レポート◆Ⅳ◆コラボレーションタイム

宮崎さんに呼び込まれ、再度日比谷カタンさんが舞台に登場。

予定では、ここで軽くギムナジウムについてのトークを展開して頂き、コラボコーナーへ流れる…筈でした。

MCで『ギムナジウム』を噛んだことを蒸し返し、かつ、物販で販売していた谷澤さんの野菜を『農薬漬け』(※)と揶揄するところから、『ギムナジウム』は霧の向こうへ消えてゆきます・・・。

何とか軌道修正しようとするも、コラボで披露される曲の1曲目を紹介する辺りから、話はスタジオジブリへ。可愛さ余って憎さ100倍、だけども結局可愛さその二乗!みたいなジブリトークが始まりましたが、誰ひとりとしてブレーキをかけません。

わりと饒舌な脱線トリオをきょとんと眺める郷さん、クノさん、堀江さん・・・といった構図。

ここは放課後か!

というツッコミが喉から出かかりましたが、宮崎さんが弾くイントロに重ね、この曲にあるジュヴナイルっぽさ、というか“芽生え”る感じが『ギムナジウム』に寄せられるのではないか・・・?という谷澤さんのまとめを経て、コラボ1曲目“君をのせて”

以前、谷澤さんが弾き語りでカヴァーした弾き語りVer.の“君をのせて”を聞かせて頂いたときは、ピュアネスのなかに、ただのジュヴナイルではない、と思わせる薄い暗闇がありました。谷澤さんの声が少年のか細いけれども頑丈な決意、みたいなものを描いて、それは、今回のアンサンブルのなかで更に際立つのでした。バンド編成になると、薄い暗闇はどんどん広がって、SFっぽい印象すら覚えます。スペース・オペラの1シーンに、こんな抒情的な挿入歌があるのは、美しいんじゃないだろうか・・・。

続く2曲目はスザンヌ・ヴェガの“Luka”です。

この曲は不肖・主催のヤマダからリクエストさせて頂いた曲なのです(詳しくは先のnote『それを選んだ3つの理由』に)。今回は、スザンヌ・ヴェガの意図を全く無視してわたくしが描いたプロットを、日比谷カタンさんに歌詞としてブラッシュアップして頂きました。イメージとしては

『(オリジナルの)虐待されていたルカ少年が、逃れる為に寄宿学校に入ったんだけど底でもいじめに遭っており、しかも前夜は遅くまで上級生の標的にされていて、休み時間にめまいがして倒れたところを転校生のユーリに介抱されて自分語りをはじめる・・・

というシチュエーションになっております。

そんな解説をしている後ろで、宮崎さんがぼそっと12/18公開の『スター・ウォーズ フォースの覚醒』の話を始めます(『Luka』の字面から、ルーク・スカイウォーカーを連想したらしい・・・)。

まるで落ち着きのないホームルームみたいなことになりながらも、曲が始まります。

オリジナルよりもゆったりとしたテンポで、カタンさんのメインヴォーカル。もともと英語で作られているメロディのうえに日本語を割り振るとき、どれだけ単純なフレーズのなかに意味を詰め込むか、という腐心があったのですが、限定的な世界観とシンプルな演奏のおかげで、より情景が浮かびやすくなっていました。

Aメロで「ぼくはルカ」と、カタンさんと郷くんでハモるところでは胸も熱くなるし、『トーマの心臓』の森博嗣版ノヴェライズにも通じていくギミックが隠されていたりして、これは・・・これは全方位の萩尾望都さまファンに聴いてほしい・・・。

しかし、おそらく今回限りでお蔵入りです。聴けた皆さま、是非伝説として語り継いでください。ちなみに今回の歌詞はこちら

そして、学級崩壊状態のコラボコーナーも大詰め。出演者の告知を挟んで、「萩尾望都トリビュート風(というか、漫画トリビュート)イヴェント」は今後も続けていくよ、という宣誓、そして望都さんを呼びたいよね、買ってる猫をさらったらいいんじゃない?というほんとうに無謀、かつ無責任なトークの後。最後は日比谷カタンさんセレクトによるフリッパーズ・ギター“全てのことばはさよなら”です。

こちらについても、カタンさんの思いの丈はnoteにコメントを頂いています。が、渋谷系とギムナジウムが結びついてしまう、というのはわたくしにも全くの想定外でしたが、実際に聴いてみて、これ以上も無いくらい『ギムナジウムナイト』のエンディングとしては素晴らしいものでした。

ファルセットのコーラスや口トランペット等は、フリッパーズを活版印刷で再現しているようなマニュファクチュア感があり、すこし訥々とした印象のある郷くんのヴォーカルや少しくぐもりも感じる音響も、カタンさんがおっしゃった“全てのことばはさよなら”にある、学校のなかで育まれる一過性の交流や友情、それが屈折した光を湛えて、ステージに漂っていたのです。

すべての演目が終わって、出演者が一堂に会し、撮影タイム。

その間わたしが思っていたのは、このイヴェントの方向性についてでした。

最後のトークコーナーで、全くギムナジウムの話に展開しないところで、宮崎さんが放った「読めばわかる」という台詞。

これは、石化の呪文くらいにこの場では言ってはいけないこと。

全ての真実で、言ったら身も蓋も無いくらいの正論なのですが、それはこのイヴェントの趣旨ではないのです。

今日ここに来て、ギムナジウムものの漫画を読んだことのないひとが「この雰囲気好き!」と感じてページをめくってくれるような、

またはギムナジウムものの漫画は好きだけれど谷澤智文、グレンスミス、日比谷カタンを知らないひとが「こんな曲聴いてみたかった!」と音源を手に取ったり、ライヴに来てくれるような。

そこへ連れて行きたいとはおこがましいけれど、せめて扉が開くきっかけになれば。

ライヴ、ひとつひとつは素晴らしかった。

それだけに、こんなにバラバラになってしまったのが、口惜しいのです。

バラバラだけれども、

この日の出演者3組がデルタを描いて繋がったこと、

フリッパーズ・ギターと“君をのせて”の新しい側面に気付いたこと。

新しい“Luka”が生まれたこと。

多くの収穫もありました。


ご来場下さった皆さま、

見守って下さった方々、当日支えてくださったスタッフさま各位、

そしてご出演下さった谷澤智文さん、日比谷カタンさん、グレンスミスのみなさま、

本当にありがとうございました!

※谷澤さんの野菜は、農薬は使ってますけど安心・安全の範囲内ですよ!そして大根が心の底から美味しかったです。

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