2022年。

ブログを書かなくなって久しいが、SNSだけでは物足りないというか、脳内を晒け出す場所がもう1つぐらいあってもいいんじゃないかと思い、初の投稿。

本当は本名を出さずに、俳優の仕事・劇団のことは表に出さずに、普段自分が思っていることや好きなことだけ発信していく場にしようと思っていたのだけども、人生において切り離すことができないものをわざわざ切り離すこともあるまい。特に何かに特化したnoteにする必要もないかと思い直す。

文章を書く機会というのは少なくないが、これが大変な苦手分野である。公演をやろうものなら、必ずや長文の挨拶文を書かなくてはならないし、販売用のパンフレットも合わせると2パターン必要となってきて、いつも締め切り直前まで推敲を繰り返している。じゃあ何故noteを始めたかというと、書くことで自分の思考を整理できるからに他ならない。だったら日記を書いていればいいのだが、まぁその通りなのだが。とにかく力を入れずにやってみようと思う。

2022年5月『飛龍伝2022〜愛と青春の国会前〜』


2022年上半期は5月の紀伊國屋ホール公演『飛龍伝2022』の準備に追われる日々だった。劇団として久しぶりの紀伊國屋ホール。例年の公演よりも数倍大きなバジェットの公演となるので、失敗は許されない。しっかりと今後の旗印となるような公演とすべく奔走した。キャスティング・稽古スケジュール管理・演出助手のような仕事・舞台監督補佐からプロデューサーまで。自分にできることは何でもやろうと思ったし、キャパシティがオーバーしないように(それでもしてたけども)色んなものを前倒しにして行動することを心がけた。表には出ることはなかったが、あの拍手は忘れることができない。予想していた以上に色んなピースがハマった。本当に周囲の方の協力なくして何かをすることはできない。改めて実感させられた。


2022年7月『寝盗られ宗介』


『飛龍伝』が終わったら、すぐさま『寝盗られ宗介』の稽古スタート。次は演出の役割も追加。正直、大変すぎて記憶があまりないが、毎日稽古を終えてから朝までずっと音楽を聴きながら(劇中で使う音探し)台本を読み返し、次の稽古でやってみたいことを考えていた。その時のメモは膨大な量になっていて、時々読み返すと色々ぶっ飛んでいて面白い。いつか”俳優ノート”みたいなものを書く時がもしもあったとするならば幹となるような言葉たちが、ひたすら箇条書きで羅列されているだけ。時間を割いて作ったイメージを稽古場で試し、違ったらまた別のアプローチも考える。その作業をひとりではなく、稽古場にいるキャスト・スタッフ陣と共同でできたことも良かった。とにかく不恰好でいいから毎日前に進もうとしていた公演だったように記憶している。

2022年9月『ストリッパーのはなし』


夏の終わりくらいにドラマに急遽出ることになったり、コロナに罹ったりしながら。(あ、そういえば年明けすぐもドラマ出させてもらってた)9月は日常茶番会『ストリッパーのはなし』演出。前述の理由もあり、稽古参加が大幅に遅れてしまって。でも再演ということが素地としてあるっていうこと、キャストが★☆北区つかこうへい劇団の同期・那須野恵ということもあり、非常に密度の濃い稽古期間で正に「創った」作品になった。劇作の経験もないからPCに向かったところでセリフなんて出てこない。稽古場で那須野と向き合って「こういう風にしたい」「こういうイメージで」というやり取りから浮かんできたセリフを、その場で書いてその場で演じてもらい推敲を繰り返すうちに出来ていった。もちろん口立てなんてできようはずもないのだが、感覚的には近いのかもしれない。小屋入りしてからも最小限のスタッフさんたちしかいないし、主宰の気持ちに皆が呼応するようでとにかく毎日が楽しかった。

2022年12月『売春捜査官』『ヒモのはなし』


そして12月公演の準備に入るわけなのだが、今回はキャスティングに苦戦した。というのも例年の劇団公演ラインナップに1本大きいのが加わったことにより、主に男性劇団員の生活が逼迫していたのだ。「公演には参加したいけれども・・・」という声をよく耳にし、出れる人間を把握するところから始めるものだから演目決めが後手に回ってしまい、正直言うと今冬の劇団公演は中止にしようかとさえ本気で考えたものだ。

『売春捜査官』演出:時津真人 女性陣はさておき 熊田:小山蓮司 万平:松本有樹純 大山:本橋裕亮。
『ヒモのはなし』演出:髙橋広大 出演:時津真人

なんか既視感しかなくって。

「俺、金太郎やるよ!」

自分でも何でそんなこと言ったのか分からない。終演した今となっては何とでも言えるが、多分その時の自分は「俳優なんだからできない役はない!」なんて思っていたんだろうし、決して間違ってはいないのだが、役のイメージとかっていうのは確実に存在するもので、とにかく稽古初日を迎えるまで不安でしかなかったし、自信はなかった。いわゆる正攻法だけで勝負する気は最初っからなかったから、とにかく盛って盛って、メガ盛りにしたところから要らないところだけを削ろうというイメージで、稽古しながら勝手に盛って行ったら意外と本番まで残ってしまった。この期間、松本さんとは二人で飲みながらいっぱい話した。もちろんこれまでも話していたけど、今回は更に踏み込んだところで。演出の木村も上からな言い方になってしまうが、よくハンドリングしてくれたと思う。サッカーW杯で日本代表が強豪ドイツやスペインに勝った姿を見て、今回の座組の姿と重なった。”個”だけで勝負しなかったし、誰かに寄りかかることなく立っていることができたから(皆、僕相手には何してもいいと思っているフシはあったが)経験値としてはそれぞれ得るものが大きかったのではないかと思う。ただ、あれだけやったらしばらくは『売春捜査官』に関わりたくないと思っている。まぁ、今回のは劇薬だったのかもしれないし、来年には携わっているような気もするが。

一年ぶりの出演だったわけだが、何の違和感もなかったのはずっと携わってきたからに他ならないだろう。そして離れている間に考えたことや思ったことは、確実に自分の中に活きていることを12月公演で感じることができたのは大きな収穫だった。後半戦のために、前半戦を必要以上のハードワークでこなし、後半戦はなるべく無駄をなくすことを心がけた。何のこっちゃ。

さて2023年はどんな年になるのか。きっとまたたくさんの芝居に関わっているのだろう。春には久しぶりの商業演劇だし、秋の公演ではもしかしたら座組最年少かもしれない。きっとまたたくさんの出会いもあるし、予想もしないことも起こるかもしれない。

個人としても当然だが、劇団としてももっともっと先のステージに進んでいきたい。ちゃんと応援してもらいたくってnoteを始めたんだな、って今分かった。

2022年もお世話になりました。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?