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ザシキヒメの『任務』
「コソデちゃんに借りた『まんが』、ちゃんと返さなきゃ………」
ザシキヒメは寺子屋に向かう途中、風呂敷に忍ばせた包みに意識を向ける
ザシキヒメはコソデに「良い子の御本ばかりじゃ、大人になってから苦労するよ~」と
〈むらくも〉で流行っている漫画本を貸してもらった
未知の文化を教えてくれたお礼に、彼女の興味を引きそうな『御本』
現在はユナイテッドサンクチュアリに住む親戚の贈ってくれた『月刊メサイア 4月号~彼方の大地、その名はケテルサンクチュアリ~』というオカルト本を貸していた
ギアクロニクルが来訪してから、あちこちで時空のゲートが開いているのは周知の事実だが
その中には『3000年後の惑星クレイ』に繋がるゲートが何故か数多くあり
月刊メサイアの記者によると、ゲートの向こう側にはユナイテッドサンクチュアリではなく
ケテルサンクチュアリという、現代のユナイテッドサンクチュアリからは想像もつかないような格差社会があるのだそうだ
ザシキヒメとコソデは住む集落が違うため
大人の助けがなければ会う事はできない
しかも当の集落は伝統を重んじる金剛派と成り上がりの不知火派それぞれの傘下のため、大人達同士の仲が悪い
不知火派にも偏見のない金剛派は………いるにはいるが、そういう金剛派自体、別の偏見の対象だ
口うるさいユラ先生に居残りで反省文を書かされないよう、
「密輸した本を、見つからずに交換」すれば
ザシキヒメとコソデは『任務達成』という事になる
コソデに自慢されたスターゲート産の『子どもケータイ』という通信端末を
説得の末、『安心見守りサポート』に加入する事を条件に買ってもらったザシキヒメは
コソデと放課後各々の里から話す事はできるが
物品の受け渡しは会える寺子屋でなければできない
まぁ、ユラ先生の事は大丈夫だろう
春先だからか、ユラ先生は肌ツヤは良いが浮かれている
「天下無双のナントカ童子」という新しい推しができたとか言っているが、話を聞く限りでは酒好きの酔っぱらいに過ぎない
「ユラの名を好きになってもらって~」と語る先生
先生、それ本命が別にいる男のセリフです
まぁいい、任務達成のためにはむしろ好都合
そのまま良い夢を見て眠っていて下さい
そう決意して目を細めたザシキヒメの表情は
間違いなく〈ぬばたま〉の忍のものだった
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