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赤蜻蛉止まる近くにまた止まる 大久保 俊克

2015-9

花薄道を通して二本あり

小説の「風の盆」読み日暮れけり

稲妻や気温が下がる雨戸閉め

庭続き秋蝶見つつ水を差す

ぐずぐずと天気の残る秋の蝉  

庭遊ぶ小さな蝶に秋を知る

はじめてのチッコイ西瓜をいただいて

ウロウロと一羽一羽に秋雀

晴れの朝稲の実りを託しけり

眠れない薬を忘れ下り月

売店の桃を五個買ふ旅に往く

見晴しの野点のお茶に萩の花

秋の鷹三羽となりて飛び回はる

曼珠沙華川に流されゆきにけり

コスモスの川に流されゆらゆらと

削り節椎茸あぶって醤油さす

台風や鯉の避難をしてゐたり

台風過農作物の売れ残る

草花や人はパンのみあらずなり

秋の昼ヘリコプターで救助する

眠い子の救助を助け秋出水

長き夜や疲れて眠る体育館

髭剃りの一本残して秋の朝

台風過探しことなき三日間

川の畦一羽跳ねたる秋の蝶

避難所の給水飲めるそぞろ寒

水濡らす電気使えず星月夜

リハビリの朝秋の蝶消えにけり

夕刊も木々も色づき鰯雲

2015-9-16
岡田 耕治先生

赤蜻蛉止まる近くにまた止まる 大久保 俊克

 赤蜻蛉が飛んでいく高さを歩いて
いくと気持ちいいものですが、
佇んでいるときに「どうしたの?」
とでも言うように近くに止まって
くれるのも、心が安らぎます。
あっ、近くに止まってくれたんだ
と思っていると、もう一つ止まって
くれました。自然からの励ましが、
重なること、続くことを、
こんなふうに喜べる作者の感性が
いいですね。

那須岳の芒を見たり空の青

薄の穂岩に腰掛け食いにけり

秋深し農産物を丹精に

心地よく鼾をかけり秋の雨

子を守る秋の白蛇地蔵尊

山澄むや光と水に流れ込む

自販機の新蕎麦選ぶ帰り道

クレヨンで描く絵画や秋うらら

病院の庭を歩いて鰯雲

絵を描き水の木々には秋景色 

秋彼岸母のおはぎにお茶ひとつ

昼食を煮物で作る南瓜かな

敬老日孫に勉強教われり」

眩しくて海の市場に鰯雲

上弦の月や薬が効いてくる

トンボ飛ぶ車の色にピンク色

ドア開く音の大きさ残る虫

秋の蚊の狙つてゐたるうなじかな

湿原の森の景色に秋の空

寝転んで窓の景色に秋の声

ゆで栗をおこわに添えて母想い

左に頭揃へたる焼き秋刀魚かな

晴れそうだ芋名月に二つ買ふ

うさぎ跳ね皆既月食に飛んで来い

立待や朝刊届く郵便受

瓜坊の山を駆け抜け母を追ふ

捕まえてコスモス揺れる色々に

歩く村白が一杯に蕎麦の花

夕刊も木々も色づき鰯雲

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