不老不死
「きみ不老不死を羨ましいと思うか」と彼は云った。枯れ木のような男だ。赤茶けた身は細いのに関節ばかりが節くれだって、あんまりみていて気分のいい男ではなかった。
「もちろん」僕は答えた。「死に対する恐怖の超越は、人類の悲願だからね」
それを聞いた彼は含み笑いするような様子で下を向いた。
「結局生きる意味なんてないのさ」と彼は吐き捨てるように云った。
「ひとはどうせ死ぬのさ。だけどね、ああ、僕らは今ある生を存分に享受することを求められているんじゃないかな」
「それは」と僕は返した。「誰に求められているんだい」
さあね、と彼は笑った。諦めきった、渇いた笑いだった。
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