この世は美しいものにあふれている

今日は久々に一人でスケッチブックを持ち、近くの河川敷に出かけた。
私はもともと植物が大好きで、スマホのカメラで四季の植物たちを見つけては撮影するのが大好きである。
 しかし、今はちょっと事情があり、スマホが手元にない。
したがって、スケッチブックをもって出かけることにしたのだった。
 
 今日は風はあったものの、日差しが強く、ちょっと歩くだけでも汗だくになってしまう。しかし、ここ最近、室内にひきこもって散歩もせず、だらだらと過ごしていた。もう何をするにもおっくうで仕方がなかった。
 仕事帰り、「ストレス発散」と称して大好きな甘いお菓子を買って好き放題食べ、更に帰宅して夕食もしっかりと食べていた。
結果体重は増、血液検査では脂質異常、糖尿病予備軍、肝脂肪などに引っかかり、高血圧にもなってしまった。私ももうよい年である。この年になると
病気が出やすい。人ごとのように油断してしまっていた。長年の習慣とは本当に怖いものである。
「毎日時間があるのだから、30分くらい歩いたら?」という周囲の勧め、自分でもどうにかしたいという思いがあり、一日30分歩くことにした。

 河川敷は毎年4月桜が美しい。5月の今は桜の木は新緑が眩しい。
しかし、私の目当ての植物は桜の木ではない。この河川敷で見つけた野バラの花を見ることであった。毎年、バラの写真は撮っていたのだが、野バラは
見たことがない。どんな花が咲くのかわくわくしていた。
 ところが、野バラはまだ蕾みであった。開花時期はもう少し先のようである。残念であったが、楽しみは先でもいい。いきいきと生えている野バラに
元気をもらい、違う花をスケッチすることにした。

 まず、見つけたのがヤハズエンドウだ。この季節になると結構いろいろな場所で見られる植物である。小さいながらも赤紫色の可憐な花がとてもきれいである。マメ科の植物の一つだ。スイートピーと同じ仲間である。
スイートピーは園芸種であり、ピンク、紫など蝶のようなかたちのかわいい。一方、ヤハズエンドウは雑草だ。とても丈夫であり、繁殖力旺盛なので
駆除の対象になっている。でも、私はこの小さくて赤紫色の蝶のような形
をしている花が好きである。
 この花のスケッチを始めた。花びらの形が複雑で、なかなか難しい。
しかし、なんとか特徴を捉えて、描いてみた。もちろんかわいらしいつるも
忘れてはいけない。描きながら、やはり繊細できれいな花だな、と改めて思った。スケッチを終え、今度は、違う野の花を探す。
 次にアカツメクサを見つけた。この花を見たのは何年ぶりだろう。子供の頃は、当たり前のようにあちらこちらで見つけることができた。だが、近年、シロツメクサを見つけることはあるが、アカツメクサを見ることは少なくなったような気がする。こちらもヤハズエンドウと同じく、マメ科の植物である。ヤハズエンドウの花は一つだが、アカツメクサは、マメ科特有の小さい蝶のような花が集まって咲いている。ピンク色でかわいらしい花だ。
 こちらのスケッチに挑戦したのだが、花をひとつひとつ描くのが、私にとっては難しいことであった。程なくスケッチを諦めた。

 河辺の道を歩きながら、花を探す。初めて見る名前の知らない花、野生化したセイヨウカラシナ。小さな黄色い花を咲かせている。その他に、野生化したわすれな草、青い小さい花が星のようできれいだ。確か、いつもこの時期になると実家でも咲いているはずだ。野生化するほどのたくましさがある
とは新発見である。これらの花もきれいだと感じたが、スケッチはしなかった。
 
 河辺を離れ、お宮の近くに行ってみる。このお宮は私の部屋からよく見える。最近、紫色の花のようなものが咲いているのを見つけ、気になっていた。それを思いだし、足を向けてみた。
 歩いていくと紫色の花が群生していた。アヤメの仲間だろう。しかし、私は未だにショウブとアヤメの区別がつけられない。どんな違いがあるのか調べたことがあるはずなのに。そんなことを忘れてしまうくらい、深い紫色の花たちに私は魅了されていた。スケッチせずにはいられなかった。
言葉では言い表すことのできないくらいの美しい色。同じ色を絵の具で表現することは、きっと不可能だろう。

 この世はなんと美しいものにあふれているのだろうか。アヤメの色の美しさに久々に心から感動せずにはいられなかった。

 もう初夏。知らず知らずのうちに季節は移ろいでいく。毎日、過ぎていく一日は同じことの繰り返しのように思えていたが、けしてそのようなことはないということを美しい花たちに教えらた一日だった。河辺の野バラももうすぐ咲くだろう。何色の花が咲くのか、今からスケッチをするのがとても楽しみである。
 












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