政局日記(10月29日)

 今日は萩生田政調会長の動きに注目する。
 10月26日、鈴木財務相は、茶谷事務次官、新川主計局長と共に首相官邸を訪れ、補正予算案の規模を提示した。鈴木は、約25兆円の規模とし、「党内も大体まとまっている」と報告した。
 しかし、岸田首相は財務省側の報告に疑問を持ち、萩生田に電話をして確認したが、やはり萩生田は納得していなかった。
 同時刻、党の政調では補正予算案に関して詰めの協議が行われていた。萩生田は岸田からの電話の内容を明らかにし、出席議員からは憤りの声が相次いだ。
 結局、岸田は夜9時に鈴木と新川を呼び出し、「もう少し頑張れないか」と額の積み上げを指示し、財務省は負い目ができた形となり、その後の調整では次々と党側の要求が受け入れられた。
 実は、岸田は萩生田と連絡を密にしており、  「岸田と萩生田がタッグを組んで財務省と対抗した形となった」と首相周辺は言う。
 萩生田は28日、記者団に「首相とのやり取りを外に話すのは作法として望ましくない。(ただ、)会議で皆さんが日本の将来を心配して発言している中で財務相が官邸を訪問して具体的な話が始まった。『禁じ手だな』という思いがしたので、禁じ手には禁じ手で返した」と説明した。「政府・与党がお互い反省して、しっかり連携できるように体制を作っていきたい」と述べた。
 

 今回の騒動の疑問点は、財務省側の対応だ。大臣、次官、主計局長のトップ3が提案した内容がわずか数時間でひっくり返されたと言うことだ。単に根回し不足なのか、それとも岸田に奇襲をかけたが失敗したのか、また、30兆をこえないように党側に花をもたせて負けたふりをしたのか。個人的にはこの部分が引っかかる。
 岸田は萩生田と連携し、即座に連絡を入れたのはナイスプレーだった。ただ、もし連携が取れず、政調が突き上げる形となっていたら政権の求心力はさらに落ちていたことだろう。岸田が萩生田と組んだのは良い判断だったことだろう。
 今回の1番の勝者は萩生田だ。政調の出席者の怒りのパワーを使い、予算案をひっくり返した。「自民党で最も政治技術を持った方」と評された二階元幹事長の動きを彷彿とさせる。
 萩生田は文科相時代に35人学級を財務省に認めさせ、財務官僚に「大敗だ。萩生田を抑えきれなかった」と言わしめた。対財務省では二度目の勝利となった。
 萩生田はしっかりとお作法の従い、財務省の弱点を突いて4兆の増額を認めさせた。まさにケンカ番長だ。

 ただ、今回の件は財務省の大失点、萩生田、岸田の連携プレーで軍配が上がったと考える。逆に言えば、萩生田個人が4兆円の増額をさせたわけではないし、結果として30兆円には達していない。
 それでも、今回の一件で、政権の「骨格」として萩生田は着々と地歩を固めつつある。

  

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