【読書記録】ぼくのお父さん
矢部太郎さんの新作、『ぼくのお父さん』を読んだ。
期待通りのほんわかさ、一風変わったお父さんとの大らかでヘンテコリンな暮らしに、自分の幼少期を重ねてみたり、あまりのシュールなオチに可笑しくて笑いながら読んだ。
2回目を読んだ時、「このお父さんはこういう生き方を選んだのだな、自分が大切だと思うものにたっぷりと時間を使ってる。」と思った。
それは、最も人間としてちゃんと”生きてる”という感じがした。
人はいつ死ぬかわからない。
自分の時間も相手の時間も実は限られていることに気づき、本当に実感した時、大切にするべきものはなんなのかと、思い至った瞬間があったのではないだろうか。
一生懸命に仕事をする。それは家族や大切な人を守ることになるだろう。
もちろんである。
きちんと仕事をしながら、家族との時間、友達、自分の趣味など、自分の大切なものにきちんと時間をとる人もいるだろう。
でもこのお父さんは、それだけでは「足りない」と感じたのではないだろうか。
会社に行っている場合ではない。限られた時間ならば、できるだけ長く家族と居たい、今日やりたいことをやりたい。
それは、たとえ明日死んでも後悔しない生き方に思えた。
そんな生き方はなかなかできない。
私は今、コロナ後遺症に悩まされている。
とてもじゃないが、仕事に行ける状態ではなく、長い間休業している。
仕事に行かなくなると急に、仕事以外に大事なことがあったことに、ありありと気づく。
これまでいかに、大切なものをないがしろにしてきたのかがわかった。
とても焦った。
もしかしたら、気づかない方が楽だったのかもしれないとすら思った。
これから先は大事なものを優先しよう、仕事より大事なものがたくさんある。大事な人にたくさん会おう。一緒にご飯を食べよう。話しをしよう。どこかに出かけよう。
そう思うのだった。
『ぼくのお父さん』のお父さんみたいには生きれないけど、ちょっとだけ真似してみようと思う。