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”★☆北区AKT STAGE第9期生募集”

劇団員募集の記事をHPにアップした。本当は昨年の12月には情報公開するつもりだったが、考えがまとまらず時間が経ってしまった。

コロナ禍になり、養成所を休止したまま3年が過ぎた。新しい人材が入って来ないということは団体にとってあまり良いことではない。水は滞留せずに常に流れている方が澄んでいるはずだ。ただ、これまでのシステムで再開していいものか、もっと良いシステムはないだろうかとずっと考えていた。

現在の心境を包み隠さずに言うと「どこまでできるのだろうか」という不安と「メッチャおもしろくなるんじゃないか」という期待が入り混じっている。

”★☆北区AKT STAGE第9期生募集”
なんせ「費用は原則無料」なのだ。。なぜ無料なのか。

時代の流れ、などと一括りにしてしまいたくはないが、劇団のシステムというものはあまり現在の演劇界のトレンドではないと思われる。誰もが知っているような劇団さんならともかく、演劇をやりたい人間=劇団の養成所の門を叩く、という時代ではなくなってきている。演劇をやりたい人口というものは(おそらくさほど)変わっていないのに、お金を払って一定期間(しかも大体一年間)養成所で学ぶ、と考える人口は明らかに減っているように感じる。

あんまり声を大にして言うと怒られそうだが、養成所の授業料というものは劇団を運営していく上で大きな財源となる。特に固定の稽古場を持っている団体にとっては。それ自体、悪いことでも何でもない。むしろ当たり前のことだし、養成所を運営していく、責任を持ってレッスンを行うことを考えるとそれぐらいの対価は当然のことであると思っている。

自分が劇団に入ってもうすぐ20年になろうとしている。その中で生活が苦しくて演劇を諦める人間にどれだけ出会っただろうか。下積みってそういうものだ、と言ってしまうのは容易い。苦しい状況の中で生まれてくるものもあるだろう。苦労は買ってでもしろ、という言葉もあるが、個人的には必要のない苦労はしなくていいと思っている。

演劇を続けていく上で、生活というものも重要だが、同じくらい重要視されているのがチケットの販売数ではないだろうか。ひと昔前は、チケットノルマというものは当たり前のようにに存在していた(今もなくなってはいないのだろうが)。チケットノルマ=販売できなかったら自腹で興行主に支払うシステム。大抵の場合、そういう興行の出演料はチケットノルマ以上の販売数に合わせてのチケットバック制。つまり、ノルマ以上を販売して初めてギャランティがもらえる。ノルマ以下だと一円ももらえないどころか、チケット代×ノルマに達していない人数、を支払わなければならない。幸いにも自分はそういう現場には数回しか遭遇していないが、演劇を始めたばかりの人間は当然、なかなか集客に苦戦する。稽古や公演期間はアルバイトもなかなかできずに、そこから更にノルマ達成しなければ稼いだ金が溶けてゆく。数ヶ月必死でアルバイトをして僅かばかりの貯蓄を作り、舞台に出演して、お金がなくなってまたアルバイトに精を出す、そんな話は未だに存在する。その中でも生活費は必要だし、まして地方から東京に出て家賃を支払わなきゃいけない人間だと余計に。

夢がないよね。

「東京に実家がある人間は、それだけで役者に必要な条件を一つ満たしている」そんなことをずっと思っていたけど、あながち間違いではないんじゃなかろうか。

とはいうものの、劇団主宰という立場からすればある種の仕方なさも感じえないことも事実。劇団を経営していくためには公演なり事業なり(養成所も含め)で黒字を出していかないことには、継続させていくことさえ困難なのは現実(よっぽど私財があってそれを注ぎ込める人は別だけど)。とはいえ、ノルマがあるっていうのは=公演の収入予算がある程度の確実性の上で立てられる=客席が埋まらなくっても主宰は自腹を切らなくていい計算ができる、っていう何とも都合のいいシステムなんだけど。そんな夢を喰う獏みたいなの、好きじゃない。

だから、無料。
生活のためにやりたいことを諦めざるを得ない人間をなるべく生み出したくない。とっても理想論かも知れないけど。そして僕は★☆北区AKT STAGEという劇団をもっともっと良い集団にしたい。じゃあ内外に対して良い集団って何なんだろう。結局、人でしかないと思う。どんな職種・業種でも同じことが言えると思うのだが。演劇もそうだが、劇団なんてどんなに志が高くても、人材が集まってくれないと伝えることさえできないし、それを体現することなんてできない。

”講師として「教える」つもりはありません”とHPで書いた。いやいや、ちゃんと教えろよって話だけど、教えられたことより背中を見て自分なりに考えたこと、技術や現場の居方だったりって、真似してきた・盗んできたことの方が自分個人としては大きいと感じるので。「教える・教わる」の関係性じゃなく「伝える・盗む」の方が真理なんじゃないかって(まぁお前ごときが何を伝えられるんだ、って言われてしまうかも知れないけど)。演劇において、教えられないようなことの重要性だったりも重要だったりする。

”年齢・経験は問いません”とも書いた。それでいいと思う。未経験の方、演劇をやってはいるけど、いまいち地に足がついていないと思うような方、将来自分で劇団を立ち上げたいと思う方、演技の引き出しを広げたい方など、現在の状態は気にしない。とにかく「本気」と「やる気」のある人間に集まってもらいたい。

とはいえ、どれくらいの応募があるのか全く想像ができない。人数が多すぎてしっかりと向き合えない、なんてことは絶対に避けたいので、不本意ではあるが応募者多数の場合には絞らせていただくことになってしまう。

劇団代表と同時に俳優でもある自分は、残念ながら忙しくてスケジュールを全然空けられないような人間ではない。時間は作れるものだから、その時間をレッスンに充てたい。レッスンというか、有意義な演劇空間を共有しましょう。そんな気持ちでしかない。それは結局のところ自分のためにもなると思ってる。

#変わる演劇の学び方  みたいなものを一緒に作っていきたい。とはいえ、これまでの、演技だけじゃなくダンスやアクションの授業が毎週あって、外部講師を招聘して日舞や発声のレッスンもやっていたカリキュラムやシステムは決して間違っていないことには自信がある。ただ、それをするためには講師料もかかるし、そこに関しては、原則無料という中では難しいので、外部講師の招聘に関しては

講師料÷参加人数。で負担してもらおうとは思ってる。劇団の取り分はゼロでいい。そして招聘する講師はあくまで受講者=準劇団員主導でできないかなーって。講師陣をこちらでリストアップしておいて、自分たちでやってもらいたい講師を選ぶシステム。イメージ的には、義務教育でマストのものじゃなく、大学の選択授業みたいな。もしくは、旅行とかでオプションを追加できる、みたいな感じ。だから、意欲がなければオプションなしの週1日。皆が望むのであれば(もちろん実費はかかるけど)週7日、みたいなことだってできちゃうかも知れない。それぞれ1コマの単価は違ってくるだろうがで、講師のラインナップは

・俳優
・演出家
・振付師
・殺陣師
・ボイストレーナー
・舞台監督
・プロデューサー

などを考えている。まだどういうカリキュラムになるかということは未確定要素が強いかも知れない。とはいえ、★☆北区つかこうへい劇団時代から続く30年のメソッドとノウハウがある以上、一定水準を超えることはお約束できる。

正直、一年やってみて来年以降は原則無料ではやれないんじゃないかと思っている。でもやってみたい。試してみたい。巷で見かける「モニター募集」じゃないけど、まだベータ版かもしれない。でもそれを自分たちで作れるのってワクワクしない?”劇団員募集”って書いてるけど、実際には「準劇団員募集」なのかもしれない。アルバイト含む仕事における「研修期間」のような時間のイメージなのかな。もっと主体的で実践的なものであって欲しいが。

応募者、から準劇団員となる方々には2023年、今年の夏の本公演の稽古場にも携わってもらい、出演してもらいたいと思っている。何なら現在の劇団員の役を奪ってもらいたいとさえ本気で思っているし、それが可能な稽古場にするつもりだ。

”合う・合わないは存在する”。劇団ともお互いに相性というものは存在する。単純に劇団員を増やしたいというだけではない。今は何者でもないかも知れないが、未来の演劇界を担うことのできるような人と出会い、同じ時間を過ごしながら切磋琢磨していきたいと思っている。

これまでのやり方や常識に捉われていたら、新しいことは始められない。新しい出会いに期待しています。


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