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満洲族の独立精神を無視した国際世論 12/28

〔111〕満洲族の自立独立精神を過小評価した国際世論
 辛亥革命の目的の一つ「満蒙と漢(中華)の分離」に邁進した川島浪速ら支那浪人と帝國陸軍の一部からなる志士たちが、粛親王を担いで清朝の復辟を図る満洲族の政治結社「宗社党」を支援して起こしたのが第一次満蒙独立運動である。
 志士軍人の中心は参謀本部付・奉天特務機関長の高山公通大佐(旧11・のち中将)で、これに協力する者として守田利遠大佐(旧8期・のち中将)、貴志彌次郎中佐(新制6期・のち中将)、多賀宗之少佐(新4期・のち少将)らがいた。
 いずれも錚々たる現役軍人で「参謀本部付××駐在」を拝命するも具体的任務を明確にせず、各地の実情を探る名目で参謀本部から派遣された形を採っていた彼等の真の任務が満蒙独立工作に在ったことはいうまでもない。
 高山大佐の任じた奉天特務機関長はいわゆる「特務機関」の一つで実態は秘密にされていたが、高山の後任に守田大佐が就き、その後一旦廃止されたあと大正九年に復活し貴志彌次郎少将が就いた。
 彼等はいずれも第一次満蒙独立工作に携わった軍人であるが、その後も順調以上に進級している。これを観ると、第一・二次の満蒙独立運動に帝国軍人が関与することを、政体内閣はもとより統帥中枢の参謀本部も認めていたことが明白である。
 第一次満蒙独立運動について『ブリタニカ国際大百科事典』が説くのは、「日本が”中国”の主権を無視し、満洲・蒙古を勢力圏とすることを図った運動」であるが、これは明確な誤りである。
 そもそも”中国”とはいかなる国のことか、それが問題である。主権というからには地域や民族のことでなく国家のことであるが、辛亥革命の直後において「中国」なる国は「中華民国」しか存在しない。それ以前は「中国」と謂えば大明帝国のことで、その版図が支那本部(China proper)と呼ばれる十八省である。
 支那本部に侵入し大明帝国を滅ぼした満洲族が大明帝国の領域たる支那本部を占領し自族固有の領土たる満洲を併せて建てた複合民族国家の大清帝国は、自族発祥の故地の満洲を封禁の地」として特別扱いし「漢族の流入を厳しく禁じたのである。
 かくして辛亥革命の直前には遼寧・吉林・黒龍江の三省に分かたれて東三省と呼ばれ、大清帝国領の一部を成していた満洲の主権は、辛亥革命で清朝が倒れた後は満洲族に属するのが当然の理である。
 つまり『ブリタニカ国際大百科事典』が上述の如く「中国の主権云々」などと説くのは完全な誤りなのであるが、そもそもこの誤りは、昭和六(1931)年の柳条湖事件の直後、国際連盟が満洲に派遣したリットン調査団が連盟に提出した『リットン報告書』に発するもので、WWⅡの後に開催された「東京国際裁判」がこの『リットン報告書』の歴史観を判断の基準としたので今や正論の如き扱いを受けているのである。
 柳条湖事件(満鉄爆破事件)が発生した昭和六年九月十八日であるが、翌日に中華民国政府が国際連盟に報告し、事件の調査を求めたことで設けられたリットン調査団が作成したのが『リットン報告書』である。
 同報告は、満洲の経済発展が日本によってもたらされたことを認め、世界に類を見ないこの地の特殊性を述べたが、昭和七年三月一日に建国宣言した
満洲国については「日本の政府官僚と軍人が独立運動を計画し、組織的に建国を実行した」とみなして満洲人の自主独立性を否認したうえ、「在満支那人が一般的に現状の満洲国政府を支持していない」として、下記の提言をした。

  
  満洲に支那の主権の下に自治政府を樹立する。
  自治政権は国際連盟が派遣する外国人顧問の指導の下で充分な行政権を  
  持つものとする。
  満洲を非武装地帯とし国際連盟の助言を受けた特別警察機構が治安の維  
  持を担う。

  日支両国は「不可侵条約」「通商条約」を結び、ソ連がこれに参加を求  
  めるのであれば、別途三国条約を締結する。

 
 ようするに、もとは満洲族固有の土地であった満洲が、清末以来漢族の多数流入により、今は住民の大多数が支那人(漢族)であることを根拠として「満洲の主権が支那にある」とするのである。
 大清帝国成立以前の満洲は満洲族が建てた大金帝国の領地であり、どうみても中国(ないし支那)とは一線を画しているのだが、リットン報告書が住民人口の多少を以て判断の基準とするのは、そもそも国際法が、結局は現状尊重を唯一の原理とする実情によるものであろう。
 国際法のこのような実態からすれば「民族の生存闘争において最大の正義は人口であり、移民こそ最大の武器となる」わけであるが、だとすれば、移民のほかにも、先住族との混血の推進や先住民人口の削減も有力な手段である。現にそれが行われているのが、辛亥革命後も「中国」の主権のもとに置かれたままの新疆ウイグル地区とチベットおよび南モンゴルなのである。
 ところが満洲に限ってそれらの国(地区)と異なる点がある。それは、かつての宗主族としての満族が、権力保持のための楔を秘かに支那社会の中に打ち込んでいること、と白頭狸は思う。
 現に、今日の中共上層部の多くは満族の血が入った家系、ということを白頭狸は本人から聞いている。

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