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デフォルトってなに?アメリカがカード破産しちゃうかも・・ (愚痴日記#24)

スタッフルームに着いたら、
先輩キャスターMとプロデューサーSが、深刻な顔で話してる。
デフォルトがどうのこうのって・・・。

また、英語だ、嫌な予感がする。
スルーしようと思ったけど、呼び止められてしまった。

「アメリカ国債がデフォルトする可能性がある。知っているよね、デフォルト。」

いつも通り上から目線で、嫌な感じ満載のM。
知るわけないじゃん、そんなこと。
パソコンとかのデフォルト設定なら知っているけどさ・・・。

「知らないなら教えてやる。とても大事な事だからな。デフォルトというのは、債券の返済とか利払いとかができなくことをいうんだ。」
 
 債券が売買できる借用証書だとうことは知ってるよ。
 青学大の原監督が、クレディスイスの債券、AT1債とかいうヤツを買わされて、紙くずになっちゃった時に、Mから教えてもらったから。(愚痴日記 第8日)アメリカ政府が発行した債券。つまり国債が紙くずなるってこと?

「さて、デフォルト(default)は、『債務不履行』という意味だ。債務、つまり借金を返済するという約束が、履行されないことをいう。債券が紙くずになってしまうわけだね。」

「借金が返せないって事は、例えばクレジットカードでの支払いができなくなった時が、デフォルトになるんですか?」
 
 こう聞いたのには、ワケがある。
 私のカード利用額が急増しているんだ。ストレスがたまって、やたらお買い物したり、美味しいも食べたりしちゃたからね。
 カード払いだからと、気軽にどんどん使ってた結果、利用限度額ギリギリになっちゃった。もう、カード使えないし、預金残高も少ないし、来月の支払いができるのかも不安になってるの。

「そうだ、それがデフォルトだ。その危険性がアメリカ国債に迫っているんだ。」
「なんで、そんなことになってるんですか?アメリカって、景気がいいはずでしたよね・・・。」
「確かに景気はいいけど、政府の財政は苦しいんだ。とにかく、出費が増えた。コロナ対策とか、国防費とか、社会保障費とかね・・・。それを国債の増発、つまり借金を増やすことで補ってきた。現金はないけど、カードでバンバン支払ってきたようなものだね。」

 私と同じだ。でも、アメリカには、カードの使用限度額なんてないよね。

「アメリカは世界一の経済大国だから、カードは無制限に使えるって思ってないか?実はあるんだよ。」
「アメリカ政府は、放漫財政を防ぐために、債務の上限を設定している。現在の上限額は31兆4,000億ドルなんだけど、ほぼこの水準に到達している。つまり、カードの利用限度額一杯まで、使っちゃっているんだ。」

「でも、自分で決めた上限金額なら、自分で引き上げればいいじゃないですか?」
「そう簡単には行かないんだ。債務の上限を引き上げるためには、上院と下院の両方での承認が必要になる。実のところ、これまでも何度も上限が引き上げられてきたんだけど、今回は野党の共和党が、意地悪しているんだ。」

「意地悪??」

「条件を付けているんだよ。上限を引き上げてもいいけど、債務の増加に歯止めをかけるために、歳出削減を約束しろとね。」

「それは当然じゃないですか?もっと、節約しろっていうんでしょ。」

 私にはちょっと耳が痛いけど。

「そうなんだけど、共和党は低所得層への支援や気候変動対策など、民主党バイデン政権の看板政策の削減を求めているんだ。当然、民主党は拒否している。でも、現在のアメリカ議会は、上院で民主党が、下院で共和党が多数を握るという『ねじれ』が発生している。両者が歩み寄らないと、議会の承認が得られず、債務の上限引き上げはできないんだ。」

「カードの利用限度額の引き上げが、政治の駆け引き材料になっているというわけですね。」

「その通り。バイデン政権は、共和党がアメリカ国民と経済を『人質』にとっていると批判しているんだ。いずれにしても、議会の承認が得られなければ、追加の借金ができなくなり、満期がきた国債の償還、つまり借金の返済のお金が調達できず、デフォルトに陥る可能性があるんだ。」

「アメリカ国債が紙くずになるって事ですか?」
「それだけじゃない、政府にはホントにお金がなくなるから、公務員の給料が支払われなくなり、お役所の窓口が閉鎖されてしまうことも考えられる。アメリカ人はドライだから、公務員であっても、『給料が支払われないなら、仕事はしません!』ってことになるんだね。また、天気予報にも影響があるとされている。政府が提供している気象データが止まっちゃうからね。他にも、様々な問題が起こると考えられているんだ。」

「まさに、カード破産ということですね。」

「そう、世界一の経済大国が、カード破産しかけているんだ。それは、安易に借金に頼ってきた結果でもあるけれどね。」
「アメリカ政府は、一部の支出を後回しにするなど、必死にお金のやりくりをしている。でも、とても追いつかない。イエレン財務長官は6月1日にも、政府の金庫が空っぽになるので、早く対応するように議会に求めている。カードの利用限度額を引き上げて欲しいとね。でも、政治問題化しているから、与野党の妥協は容易ではないんだよ。」

「でも、最後には妥協するんでしょう?」
「それは甘いな。アメリカでは、この債務上限問題が繰り返し発生していて、クリントン政権時代の1995年にも起こった。この時も議会の合意がなかなか得られず、クリントン大統領は大阪で開催されたAPECの出席をドタキャンしてまで、交渉に当たったんだ。でも、最後まで合意が得られず、政府の資金が枯渇してしまう。他の支払いを止めることで、国債のデフォルトこそ回避したけど、政府機関の一部が21日間も閉鎖される事態になった。だから、油断はできないんだよ。」

「もし、デフォルトが発生したら、どうなるんですか?」
「金融市場は混乱するだろうね。株価は下落し、ドルへの信認が低下して、円高・ドル安が一気に進む。もちろん、アメリカ国内も大騒ぎになることは必至だね。ただ、行政手続き上の問題でもあり、支払い原資は持っているから、アメリカ国債が実際に紙くず化することは考えにくい。こうしたデフォルトは、『テクニカル・デフォルト』と呼ばれていて、それほど大騒ぎすることはないという専門家も多い。いずれにしても、この問題は大きな波乱を生む可能性があるので、ウォッチしておく必要があるというわけだ。」

 アメリカが、カード破産するかもしれないのね。
 確かに、目が離せないかもね。
 でも、まずは自分の事だ。
 カードに頼りっきりにならず、しっかりと支出を減らさないと、アメリカのようにデフォルト危機に陥っちゃう・・・。

 


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