中小企業に財務戦略の必要性はあるのか?

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早速ですが、私は現在、金融機関でもある日系の投資銀行で働いております。
普段、投資銀行で付き合いのあるクライアントは、基本的に上場企業などの大企業です。
また、直接的にはそこまで関わりませんが、IPOを考えているスタートアップも主幹事等の案件で関わることもあります。

これらの企業はCFOや経営企画部的な部門が置かれており、経営戦略と財務戦略は一体のものとして考えられていますので、資金調達やらM&Aやらで投資銀行と繋がりを持っています。また、投資銀行側としても収益を見込めるので、繋がりがあるわけです。

そのため、企業は財務戦略くらいあるでしょ、という考えに陥ってきます。

しかし、中小企業(売上高30億円企業くらいまで)はほとんど投資銀行のメインターゲットにはなりません。
それは、投資銀行としてもコストに比してリターン(≒利潤)が少ない、というのが一番の理由だと思いますが、ここで一つ疑問が出てきました。

「中小企業には果たして財務戦略があるのか、また、財務戦略は必要あるのか」という点です

以上より、今回は、私の経験(某メガバンクでの中小企業への法人営業経験や投資銀行での経験)も踏まえて「中小企業に財務戦略の必要性はあるのか?」ということについて考えてみたいと思います。

なお、今回考える中小企業の定義は、日本に多く存在している中小企業を想定しています。
資金調達○億円しました、上場目指しています、みたいなスタートアップは想定していません。(意外とここの対象によって論点もブレる部分ですので)

中小企業の実態はどういったものなのか?

まず、中小企業の実態について理解を深めたいと思います。

2020年度版の小規模企業白書では、約3割の中規模企業(≒中小企業)が経営戦略を策定していない、という結果が出ています。

2020年度版 小規模企業白書

経営戦略を策定していない、ということは財務戦略を策定していない企業はそれ以上に存在しているでしょう。

もちろん、中小企業の種類は多岐に渡っており、社員が社長1人の会社もあれば、売上規模としてはほとんど上場企業と遜色のないくらいだが、資本金の額や従業員の数などにより中小企業扱いになっている会社などが存在しています。
そのため、一概には言えませんが、多くの中小企業は戦略に基づいて経営をしているのではなく、毎日毎日を生きるために活動をしている、という仮説が立ちます。

また、同じく小規模企業白書には、経営戦略を策定していない企業のうち、約75%の企業が必要性を感じない、という以外の理由から経営戦略を策定していない、という結果も出ています。

2020年度版 小規模企業白書

これらから分かる通り、中小企業の場合、多くは「経営戦略を策定して経営をしていきたいと思っているが、策定する時間や人員などが不足しており、かつ、社内にノウハウもないから、経営戦略を策定しておらず、毎日目の前の仕事をこなしている」と考えられます。

また、コンサルティングファームだって、コスパが悪い、ということで中小企業の相手など絶対にしないでしょう。
中小企業もコンサルティングファームに対するフィーが払えるわけもないはずです。

そしてこれは個人的な経験からいってもある程度当てはまっているような気もします。

実際に中小企業の方と接してきて、

  • 社長がフロントマンでもあり、経営者でもあるため、緻密な戦略を考えている時間もない

  • 目標はあるが、それは例えば売上○円、営業利益○円、くらいのもので、ROEが○%、ROICが○%、のような大企業でよくある目標を掲げて経営している企業は少ない

  • 財務と経理が一体化しており、経理担当者が融資なども担当している(融資を受けるか否かは経営者や役員の方が決めることが多いと思いますが、経理の方が進言していることもあります。)

  • 企業として生きていくために、日々稼ぐことに必死にならざるを得ない


という印象があります。
これはコロナ禍に入る前の少し古い印象ですが、現在は以前よりも「日々稼ぐことに必死」という企業が以前よりも増えているでしょう。(個人的には1円でも自らの手で稼ぐことが出来る、というのは尊敬に値しますし、銀行に勤めていた時も常に尊敬の念を持っておりました。)

以上より、多くの中小企業は財務戦略はおろか経営戦略も策定していない場合も多いことが分かりました。

中小企業に財務戦略は必要か?

では、本題について考えてみたいと思います。

「中小企業に財務戦略は必要か?」

これについての私なりの考えは「人手があるのなら、財務戦略はあった方が攻めの経営が出来る」というものです。

まず人手の部分ですが、多くの中小企業では人手不足でやりたいことが満足に出来ない、という状態でしょう。
こうした状況下で貴重な人手を財務戦略担当、という形で割くのはなかなか勇気のいることです。日々稼いでくれる人材を割く、という形になるからです。
言葉を選ばずに言うと、中小企業においては経営戦略や財務戦略を構築している暇があったら、今日のメシ代を稼ぐことが先決、ということではないか、と思います。

また、経理担当の方に財務戦略を考えてもらえばいいのでは、という人もいますが、それは難しいと思います。(もちろん、出来る人もいると思いますが。)

それは、経理に求められる能力は「お金を滞りなく回す能力」なのに対し、財務に求められる能力は「お金を企業経営に活かす能力」であるのではないか、と感じるからです。

経理と財務は密接不可分ですが、特に財務はどの分野にどれほどのお金を投資し、そのためのお金をどのように調達するか、といった点を考えることであり、企業経営とほぼ同義な訳です。
そのため、経理担当の方が財務戦略を考える、というのは難儀な話であると思います。

以上より、財務戦略を立てるのであれば、専門とする人を配置する必要があると個人的に思います。

また、何回か申し上げていますが、まずは日々稼ぐことが重要です。
そこまで稼ぐことが出来ていない事業であれば、まずはしっかりと稼げるようになるのが大切です。

ただ、今回想定している中小企業はそれなりに稼ぐことが出来ている企業も多いはず。

こうした場合、私としては「経営戦略だけではなく、財務戦略もあった方が攻めの経営が出来る」と思います。

経営戦略や財務戦略が無い場合、中小企業は日々自分の事業を回し、運転資金や設備投資(新規投資というよりは既存の設備の維持費)の必要があれば適宜、銀行から借りる、ということの繰り返しで、大きな成長は見込めません。

しかし、しっかりとした経営戦略やそれを裏付ける財務戦略があれば、既存事業を今後どうしていくか、新規事業を今後どの程度の期間でどの程度の規模まで展開するか、などの道筋を付けることが出来ます。
日々の経営に無駄が無くなります。

現実には中小企業に財務戦略を組み込むのは難しい

実際に中小企業にヒアリングをしているわけではないですが、中小企業に財務戦略があった方がいいのではないか、という仮説は成り立つはずです。

しかし、現実問題としては、前述のように人手不足やノウハウ不足もあり、中小企業に財務戦略を組み込むのは難しいと思います。

また、日々中小企業と付き合いのある銀行や税理士などがそういった財務戦略を一緒に考えてくれるか、というとそうではないと思います。

これは自己反省も含みますが、銀行や税理士は多くのクライアントを抱えているため、1社に掛ける労力は必然的に少なくなります。
また、財務戦略を立てる能力も乏しいため、財務戦略という観点であれば、そこまで頼りにはならないのが現実でしょう。

では、どうすべきなのか

「中小企業には財務戦略は必要だけど、現実的には難しい」で終わるのは面白くありません。

では、中小企業に財務戦略を組み込むにはどうすればいいのでしょうか。

この問いに対する解としては、下記が例として挙げられるように思います。

【財務戦略を組み込むための方法の例】
・財務戦略担当の従業員を採用する
・自動化出来る仕事は自動化させ、余った人員を財務戦略担当に回す
・社長の仕事を積極的に従業員に移譲し、社長は戦略を考える

これが出来れば苦労しないよ…って感じですが、現時点ではこのくらいがソリューションの限度であるように感じます。

何か経営戦略を考えてくれるツールがあればいいだろうな、とは感じたりする次第です。

まとめ

ここまでとりまとめもなく、色々と考えてきました。

中小企業は日本を支える大きな存在ですから、ぜひ中小企業にも経営戦略だけではなく、財務戦略が根付いて欲しいな、と思います、

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