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図書館本 22冊目 『口訳 古事記 町田 康』474P

初っぱなから面白すぎでした。

電車内で吹き出し笑いするのを恐れて、「これ、笑かされるよね。絶対次の行で笑かされるよね…」と、呼吸を整え、用心しながら読んでました。

「口訳」とは「しゃべくり訳」ととっていいのでしょうか。
落語のような、漫才のような、LINEのやりとりのような…
古事記初体験がこの本です。
(これでなければ、この先、古事記を読む機会があったかどうか。)

読んでいて、ツボにはまったセリフ、表現がいくつかあります。
私にとっての笑いのポイントですね。

①「集めたら、ボケ。」・・・(集めてやるわい、集めてやら~、の意) 
因幡の白うさぎが、サメをだまして結局えらい目にあった顛末を関西弁、いや大阪弁で、大国主神(おおくにぬしのかみ)に語る場面です。
その一人語り全文が面白い中で、ムキになったサメの「集めたら、ボケ。」がツボりました。
「!」じゃなくて、「。」なのもツボなところです。妙な落ち着きというか…

その時はもう、本から目をそらして、ひたすら笑いをこらえてました。
何でそこまで、というくらい私にはおかしかったんです。
電車を降りても「集めたら、ボケ。集めたら、ボケ。集めたら、ボケ…」
これは、「集めたら、ボケ経」ですね。
笑いが収まるまで頭の中で唱えてました。
今はもう大丈夫です。ニヤッとするぐらいで…

②「いやよー。
戦で敵から逃げる時、災難から逃れる時、上司やらの理不尽な要求から逃げる時など、様々な困難から脱するときに、いろんな人が発するセリフで、何度でも出てきます。
なんというか、力の抜けた逃げのひと言…
クセになりますね。

話の流れで「これは出るぞ…」というところで当然のように「いやよー。」が出てきて笑ってしまい、出てくる度に「ほら来たー。」と笑かされてました。

③「いい感じ」 
何かの ”ものすごく良い具合” を表す時に多用されてます。

・例えば、イザナギノミコトから生まれた、天照大御神も月読命も須佐之男命も「いい感じの神」で、

・八岐大蛇(やまたのおろち)の尾から出てきた草那芸剣(くさなぎのつるぎ)も「いい感じの、ムチャクチャに切れそうな刀」で、

・須佐之男命が宮を建てると「空にいい感じの雲」が立ち上ったり、豊玉毘売(とよたまびめ)のために「いい感じの産屋」ができるはずだったり、剣の池が「すごくいい感じに仕上がって」みんなが喜んだり、「いい感じ」に出世したり…

「いい感じ」で思い出したことがあります。
髪をカットするとき、美容師さんに「…では、このへんはいい感じにカットして…」とか言われてました。その「いい感じ」という言葉をすごく覚えてるんです。
「いい感じ、て…」とか思ってました。便利なフレーズです。

毎度、電車の中で笑いの波が来るので、その度にくちびるをキュッと結んでページから目をそらし、ちょっと涙目で窓の外を見たりして、なんとか耐えていました。(笑いが収まらないと、次の行に進めません。)

『古事記』って、こんな笑かされるものだったんですか。

そこで、ちょっと、原文どーなってるのよ、と気になって、30年間積ん読していた『古事記(上)全訳注 次田 真幸』(講談社学術文庫 1994年 第26刷発行)を引っ張り出してきました。

この本は、原文なしで、書き下し文と現代語訳に、注と解説が載っています。
よく捨てずに持っていたものです。(まぁ、なんか、続き物の途中だし…)

カバーにちょっと折れと汚れがありますが、日焼けも使用感もなく、概ね良好な状態、というか、多分1ページも読んでない。

上・中・下巻ある本なのに、上巻しか買っていないのは、読める予感がしなかったんでしょうね。(なぜ買ったのかな…)

そんな『古事記(上)全訳注』が、この『口訳 古事記 町田 康』に出会って、初めて日の目を見ることとなりました。
積ん読はしておくものだなぁ、と思いましたね。

その時すでに『口訳』も中程まで読み進んでいたので、あわてて続きの『全訳注 』中・下巻をまとめて買っちゃいました。

まず調べたのは、やはり、「集めたら、ボケ。」でした。
結果、サメ、ひと言も台詞無かったですね…(笑っちゃった)

そして、この『口訳 古事記』を電車で読むのと同時に、全然関連のない別の本を家読みしていたのですが、その本の中に「本居宣長」の話が出てきました。
「あぁ、日本地図作った人だな。」なんてしばらく思い違いをしていたら(そうです。地図は伊能忠敬です…)違和感があり、調べたところ、『古事記伝 全44巻』の方でした…
(昔、日本史で習ってたんでしょうね。国学者とかって、教科書には書いてあったんでしょうね。全44巻ですよ…)

他にも、『口訳』の中で、何度か出てくる「うけひ」という占いのようなものを知ったのですが、同時に読んでいた他の本にも遅れて「宇気比(うけい)」という言葉が出てきたので、「これ、うけひのことか!」とハッと気付いたり。これも、神様ごととか無関係な本でしたね。お、シンクロ、みたいな。

ちょっと古事記づいていたこのごろでした。

あと私は、中国や韓国の小説に出てくる、漢字やカタカナの名前を覚えるのがかなり苦手なんですが、古事記に出てくる神様たちの名前はもっと覚えられませんね。漢字と読み方が合ってないや~ん?の連発です。

さてこれから『口訳 古事記』を返却するんですが、後から買い足した『古事記 全訳注』を、私は読むんでしょうかね…(下巻まで買っちゃって)

『口訳』は仁徳天皇の話で終わっています。
『全訳注』でいうと、下巻の最初の話が「仁徳天皇」で、その後、最後の「推古天皇」まで、まだまだ続きがあるのです…(全然知らなかったけど)
もちろん、大阪弁ではないのです(これは知っていたけれど)。

今後『口訳 古事記 町田 康』を買って、もっと『全訳注』と読み比べてみたいと思います。
それまでは、また積ん読の仲間入りですね。
その、買う予定の『口訳』ごと積ん読になる可能性も大きいですが…

気になった時に、気になった所をすぐ読めるのが自分の本のいいところですからね。(何と言っても持っている安心感。家中探し回って、無いっ、ていう時もありますけど…)

また面白い本読んじゃいました。








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