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君の名は? 記憶にないのに記録がある

携帯の着信履歴に「〇〇保険会社 佐藤様」からの電話と留守電があった。
火災保険の契約更新のご案内についてだった。
さて困った。〇〇保険会社と契約した記憶が無いのだ。

とはいえ、私の携帯に「〇〇保険会社 さとう様」と登録があるのだ。
完全な間違い電話という訳でもないだろう。
我が家は××保険会社と契約している事になっている。
火災保険って何社も入るものだったっけ?どういうこと?

考えても思い出せないし、分からないとも言いだせなくて
今までの契約内容と、これからの見積書を出して下さい。と言ってみた。
書類があれば解決するし、詐欺の可能性も確認できるだろう。

そうして出てきた見積書は同姓同名の別人だった。
私は契約していなかった。
保険の契約を忘れ、保険証券という大切なものを紛失する
とんでもない間抜けでは無かった。良かった。セーフ。(セーフ?)

それなら何で私の携帯に登録があるのだろう。
先方の携帯に私の登録があるのだろう。
分からないながらも電話して人違いであった事を伝えた。

会話して分かったけれど「佐藤様」も私の存在が分からない。
念のため夫の名前でも検索してもらったが、該当無し。
お互いの携帯に登録はあるのに契約も、見積も何も無い。
真相は闇の中になってしまった。

いや何だったんだろうなぁ。もやもやが残った30分後
電話した事がきっかけだったのだろう、唐突に思い出した。
私は脳のどこかに、声の記憶を持っていたようだ。
佐藤様が誰だか分かった。

佐藤様の正体は私が遭遇した事故の、先方側の保険担当者だった。
車を運転していて赤信号で停止していたら、後ろから追突された。
その時追突してきた人の保険担当が〇〇保険会社の佐藤様だったのだ。

契約はしていなかった。けれど携帯に登録していた理由があった。
声とか匂いとか、何かきっかけがあれば記憶が蘇る事があるのだ。
もしかしてまた5年後に電話があるかもしれないなーと思いつつ
いや、佐藤様は保険の営業として結構なミスをしたわけだから
私の名前はソッコーで削除しただろうなと思うのだった。

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