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2019年8月 読書リレー

 8月本当に忙しい上にいろいろありまして、しかも『城』を読破していたので、今回ばかりは月ノルマ・3冊すら無理かなあ……と思っていたのですが、月末に県外の図書館に行く機会がありまして、そこの絵本の分類方法がかなり良かったので、その場で3冊読んでしまいました。達成できて安堵。義務感で読むのが良くないのは分かってるんですがねえ。
 今までのモーメントはこれ↓
https://twitter.com/i/moments/995558573286477824


●フランツ・カフカ著、原田義人訳『城』1966年(1922年初出)、角川文庫
https://www.amazon.co.jp/dp/4042083048/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_iWNDDbT9X9DV0

 やっと、読めました。「変身」で心掴まれたので、かるーい気持ちで手を出したらえらい目に遭いました。途中までKindleの青空文庫版で読んでたんですが、わざわざ角川の古い版を買ったのは、表紙が好きだから。方々で言ってますが僕は、新潮文庫のカフカ先生作品(『変身』と『城』)の表紙を一生許す気はありません。先生の顔で遊ぶな。
 話としては、城からの依頼で土地測量技師として呼ばれたはずの主人公が、行く先々で城の人間からも城下の村からも除け者にされまくる話。なんで? つらい。でも主人公も主人公で人を挑発しまくるし、惑わせまくる。なんで?
 終始理不尽だし、登場人物たちの論理もよく分からないし、改行ほぼなし、ページギッチギチに文字は詰まってるし、「こんだけ頑張って読んでも、未完だからオチないんだよな……」と思ったらモチベが下がり……結局、読み切るまで随分時間がかかってしまいました。
 読んでる感覚としては『ドグラ・マグラ』読んでる時に近いものを感じました。なんでこんな理不尽な仕打ちを本の中ですら受けなきゃいけないんですか。現実だけで充分です。
 ただ、そう思うってことはそれだけ、リアルを映してるってことなんですよね……。設定や展開だけ見れば、(現代に限っていえば)到底現実的ではないのですが、カフカ先生は本当、静かな迫害というか、怒鳴ったり殴ったりするでもなく人が自分を拒絶する嫌〜な感じを描くのが、とんでもなく上手いんですよね……。本当……。
 こんなに読みにくいのは、古い訳で言い回しが難解だからなのかと思ったんですが……どうなんでしょう。かと言って、登場人物の朗々たる論説をわかりやすく簡潔に訳すのも、それはそれで魅力が減るのかなあ、と思ったり。
 同じ角川文庫クラシックスで、カフカ先生作品を他にも何冊か買ったので、またそのうち読みたいなあと思います。
 ごめん普通に悪口みたいになった。読んだことに後悔は全然してないですよ。


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●ミーシャ・アーチャー著、岩津ちひろ訳『詩ってなあに?』2017年、BL出版https://www.amazon.co.jp/dp/4776407922/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_woODDbAWEXBYB

 友達の「うのまち珈琲店に行きたい」という話に乗って、ついでに寄った玉野市立図書館で読みました。普通にショッピングモール内にあるんでびっくりした。絵本が豊富で、探しやすかったんで、その場で何冊か読んだうちの1冊。
 1週間後に開かれる「詩の発表会」のポスターを見て、主人公の男の子が「詩とは何か」を毎日いろんな動物に訊いて回る話。
 皆答えが全然違って、男の子はいろんな答えを聞きながら、自分の「詩」を見つけていき……途中からそうだね全然違うよねわかるわかる……という謎の心境になりました。あと絵の色彩がすごく鮮やかで綺麗でした。


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●M.T.アンダーソン著、ケビン・ホークス絵、柳田邦男訳『ぼくはだれもいない世界の果てで』2006年、小学館 https://www.amazon.co.jp/dp/4097261517/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_srODDb3YBN15F

 これも玉野市立図書館で。完全にタイトルに釣られました。
 何も人の手の加えられていない森の中に一人暮らしていた少年が、外からやってきた開発者、子供たちと出会い、暮らし、次々発展していく森を見ながら成長していく(?)話。
 開発者が来た瞬間からすごい不穏。リゾート地をどんどん発展させながら「みな、遊べ遊べ」と叫ぶ開発者が狂気じみててめちゃめちゃ怖い。最終的にはハッピーエンド的になっててよかったです。


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●ジーン・ウィリス著、ブライオニー・メイ・スミス絵、石井睦美訳『みんな、星のかけらから』2018年、フレーベル館 https://www.amazon.co.jp/dp/4577046970/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_uuODDb0V7MVBG

 図書館で読んだ最後の一冊。
 なんでもできる姉を持つ主人公の女の子が落ち込んでいるのを、おじいちゃんが励ます話。
 すごく絵が綺麗。影の部分の濃淡がすごい好き。内容的には……小学校低学年くらいまでが対象かなあ、という感じ。大人が読むと……ちょっと眩しすぎて、ダメージを受けかねないかもしれないです。僕は受けました。まだなんだってできる、どの方角も目指せる時期の子どもに希望を与える話ですね。


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●天沢夏月『八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。』2017年、メディアワークス文庫 https://www.amazon.co.jp/dp/4048926772/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_S1XDDb5E4WP4P

 天沢さんの「月」シリーズ。先月の『七月のテロメアが尽きるまで』と繋がりはありません。なんならこっちの方が先に刊行されてます。
 夏の初めに出会い、夏の終わりに彼女の死によって終わった恋。四年後、彼女の遺品となった交換ノートに、死んだはずの彼女からの返事が届くようになり、主人公の男の子が過去を変えようと足掻く話。
 鼻水流すくらいゲロほど泣きました。こういう話にものすごく弱い。額賀澪『さよならクリームソーダ』の冒頭の言葉を借りれば、「「泣いた」とか「感動した」とか。そんな声に埋もれて見えなくなった、主人公のその後の物語」に弱いんです。
 三秋さんもそうなんですけど、もう救われようもないところにいる(と思われる)人たちが、幸せになるのが好きなんです。よくある映画やドラマ、恋愛小説は、救われるのが早すぎるんです。
 傷を治すのには、ひどく時間がかかる。苦悩は永遠みたいな顔をして、自分を苛み続けていく。それでも救われてほしいんです。現実は、どんなに綺麗な一段落がつこうと、人生は不本意ながら続いていくから、ひとつのピリオドが打たれた後の物語で、登場人物が幸せになるのは、ある種の大きな希望です。
 夏の描写がすごく綺麗で、理想的な夏がここにあります。気になったら、ぜひ。読んでください。


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 9月への繰り越し本はありません。また新たに読んでこーと思います。

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