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Mauritshuis、フェルメール、デルフト眺望 (1659/60)

フェルメールのほとんど唯一といっていい風景画で、“真珠の耳飾の少女“と同じデンハーグのマウリッツホイス美術館の所蔵品。フェルメールの作品としてはかなり大きな画面で、初期の”マリアとマルタの家のキリスト”と“取り持ち女”の次に大作となる。フェルメールの絵としては)モチーフのユニークさもさることながら、そのマチエールにも他の作品とは違う特徴が見られる。まず、遠景の明るいピンクの家の壁には壁の材質を表現するため、砂が混ぜられており、繰り返される薄塗りのために鏡面のような仕上がりになっている他のフェルメール作品とはかなり違った質感に仕上がっている。また、運河の水面、手前の二人の婦人が立つ土手など画家の筆致を感じさせるが、これも他の作品には見られない。唯一、二人の婦人の表現にフェルメールの特徴的なマチエールが見られる。 
左手の船の縁に描かれている光の粒は彼の室内画の椅子、婦人のネックレス等にしばしば登場するが、そのため船は濡れて光を反射している印象を与える。おそらく、画面上方に描かれている雨雲が雨を降らせた直後なのだろうか。
中央の教会がこの絵の主要モチーフだが輪郭はぼかされて描かれており、反対に手前の二人の婦人の輪郭ははっきり表現されている。おそらくは、このような処理をすることにより、手前の婦人と遠方の教会との間にある空間を表現しようとしたのだろう。
ともあれ、17 世紀、雨上がりのデルフトの町に立つ二人の婦人は(まるで、液体窒素に浸された金魚のように、)時が止まったことも知らされず、今も永遠の会話を続ける。

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