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「10月以降の株式市場が大きく変質していることに気づいていますか? 先物主導から海外勢による日本株の現物買いの市場に」

12/1        10:50

 今日の話は難しい話です。 
キチンと読んでいただくと多分、株式市場に対する見方が変わると思います。株式市場の本質に関わる話ですが、こんな話は聞くことはあまりないでしょう。証券会社の営業だって、多分こんな話、ほとんどわかってないので。

それでは!

 今年、これまでの株式市場は海外勢を中心とした「先物」に支配され、その先物価格に対応する「国内外15社程度の証券会社」による「裁定取引」によって株価は左右(誘導)されていると言っても過言ではなかった。

 仮に、海外投資家が先物市場で「日経平均の先物」を大量に売り立ててきたとしよう。それによリ、日経平均先物価格が下落していき、東証で取引されている225銘柄の価格が計算された「現物の日経平均」と、この「日経平均先物」に価格差が出て来たとしよう。

 この価格差を取るのが裁定取引(1つのものに2つの違った価格が生じた場合にその差額を取る取引を言う)であり、証券会社は外国人の先物売りで安くなった「日経平均先物」を買って、(証券会社は日経平均構成の225銘柄の在庫は常時保有しているので)手持ちの「日経平均の現物株」を空売りするという取引で対応する。
 しかも、証券会社は東証のサーバーに直結するような取引手法(コロケーション)を利用していて、1秒間に数千回の売買が可能な超高速取引(HFT)で瞬間的に225銘柄を売ったり買ったりしている。 

 日経平均先物市場は少ない金額で大きな金額の取引ができるため、東京証券取引所で現物株を売らなくても、証券会社の「裁定取り引きによる現物売り」で容易に日経平均株価の下げがコントロールされる。
 しかも、先物取引の方が東京証券取引所の現物取引を金額でも上回っているため、東京証券取引所で取引されている現物の日経平均株価は先物に誘導されるということだ。
(先物市場とは東証で取引する現物の株の売買とは異なった市場で、大阪証券取引所、シカゴ、シンガポール先物市場でほぼ24時間に近い時間帯で取引が行われている。)        
 先物取引は基本的には3ヶ月の短期勝負であるから株価が上下の振れ幅が大きい方が好都合だ。
                                 その上、超高速売買で裁定取引のスピードも速くなっているので、先物と株価指数との乖離がすぐに縮まる。そのため、裁定取引の収益性は以前に比べてかなり小さくなっているが故に、金額が巨大化し、株価の振れ幅が大きくなってきているのが最近の動向だ。
 先物やその裏にある裁定取引は振れ幅が小さければ利益には結びつきにくい。凪状態が一番不都合なのだ。
だから「先物」が主導権を握る相場の特徴は「過剰反応」だ。    CPI(消費者物価指数)の事前予想8.2%が8.3%だったというだけでNYダウが1000ドルも下がると言うような具合だ。また、1日の間でも急騰、急落を繰り返す。

 ただ、日経平均の先物や裏腹の裁定取引は3ヶ月毎の先物の決済期日までには、基本的に売りは買い戻し、買いは売りで決済をしなければならないが、「先物売り・現物買い」のポジションを決済していないものは「裁定買い残」、「先物買い・現物売り」のポジションを決済していないものは「裁定売り残」、いずれの場合も先物取引の決済日(SQ)に残高が大量に残っていると、自動的に決済されるので現物株の大量売買につながり、相場波乱の要因となる。
 市場への影響が大きいので「裁定取引の買い残、売り残」は毎週木曜日、日経新聞は東証発表を紙面に掲載している。

【先物主導で日経平均が下落をするこのケースの場合には「裁定売り残(先物の買い、現物株の売り)」が拡大する。
但し、裁定売り残高が増加していく場合、目先の売り圧力につながる一方、逆に「将来の買い戻しの余地」が大きくなるという事で相場が反転上昇に拍車をかけることの裏腹でもある。
 一方で海外投資家が日本株を先物を買い始めてくると「証券会社は先物を売って現物を買う」と言う取引で通常、裁定買い残(先物の売り、現物の買い)が増加する。】

 ところが、現在は、日経平均の上昇局面で裁定買い残が増えるどころか一貫して大幅に減少している。理屈に合わないこの現象は、先高を見越した海外勢が同時に日本株の現物を買ってくるケースに起きる。
 このケースの場合は「証券会社は現物を売り先物を買う」という対応になるため、上昇局面でも裁定買い残が増えない、ないしは減少する局面に変わる。
 しかも、証券会社の裁定取引は現物売りとなるわけで、裁定取引が自動的に売り物を供給するという仕掛けになる。

もう少し詳細に話をすれば、
株式市場が大きく下落し、下値になったところから海外投資家や機関投資家から一定の価格でトヨタ自動車を10万株買いたい、ソニーを5万株買いたいといったまとまった単位の株式の買い注文が出てきたときに証券会社はどう対応するか?

 そんな注文に対応するためにも証券会社は、事前に自己で大半の株式の在庫を抱えていて、自己の持つトヨタやソニーの株式のコストに見合えば、「時間外取引」や「市場外取引」を利用して一定の価格で大量の買注文に対応する。
 こうしたためにも証券会社は誰よりも安いコストで事前に在庫を保有する必要があるわけだ。
通常は、下がれば下がるほど、一般投資家はこんな損をしてまで売りたくはないと思うから市場には売り物が出なくなる。それでも売り物を出させたければ、先物を使っての急騰急落の上にもっと日経平均は急落するだろうと言うさりげないコメントの中に、恐怖感を演出すれば売り物を出させることができる。10月までの相場がそうであったように。

 証券市場のメインプレーヤーは国内外の証券会社だと言うことを知っておく必要があるわけで、SMBC日興の株価操作事件がこうした大口の注文執行に絡んでいるということだ。

 しかし海外勢の動向等からこれから上がるのが分かっていて証券会社は手持ちの現物を売ってしまってはみすみす儲けそこないということになるから「先物を買うことによって先高をヘッジしておく」ということ。

 さらに手持ちの現物株を手放さなくとも、株を借りてきて空売りをすればいい。
では証券会社以外で、他に大量に株式を持っている人は誰?
答えは日銀。日銀はETF(上場投資信託)の大量の買い付けでおよそ60兆円余りの株式を保有しているだろう巨大投資家。
 その日銀は2020年6月12日ETFの貸付を開始すると発表、金融機関は現金を担保に最長1年間ETFを借りることができる。
日銀がETFを買い付け貸付する理由は、まとまった株が買える流動性を提供するためと言っているが、一方で株価の変動幅が大きくなる主因となったの批判もある。
 

※「ETFとは上場投資信託」で証券取引所に上場している投資信託の
こと。
株式と同じように取引所でリアルタイムで価格は変動し、売買される。
日経平均株価やTOPIX、東証REIT(不動産投資信託)指数、米S&P500種株価指数などの株価指数と連動する。


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