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めざすは全会一致 「気候非常事態宣言決議 実現をめざす会」 事務局長・古川禎久議員インタビュー


世界的に対策が求められている気候危機の問題。先日環境省も「気候危機宣言」を宣言しましたが、すでに国会においても「気候非常事態宣言」決議をめざす議員連盟が立ち上がっています。

今回は、この議連の事務局長をつとめる衆議院議員・古川禎久さんに、自身の気候危機への考え、議連の立ち上げ経緯や動きについて話を伺いました。


古川 禎久(ふるかわ よしひさ)さん
http://www.furukawa-yoshihisa.com/profile.html

東京大学法学部卒業後、建設省入省。衆議院議員政策担当秘書などをへて総選挙に立候補(平8落選・平12落選)衆議院議員初当選(平15)法務大臣政務官(安倍・福田内閣)環境大臣政務官(福田・麻生内閣)自由民主党青年局長、自由民主党副幹事長、自由民主党選対事務局長、自由民主党国対副委員長、議院運営委員会理事、財務副大臣(安倍内閣)財務金融委員長、財務金融委員会理事、法務委員会理事、東日本大震災復興特別委員長を務める。当選6回。


古川さんの地元宮崎でも、気候危機の影響は出ていますか?

世界どこでもそうでしょうけど、これまでこんな雨は降らなかった、こんな水害はなかったという声ばかりです。魚が獲れなくなった、農作物が不作になったという事例もあります。みんな、気候危機を肌では感じていますが、「だから普段の暮らしぶりをあらためた」「だから経済活動をあらためた」というところまではいっていません。


気候危機の中でも問題意識を強く持っていることは?

私が特に気になるのは、オーストラリア、アマゾン、シベリア、インドネシアなどで起きている森林火災です。気候が変わって、いままで湿潤だったところが乾燥化しているということです。こうして気候が変われば、農地もまた失われます。つまり食料不足、食料危機になってしまう。

干ばつが進み、水不足によって農耕ができない。すると環境難民がうまれる、貧困が紛争にまで発展するということもおきる。いまや気候危機は、国連の安全保障理事会でも取りあげられるテーマとなりました。

世界人口は増えると言われていますが、はたして、その食料はまかなえるのでしょうか。わたしたちの日本だって心配です。いま国内の食料生産額は9兆円強ですが、一方では約8兆円分も輸入している。こんなことが、いつまで続けられるかは分りません。この先、日本国民が飢えることはないとは言えないと思います。


日本の温室効果ガス削減目標(NDC)へのお考えは?

日本は、2030年までに26%減、2050年には80%減、そして今世紀後半のできるだけ早い時期にゼロエミッション、という目標を掲げています。でもこれは、不十分ではないでしょうか。

今年は、パリ協定における削減目標を再設定する年ですが、日本は残念なことに、これまでの目標値をそのまま据え置きました。わたしは、たとえば「2050年ゼロエミッション」を約束するくらい、もっと高い目標を示すべきだったと思っています。

それができなかったのは、2030年のエネルギーミックス(電力構成)が決まっているからではないかと思います。でも実際のところ、この2030年のエネルギーミックスの実現は難しいのではないでしょうか。ならば、あらためて描き直す。描き直すなかで、脱炭素の高い目標を織り込むべきだと思います。


電力構成がこれから変わっていきそうな機運はある?

本来なら、政府や政治家が「この方向に行こう」「脱炭素をめざそう」と目標をさししめすのがリーダーシップなのだろうけど、現実的には、政策を転換するのはそう簡単じゃない。

だからこそ、わたしたちは政府や国民世論の背中をおしていきたい。そうして政策を転換していきたい。そんな思いでもって「気候非常事態宣言」の国会決議をめざしているのです。

ただ、政治や行政よりも、企業や金融・投資家がどんどん先を走っている。SDGsやESG投資などのように、民間活動の行動変容が、脱炭素をおしすすめるエンジンになっています。

そして、Fridays For Future(FFF)のような、みなさんの活動です。グレタさんのメッセージもすごいインパクトでした。グレタさん17歳ですね。10年後は27歳、20年後で37歳です。つまり、グレタさん世代のような若いみなさんの価値観や感性が、これからの国際世論になるのです。

経験ある世代は、これまでの成功体験が染みついちゃっていて、つい「環境か?それとも経済か?」なんてことを考えてしまうんです。でも若い世代はそうじゃない。若い感性が未来を変えていくだろうと確信しています。


議連が立ち上がった経緯を教えてください。

昨年11月の「COP 25」(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)で、日本は集中砲火を浴びました。日本は温暖化対策に後ろ向きだ、として不名誉な「化石賞」が贈られてしまった。あれはショックでした。

問題視されたのは石炭火力発電です。日本は二酸化炭素をたくさん排出する石炭火力発電をおしすすめている、だからケシカラン、というわけです。日本からすると、日本の石炭火力発電は技術力も高いし高効率だ、そこらの石炭火力とはワケが違うんだゾっていう思いがある。

でも世界には通用しないんですね。その言い分は。日本は自分のことしか考えない国だ、倫理にもとる国だ、などと決めつけられては世界で生きていけません。脱・石炭火力はもはや避けられない。これはもう世界の潮流なんです。

だったら日本も脱・炭素でいこう。やるからには覚悟を決めてやろう。まず国会で「決議」をして、世界に対してハッキリとメッセージを発信しよう。ということで、議員連盟ができました。国会の各党各会派のみなさんは二つ返事で、議連設立に賛同しました。

具体策については各党それぞれ考えがありますし、それぞれで議論を深めればいいと思います。大事なことは、「気候危機」という深刻な事態に向き合う覚悟です。大きな目標のもとに、みんなで結集することだと思います。


現状議連には何人が参加していますか?

議連は2020年2月20日に設立されました。各党各会派から42名の幹事役員が選出され、このメンバーが中心となって議連活動を進めていきます。目標は、国会議員全員にお声がけをして、衆議院・参議院ともに全会一致で「気候非常事態宣言」を決議することです。


次の開催はいつを予定していますか?

設立した時点では、6月17日までの通常国会での決議を目標にしていました。しかし今は、新型コロナウイルス感染症への対策が最優先となっていますので、決議は秋の臨時国会以降ということになります。年内の決議をめざして頑張りたいと思っています。


新型コロナ感染症と気候危機問題との共通点を分析し、何を本質的にやっていかないといけないのかを考える必要がありますが、進めていく際の課題はありますか?

パンデミックと気候危機。共通するのは、人類みんなで協力しなければならない、ということです。

そのときに「自分の国だけ」ではまったくうまくいくわけがない。世界の人々はここを踏み越えて、人類の生存に取り組んでいかないといけないと思います。それが向こう数年にかかっている。

長い目で見たときに、国の発展を保障するのは、やっぱり人、民主主義だと思うんです。そういう意味で、自由と民主主義っていうものを大事に、それをうまく活用することを通じて、気候問題に向かっていく必要を感じています。

国が国難に直面するとき、できるだけたくさんの英知を集めて、その問題に対処できるかどうかがその国の未来を左右すると思うんです。そこで民主主義が機能していなかったら、言いたいことも言えない。いろんな良い考えがあるのに、意見表明ができないということは、結果的に意見を集めることができない。

つまり、強権的・独裁的にやることは、その場ではうまくやれたように見えても、長い目で見たら続きません。もろい。

だから私たちが、地球環境っていうこの大きな問題に取り組もうというときに、その部分をうまく収めるための教育や独裁ということではなく、やっぱり人間っていうものを信じて、自由と民主主義を保障する。

その中から人類の英知を引き出すことによって、人類の生存を維持しよう、これ以外に方法はないのだと思います。

国会は国民の代表です。だから国会決議は、国会の意思表示であると同時に、日本国民の意思表示でもあります。意思表示によって気候危機に立ち向かう気運を高める。そしてこの気運が、政府の背中を押し、国の政策を大きく動かしていくことを期待します。

日本国内でも協力し合うことです。だから、国会決議もみんなで協力して「全会一致」で行うことが大事だと考えています。

古川さん自身が今後取り組みたいことはありますか?

今のグローバル資本主義に代わる本質的な取り組みとして、分散自立型の日本をつくりたい。それが、環境問題に対する一つの大きなアプローチだと思っています。

近代以降、日本は工業立国を目指してきました。物を輸出して外貨を稼ぎ、安い食料品を買ってくればいいんだ、それで国家を発展させていこうという国づくりをしてきたわけです。だから日本は食料輸入大国であり、東京一極集中です。その根っこは同じ、効率性を追っかけてきた。

だけど、その時代は終わりだと思っています。国のあり方を「分散自立型の日本」に変換していくことが必要だと思っています。分散自立型の地域を、全国あちこちにつくることです。東京だけが強いんじゃなく、しっかりした足腰の強い地域社会を全国に広げる。

人は食料と水とエネルギーがなければ生きられない。今までは効率性を求め外国に頼ってきたけれど、もうそうじゃない。地域社会が独自に食料、エネルギーも20兆円分の外国産の化石燃料を買っていますが、自前で調達をし、地域で循環型経済を回す。

そこに雇用が生まれ、地域の循環型経済を回しながら、地域共同体、お陰様、お互い様、人と人の繋がりをもう1回紡ぎ直す。

中でも、地熱発電ですね。それも次世代型の、大深度の地熱発電です。この技術が確立すれば、世界のどこでも地球内部の熱エネルギーを活用できます。わたしたち人類は、二酸化炭素を排出しない、安定的で無限のエネルギーを手にすることができるのです。そうすれば、「脱炭素」もいっきに進み、地球温暖化の「ティッピングポイント」を回避できるかもしれません。

国産の再生可能エネルギーを実現できれば、それが国内で循環する。自分たちの富を国内で回せるようになる。雇用を生み、20兆円以上の経済成長を生むかもしれない。その結果が、脱炭素、食料安全保障です。

貧困と格差、グローバル資本主義の限界、そして環境問題。根っこは一つだと思っています。

ですから、これは一つの問題としてどう向き合うかが問われている。そこに連立方程式の解があるんだと思います。そういう問題意識の中で、私たち一人ひとりがどういう行動ができるのか、だと思っています。



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