パラダイムシフトの快感――ゲームの旅:ダンジョンエンカウンターズ
ダンジョンエンカウンターズをクリアしたのでその感想です。プレー時間はだいたい45時間くらいでした。
ゲームの概要は公式サイトなどでわかるので、ここでは、私のプレーを時系列で振り返りながら、このゲームの何が面白いのかを書いてみます。
各箇所、そこまで進めていればわかる内容のネタバレはしていきます。
TL; DR
「与えられた条件で、どうやって難関を突破するかを考える」のが楽しいゲーム
トルネコの大冒険や風来のシレンの「死に方自慢」で盛り上がれる人は向いていると思う
既存のゲームでさわり心地が近いと感じたのはwizardry
ゲームの進行に連れて手触りが変わってくるゲームなので、序盤で合わなくても中盤以降でハマれる可能性がある
このまとめで自分は該当者かもと思った人は、この先を読まずに、買って遊ぶ事をおすすめします。知らないほうが驚けることが沢山あるからです。
00〜19階
このゲームのダンジョンは、階数の10の位ごとにエリアが分かれていて、性質が大きく変わっています。
最初の09階まではそれほど難しい内容はありませんでした。本作に慣れるためのエリアだったように思います。
戦闘のルールがシンプルなのにパターンが多彩なのがすごい
本作の戦闘は「防御値とHPがあって、ダメージを与えると先に減るのは防御値」「防御値は物理と魔法で別」というのが柱になっていて、これがシンプルながら多彩なパターンを生み出しています。
物理の防御値は分厚いのに魔法の防御値が0なので魔法なら瞬殺
物理も魔法も防御値が分厚いのにHPは1
HPめっちゃあるけど物理も魔法も防御値0
防御値を無視していきなりHPを減らす特殊能力持ち
対するこちらの武器も、物理/魔法、単体/全体、固定ダメージ/ランダムダメージと様々な性質のものが用意されており、例えば「物理全体武器はダメージはそんなに高くないけど、物理防御値が1の敵が5体一気に出てきたら、ひと薙で全員の防御を剥がせる」みたいな相性が生まれてきます。
またこのゲームはHPやダメージが指数関数的に増え、序盤は1桁のやりとりをしているのに最終的には6桁のやり取りをするところまで行きますが、防御値が1でもあればHPは減らないので、必ず2発は殴ることになり、その間にどう戦うかの思考が生まれるという形になっているのもうまいなと思います。「数値がでかけりゃ瞬殺」ではないのです。
09階まではこういった戦闘のやり方についてを理解する時間だったように思います。
「最初からダンジョン内に死体がおいてあるwizardry」
本作には24人のプレイヤーキャラクターがいますが、最初から使えるのは7人だけで、残りはダンジョンのどこかに置き去りにされています(死んでいることなどもある)(殆どのキャラは所在不明)。
この辺はwizardryにちょっと似ていて、wizardryは普段のパーティがダンジョンの中で全滅すると、別のキャラで死体を回収して街に戻り蘇生しなければならないのですが、この「別のキャラ」はだいたい育ててないから弱いんですよね。本作は言うなれば、この「別のキャラ」しかいない状況から始まっているような感じです。
裏を返せば、ダンジョン内で合流・回収できるキャラは、そこまで潜る実力があり、最初からレベルが高いです。育てる手間がないのは1つ良いところでもあります。
最初からいるプレイヤーキャラクターたちも全滅すればその場に置き去りなので、1パーティ分しかキャラを育てていないと、しんどいタイミングがやってくることになります。なので私は、「このシステム…wizardryで見たやつだ!」と、にやけながら
というのをやって、
なんとかしました。(このあと、そんな事が通用しない事態も起きましたが)
小ネタ:石化すると
言われてみれば確かにそうだねって感じだけども!!
ショートカットはエリアの最後に
全100階の巨大なダンジョンですが、毎回1階から始める必要があるわけではなく、9階、19階、…といった感じに、各エリアの最後まで到達するごとに、町とのショートカットが開通します。
とはいえ10階分の間はしっかり潜る必要があって、これは結構長いですし、たとえば10階と15階では敵の強さもだいぶ違うので、攻略は慎重を要しました。途中に回復施設が時々あるので、帰らずに探索を長期間続けることもできなくはありませんが、
2軍を育てようと思ったら中々そうも行かず。
このとき、階段がないところでも1つ上・1つ下の階に移動できるアビリティを手に入れていましたが、移動先のマスが通路がないと使えないので、把握のために、紙か何かにダンジョンの地図を書くべきか(100x100なので1フロアでもかなり大変)真剣に悩んでいました(書きませんでした)。
毎フロアしっかり踏破してから先に進むようにしてたのですが、こういった状況でなかなか進まないのにイライラしてきたので、勢いで突っ込んで、
という事をしました。このあたりから、「何をすると何が得られて、何をすると何が失われるのか」、本作独自のリソース体系について意識できるようになってきたと思います。
ファミコン時代のゲームって、割と無茶な遊びができたよね
それこそwizardryとか、真ではないほうの女神転生1とか、思い出せば色々あります。広義には、スーパーマリオブラザーズのワープ土管でいきなり8面、とかも入れて良いかもしれませんね。
「不明者発見」アビリティから始まる、三次元場所特定ゲーム
19階までの間に、「不明者発見」アビリティが手に入り、行方不明者を探して回収できるようになります。
このアビリティは、最寄りの不明者までの距離を数値で教えてくれるのですが、この数値は「南北のずれ+東西のずれ+上下のずれ」です。
たとえば、自分が15階の南50-東60にいて、不明者が16階の南48-東64にいた場合、
南北軸では、自分が50、不明者が48にいて、2離れている
東西軸では、自分が60、不明者が64にいて、4離れている
上下軸では、自分が15、不明者が16にいて、1離れている
ので、距離は2+4+1=7になります。
最初は数字が小さくなるほうに歩いていけば良いのですが、それで目的のマスに到着できない場合は推理をすることになります。
たとえばこんな感じで、緑のマスで東西南北の座標は確定できて、そこが3なので、3階上か3階下の同じマスに不明者がいる、と考えられます。
こうやって不明者を探し始めるわけですが、ここから、自分たちが100x100x100の座標空間の中にいることを意識し始めました。このあとも、この座標を意識したダンジョン攻略を進めていくことになります。手がかりからどうやって答えにたどり着くか、この方法を編み出すまでなんかはすごく楽しいわけです。
VRゲーマーのチートスキルは、しかし生き延びるには不足していた
マカリーくんはVRゲーマーが異世界転生してきた感じ。
発見されたときの装備品1つから匂い立つフレーバー。
20〜49階
「この感じで99階まで続くのかねえ」
30階を超えたあたりで、
こういう感覚がわかってきたり、
力の抜きどころがわかってきたり、敵のパターンも段々出尽くしからのマンネリが見えてきていました。
これはこれで悪くないゲームではあったものの、この繰り返しで99階まで行くって言うなら、もう別に良いかな…遊ぶのやめちゃおうかな…みたいな事が頭をよぎり始めていました。
倦怠感が爆発しそうになってきていた40階前後あたり、なんかこうこれなんとかできんのか、と考えていたときに、突然「…あれ??」となり、これがパラダイムシフトの始まりだったのです。
パラダイムシフトの起点:敵と戦わずにダンジョンを攻略するアビリティたち
東西南北の2歩先に移動できる「ムーブ」
その名の通りの「敵配置シャッフル」
と、このとき、敵との戦闘を回避できるアビリティが集まりはじめていました。
設定した場所に戻ることができる「アンク」も、攻略を大幅に楽にしてくれました。
そしてここに極めつけの「仮想エレベーター」アビリティが登場します。直上・直下に、床があるところまで飛ばして移動できるので、数階から場合によっては10階以上まとめて移動できたりします。
これらを活用することで戦闘を回避しながらダンジョンを進んでいく事ができるようになりました。その結果、
こうなって、
こうなったのでした。戦って進んでいくゲームから、戦わずに進んでいくゲームへのパラダイムシフト。
映像作品で言えば「見事な伏線回収」といった感じです。倦怠感を感じていた絶妙なタイミングでこれが来たので、「俺もしかしてプレー見られてたんじゃないか?(そんなわけない)」という気持ちでした。
しかし、このときはまだ、本当にそれで大丈夫なのか確信が持てずにいました。
アビリティの使い方を教えるレベルデザイン
思えば、FFシリーズはいつでもそうであったなあと。
40〜69階
パラダイムシフトの確信1:バランスを無視した装備品たち
これは45階で拾える数値問題6を解いて武器を入手したときのツイートですが、この武器の攻撃力が80000だったのです。
30〜49階あたりで戦う敵はHP4桁の敵がほとんどなのに、突然、80000。
これはもう、この武器を担いでもっと深く潜れ、と言われているに等しかろう。そう思いました。
この他にも、防御値がいくつであっても一撃で0にする「手裏剣」、ザキが使える「黄泉の杖」なども手に入っていたので、これはいよいよ潜るべきタイミングであろうと。
パラダイムシフトの確信2:仲間がいきなり強い
深く潜れるようになって、どうするか考えた結果、まずはわかりやすいところで不明者探索をやっていくことにしました。
多少の難はありつつも回収は着々と進み、そこで気づいたことがありました。
本作は強い武器防具を装備するにはある程度レベルが高い必要があるのですが、深い階層から回収したキャラはそのぶん最初からレベルが高いので、強い武器防具をもりもり装備できるのです。また、専用の強力な装備ができるキャラも出てきます。
この時まで私は、強い武器防具を装備するためにはレベル上げが必要なのである程度の戦闘は回避できないと思っていました。ですが本作には、「レベルの高いキャラを仲間にする」という方法もあったのです。
強いキャラ→戦闘でレベル上げしなくても、回収すればOK
強い装備→戦闘でドロップ・購入しなくても、数値問題・地図問題を解けばOK
ダンジョン踏破→戦闘で敵を除去しなくても、移動系アビリティでOK
というわけです。本作にとって戦闘はダンジョン攻略の一手段に過ぎなかった。そう確信しました。
エリアまるごと無視
こうして、50階〜69階はほぼ歩かずにどんどん潜っていきました。
一歩踏み入れる、という意味では、98階にまで進めていました。
70〜99階
敵に殺されなくても、ダンジョンに殺される
本作で私が一番えげつないと思ったのはこれ、「落とし穴」です。
フロアにランダムに配置される
アビリティがないと見えない
真下に落下し、通路のあるフロアで止まる
真下に通路のあるフロアがなかったら、無限に落ち続け、4人バラバラに行方不明になる
いやこの4つ目、まじでえげつないんですよ。
戦わずに進んできたので、強力な装備は数に限りがありました。それをガチガチに身に着けたキャラが、唐突に全員いなくなる。
行方不明といってもどこかにいるので探せば見つかりますが、4人バラバラなので捜索の手間も4人分。出現位置はだいたい深層なので、間違って敵にぶつかったら即死、捜索中も落とし穴に落ちる可能性はある、という。
「落とし穴発見」というアビリティがある事は知っていたのですが、この時点で持っていませんでした。フル装備のパーティが全員行方不明というのを2度やらかしてしまい、2度目は一時放心状態になりました。が、切り替えて、まずは「落とし穴発見」を見つけようと思いました。
「備えよ,常に」
しかし「落とし穴発見」は中々見つかりませんでした。
私が落とし穴にハマったのは70階が初めてだったので、「落とし穴は70階以降のギミック→対策アビリティを置くとしたらそれも70階以降だろう」と考えて、70階から1フロアづつ(敵を避けながら、1人パーティで)踏破していったのですが、89階まで踏破しても見つからず。ちなみにその間にも5人くらい行方不明になりました。
萎えそうだったので仕方なく、
探しものがあったのは、40〜49階のエリアでした。
アビリティを装備したあと歩きまわってみると、50階の時点で落とし穴は既にあったようです。
それにしてもその手前は予想つかない気がするな…と思ったのですが、あとで開発者インタビューを読むと、
なるほどなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
確かに、毒防止のアビリティは毒で苦労する前に手に入っていました。
つまり、パラダイムシフトに乗らずに、上から踏破していくスタイルを続けていた場合は、落とし穴で苦労することは全くなかったはず(きっとそういうプレーした人は結構いる)で、全員行方不明はリスクを踏みに行く攻略スタイルを選んだ私への罰だったのだ。そう理解させられた気持ちでした。
ラストバトル
ここからはトントン拍子でした。
70〜89階を探索している間に便利アビリティがまた手に入っていたので、それらも活用しつつ、仲間を全員回収。入手した数値問題・地図問題の景品も回収。ラスボスらしき敵の情報も手に入っていたので、戦い方を考えて装備を整え。89階で「これで倒してね」って渡される武器を試用して使い方を把握。いざ90階、ラスボスのもとへ。
ラストバトルは初見で問題なく勝てました。バルトロ、オウユー、ネコ、K2000が、それぞれ加入時のレベルとほぼ同じという編成でした。
なんか裏ボスがいるみたいですが、switchは実績ないし、ここまでで十分本作の醍醐味が味わえたように思えたので、ここでプレー終了で良いと思っています。
クリア後に他の人のレビューを読むと、プレーが違ってて面白い
60階くらいまでマンネリを感じなかった人、パラダイムシフトに気づかずに地味な進行のゲームだったと評する人など、様々でした。一番えぐいと思ったのが石化の仕様と書いている人もいて、そういう人はきっと「落とし穴発見」をちゃんと拾えてたのだろうなと思ったり。自分は運良くそうならなかったけど、モルモット化に苦労した人もいそう。
クリアまでの道筋が幅広い、「手段の自由度」の高いゲームなので、人のプレーを見聞するのは面白いです。私のこの記事も、誰かに楽しんでもらえたら良いなと思っています(やってない人の判断材料にもなってほしい)。おしまい。