映画『昨日より赤く明日より青く-CINEMA FIGHTERS project-』

■ブルーバード(佐野玲於)
http://www.akakuaoku.toeiad.co.jp/story01.html
親もいない底辺下層(あえてこう書く)の貧しい兄弟の、どこか現実離れした童話みたいなお話。シナリオが雑だなと思ったけどSABU監督ならこんな感じか?
話の途中で唐突に現れるやくざと銃と痴呆症の老人とあったか家族のくだりは一体何を見せられているのかわからなくて混乱した。
貧しい設定なのにガチガチに青く染めた髪はなんなんだろうと思ってたけど、後半に佐野くん演じる兄が髪を黒く染めたあたりでなんとなく理解できた気はする。
弟にとっては兄が、兄にとっては弟が『幸福の青い鳥』だったのだけれど、兄にはもう青い鳥はいない。だから遠くへ行かなきゃいけなくなったのだ、彼は。


■言えない二人(白濱亜嵐)
http://www.akakuaoku.toeiad.co.jp/story03.html
これ白濱亜嵐がめっちゃくちゃ綺麗でうつくしくてびっくりしたんですけど。
監督が『ひるなかの流星』でも亜嵐くんを撮っていたけど、そのときは正直「いまいち亜嵐が綺麗じゃないなあ」という感想でした。
でも『言えない二人』の白濱亜嵐はすべての場面で美しくてかっこよくて体のあらゆるパーツが芸術品のように撮られていた。撮影の池内義浩さんがすごいんだと思う。一秒ごとに一時停止して模写したいくらいの白濱亜嵐。
おはなし自体も幼馴染みとして育った男女がおとなにさしかかり、恋に躊躇しているかわいいお話だった。
ヒロインには彼氏がいて、それが亜嵐の親友。親友はヒロインと別れて別の女の子と付き合いたい。亜嵐の口から「あいつ別れたいって言ってる」と伝えてほしいと言われ、でも言えない。女の子も彼の心変わりに気づいていながら言えない。亜嵐の気持ちをうすうす察しながら言えない。
私も居酒屋で白濱亜嵐に「初恋って人生に一回しかないんだよ!?」とか絡む美魔女になりたい人生だった。

■水のない海(小森隼)
http://www.akakuaoku.toeiad.co.jp/story06.html
こういうお話だいすき!!!!
将来へのビジョンも夢もなく、料理の宅配(Uberですね)をしているユキオ(小森隼)と、中国語しか話さないジェニが出会い、関係を深めていく。小森くんの噛んで含めるような穏やかな話し方とユキオの虚無っぽい部分がうまく噛み合っていて、言葉の通じないジェニのめちゃくちゃさや愛らしさに振り回されてだんだん人間味を増していく感じがとてもよかった……。ジェニ役のルナちゃんもとても可愛くて綺麗で、最後のオチも含めて心があったかくなるような掌編だった。室内のふたりが背景含めて絵画のように美しい画面づくりになっていたのもよかったな。久保監督やっぱり好き……ってなった。

■怪談 満月蛤坂(中務裕太)
http://www.akakuaoku.toeiad.co.jp/story04.html
ここでホラーなの!? と思ったけど怪談というか伝承みたいな存在の幽霊の話だったのでそんなにこわくない。
むしろ最初から濡れ場で「GENERATIONS from EXILE TRIBE的にええんか」という感じでしたね……。そしたら妊婦のように腹が膨れた中務くんが出てきて更に上を行った。わぁGENERATIONS 中務くんが妊婦になってる……。
お話的には女将は「看板の板前」を得るために、知ってて良介をたみに与えたんじゃ……? という怖さもあってなかなか深い。


■真夜中のひとりたち(関口メンディー)
http://www.akakuaoku.toeiad.co.jp/story02.html
これ、関口メンディーの顔とスタイルのよさがわかってしまう作品ですよ。彼は声もいいので、芝居がさらにうまくなったら映画映えめちゃくちゃすると思う。スーツの関口メンディー、とてもかっこよい。
大切な恋を失った、知らない男女ふたりが出会って、東京で一晩一緒に過ごす。歩いて、焼き肉を食べて、歩いて、さみしくなったからハグをする。でもそこに性愛の匂いはなくて、ただたださみしくて自分がひとりじゃないことを認識したいから、した、してもらったハグ。女の子の芝居がもうちょっと自然体だったらよかったのにな、全体的になんかわざとらしくて鼻についてしまった。メンディーちゃんの演技がこなれていないので、相手は芝居巧者がよかったです。

■COYOTE(片寄涼太)
http://www.akakuaoku.toeiad.co.jp/story05.html
コロナによって世界が変化し始めた頃のおはなし。まだみんな半信半疑で、まさか渡航できなくなるとかロックダウンがあるとか予想していなかった時期。
恋人(韓国系アメリカ人)をおいて日本に戻ってきた晴人(片寄涼太)が、わずかの間にいろんなものをなくす話。晴人があまりに天然無邪気系クズ男なのがすごい。幼稚だからこそ自分ひとりの浅い考えで行動するし、発言するし、他人を傷つける。それまでうまく回っていた晴人の世界が、コロナの蔓延によって優しくないものに変化する。でも晴人にはそれが理解できないし、したくない。
片寄くんが愛らしさを振りまけば振りまくほど、晴人のクズみがじわじわと迫ってくる。なんだろう、ひどい男なんだけど先天性のものだから仕方ない、と周囲に思われ許されていたのが、世界が変わったことで世界に拒まれた感じ。晴人はただただ憤るけど、世界は変わってしまったんだという無情さがある。かわいそう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?