する前に気づけるように、普段から問題意識を持って看護業務に従事する必要があると、あらためて考えた。


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