手紙を燃やした話

 手紙を燃やした。部屋を整理していたら出てきた元恋人からのもの。誕生日祝いとバレンタインの手紙。最近になってようやく吹っ切れたのだが、興味本位でその手紙を読んだ。読み進めていくうちに自然と懐かしい気持ちと愛おしい気持ちが沸き起こった。当時はお互い愛し合っていたことがよく分かる文面だった。だが、それはもう終わったことである。

 ネット恋愛をしていた私たちだが、お互いの誕生日祝いや年賀状などを送るために住所を教えていた。今考えればとんでもないことなのだが、浮かれまくっていた私は住所を教えたのだ。(トラブルは何も起こっていないが、ほんとに良くないことだからやめといた方がいい。)

 本題に戻ろう。その手紙を燃やしたのだ。別れを告げる時に、お相手に手紙を燃やしても構わない。という文面を送っていながら私はそれをしていなかったのだ。アンフェアがすぎると思った私はそれを燃やすことにした。

 家の近くに小川が流れている(田舎住みの特権みたいな)からそこに行った。燃料が切れかけたライターと手紙2通をもって。

 誕生日祝いの手紙を最初に燃やした。やはり紙とはいえ、燃やすのは少し躊躇する。ライターの火をつけ、手紙の端っこにそれを移す。オレンジ色の炎が紙全体を舐めるようにして燃え上がった。意外と燃えない。火が上に上がるのにビビって私は全体が燃え切る前に手を話してしまった。地面に落ちながら灰になっていくそれをただジッと眺めることしか出来なかった。その時私は何を思っていたのだろう。分からない。恐らく、これでちゃんと終わり。そんなことを考えていたと思う。

 封筒は住所が書かれているため、それを抹消するためにも燃やさなければならないと勝手に思ってしまった。(縁を切るためにも無い方がいい。)ライターが使えなくなったため、マッチを使って燃やすことにした。紙が分厚いからなのか、なかなか火が移らない。やっとのことで移ったと思ったら、今度は封筒の接着剤が燃えて煙が上がった。久々に煙を吸ったが、やはり臭い。燃やし始めの場所が悪かったのか、お相手の住所が残ってしまった。持つところもほとんどない状態だからそれはぐちゃぐちゃにしてゴミ箱に捨てた。

  バレンタインの手紙も同じ要領で燃やした。マッチの明かりで文面が見えたが、私はそれを読まないように徹底した。火がついて燃え切るまではしばらくの間読んでしまったが。涙は出なかった。こちらは2枚あるから順番に火をつけた。懐かしい思い出が蘇ったが、それは所詮過去のこと。囚われる心配はなかった。

 先程の失敗を活かして、今度はお相手の住所を先に燃やすことにした。洋封筒なので、裏側の右下に送り主の住所を書く。なので、右下に火をつけた。今度は上手く行ったがやはり煙はあがる。少しだけむせてしまった。

 最終的に私の手元に残ったのは、マッチと燃え残りだけ。 

 これで遂にあの人と別れることができる。こんなこと考えてる時点で吹っ切れてない可能性があるのは秘密だが。

 家に帰って、自室に戻り燃えカスをゴミ箱に捨てた。

 

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