激しい乱気流で死傷事故 シンガポール航空 ”乱気流は予測できないのか?日本の最新研究は?”
2024年5月21日、ロンドンからシンガポールへ向かっていたシンガポール航空のボーイング777型機が激しい乱気流に巻き込まれ、ミャンマー上空で高度約11,000メートルを飛行中に乱高下し、タイのスワンナプーム国際空港に緊急着陸しました。この事故で乗客211人と乗員18人のうち、1人が死亡し、80人以上がけがをしました。死亡したのは73歳のイギリス人男性で、心臓発作が原因と見られています。
シンガポール航空のCEO、ゴー・チュン・ポン氏は、被害者への謝罪とともに乗客支援と調査協力の意向を表明しました。シンガポールの運輸安全調査局はタイに職員を派遣し、詳細な原因を調べています。
乱気流による航空事故は頻繁に起きており、日本でも過去20年間に起きた旅客機の事故67件のうち37件が乱気流に関連しています。これらの事故では119人がけがをし、その内訳は乗客63人、客室乗務員56人です。
対策として、全日空(ANA)は運航前に安全な航路を選択し、運航中に最新の気象情報を提供する仕組みを導入しています。また、乱気流の情報を即座に共有するシステム「EDR」やAIを使った乱気流発生予測の研究も進めています。地球温暖化の影響で乱気流が予測しにくくなっているため、引き続き対策を強化する必要があるとされています。
■乱気流を予測することはできないのか?
乱気流の予測は、非常に難しいと言われています。
乱気流の複雑な性質:
乱気流は予測が難しいほど複雑で不規則な気象現象です。特に、晴天乱気流(CAT: Clear Air Turbulence)は目に見える兆候がなく、雲や嵐のようにレーダーで検知することが難しいため、突発的に発生することがあります。
大気の変動:
大気の状態は絶えず変化しており、風速や風向、温度の微妙な変化が乱気流を引き起こす要因となります。これらの要因が複雑に絡み合うため、正確な予測が困難です。
データの限界:
気象データの収集には限界があり、特に高度1万メートル以上の上空でのデータは限られています。気象衛星や地上の観測機器から得られる情報は広範囲をカバーしますが、細かな局所的な乱気流を予測するには不十分な場合があります。
地球温暖化:
地球温暖化により、気象現象が以前よりも激しく予測しづらくなっています。気温の上昇が大気の不安定性を増し、乱気流の発生頻度や強度が変化しているため、従来の予測モデルが通用しにくくなっています。
予測モデルの限界:
既存の気象予測モデルには限界があり、乱気流の発生を正確にシミュレーションすることは難しいです。モデルの精度を上げるためには、膨大な量のデータと高度な計算技術が必要です。
これらの理由から、乱気流の予測は依然として挑戦的であり、航空会社や気象機関は新しい技術やデータの活用に努めています。
■日本の最新研究
東北大学では、スーパーコンピュータ富岳を用いて、乱気流の予測に挑戦しています。
に解明しており、この結果を旅客機から得られた観測データと比較することで、高高度で発生する大気乱流のシミュレーション結果を初めて検証しています。
また、飛行機に危険な渦の大きさやその生成過程を再現し、将来の乱気流予測に有用な情報を提供しています。
今後の研究が進むことで、このような事故がなくなることを祈っています。
参考資料
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?