2020年8月 読書リレー
安定の大遅刻。今年は夏がわりと潔く、秋が長い気がしますね。
せっかくの八月なのに、あまり夏っぽい作品読めなかったのがちょっとだけ残念です。
今までのモーメントはこれ↓
https://twitter.com/i/moments/995558573286477824
●村上春樹『一人称単数』2020年、文藝春秋
https://www.amazon.co.jp/dp/4163912398/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_a5-HFbVRJQRWG
刊行直後ぐらいに、TwiiterのTLに「装丁が美しすぎる」と流れてきて興味を持った本。実際とても綺麗な表紙で、繊細な線のイラストと淡い色彩に、金の箔押し文字。これは帯付きでさらに映えるやつですね。
「短編小説は、ひとつの世界のたくさんの切り口だ」の一文を掲げた、8作品からなる短編集。
村上春樹は、不勉強ながら短編をいくつかしか読んだことがないのですが、まったくの未読だった頃、某ラジオか何かで「村上作品の登場人物は、人間味がないのに脈絡なく急にえっちなことやり始めてビビる」という情報を得ておりまして……まぁ、「やってない」といえば嘘になるのですが、もちろん全部が全部押っ始めるわけじゃないです。こういう突発的な、生の奔流というか、性の爆発というか、そういうのは昔、加藤シゲアキの『傘をもたない蟻たちは』を読んだ時も感じましたね。……あんまりこういうこと言うと、「○○っぽい」と言ってるみたいで、毛嫌いする人もいるとは思うのですが……まぁ、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」みたいな、この話が好きならこの話もおすすめだよ、みたいなものと思っていただければ。
話を戻すと、村上春樹の短編は、パステルカラーみたいな、やさしい、というよりは淡い、薄い霧が常に漂っているような世界観のイメージです。ファンタジー世界では決してなく、確かに僕たちの生きる世界の話なんですけど、不思議な非現実感があります。その中で感じる人々の運命、正しかったはずの未来、みたいなテーマが、どうにもほのかな終末感を漂わせていて、それがすごく綺麗だと思います。この短編集の中では、僕は「ウィズ・ザ・ビートルズ」と「品川猿の告白」が好きでしたね。
余談ですが、僕の大好きな三秋縋さんの『君の話』の執筆の動機になったのは、村上さんの「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」(『カンガルー日和』収録)が一因だそうです。8ページの掌握ですし、文鳥文庫(蛇腹式の紙に印刷された書籍。僕は確か岡山ロッツの無印良品で買いました)でも単体で販売されているので、気になる方はぜひ読んでみてください。僕も好きです。
↓
●松本俊彦『自分を傷つけてしまう人のためのレスキューガイド』2018年、法研
https://www.amazon.co.jp/dp/4865134379/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_R6-HFbDCZ2WPW
どうも最近、自分も周りも自傷的思想に陥っている危機感はあるので、とりあえずなにか改善の糸口がないか読んでみようと思った本。
リストカットなどの分かりやすい自傷行為だけでなく、摂食障害や物質依存・乱用などの行為にどう向き合うか、どう克服していくかについて、行為をしてしまう本人に対してだけでなく、その人を支援する周囲の人にも向けたガイドブックです。
読んだ正直な感想は、「せやんなぁ」って感じです。「わかるわかる……」とも思いました。真新しい知見はあまり得られなかったのですが、逆に言えば、この苦しみは「普通」じゃないし、「普通の人」には、こういう発想がないものなんだなあと再確認しました。かえって、そう考える方が楽な場合もあるのかもしれません。
対処法として挙げられている、自傷の記録をつける「自傷日誌」の具体例を見て、「夜に集中してるなぁ」「一人の時だけじゃなく、恋人や友人と連絡取ってる最中も自傷したくなるんだなあ……そりゃあ、孤独だなあ……苦しいよなあ……」と、(おそらく)存在しない人の苦しみに飲まれそうになったので、自分の性質にちょっとマジで危機感を覚えました。他人の感情と勝手に同調しやすいというか……こういう気質のこと、俗にはエンパスとか言うらしいですね。綺麗事とかじゃなく、本当に生きづらい人間だなとだけ思います。楽に生きたい。
↓
●田中ましろ『傘、魚、花が花芯を持っていること』2015年、私家版
https://utalover.theshop.jp/items/2228292
しんどくなったし読了に時間がかかったので、何か軽いのが読みたいと思い、前に買ってた私家版の歌集を。
定期的に短歌のフリーペーパー刊行や月刊のweb投稿募集を行っているサイト「うたらば」を運営している田中ましろさんの写真歌集。写ってるモデルさんは、山本由貴さんという女優さんらしいです。
舞台は雨の平尾台(福岡県)で、全体的に白みがかったペールグリーンって感じです。あんまり黄みがからないパステルカラーの写真集、って新鮮な気がします。人の写真撮るなら陽だまりってイメージなので。だからなのか、 あんまり全編通してノスタルジックな印象がなくて、終始「いま」に焦点が当たってる気がします。ゆるくやさしい日常的なのですが、真に迫っているというか。
写真詩集、写真歌集などのジャンルは、普通の詩集歌集とはまた違った読み口で楽しいですね。物語に写真や挿絵がたくさん挟まってるのは、あんまり好みじゃないんですけど。韻文とは相性良いと個人的には思います。
9月への繰り越し本はありませんでした。
また、近いうちに……投稿したいです……。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?