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Musée Malraux Le Havre、Eugene Boudin 、"Twilight on the commercial Basin at Le Havre" (1890)

若きモネに本格的な絵を勧めたことでも良く知られる、ブーダン66歳の作品。熟達した筆致が暮れゆく港町の空と景観を的確に表現している。すばやい筆使いが心地よく、その筆触はモネ晩年の睡蓮の連作を思いださせる。モネとの違いは水面の描写でも使われている筆触分割が使われず、モネのパレットには無かった黒が右手の帆船の影、マスト、後方の桟橋に多用されていることだろうか。
この絵が描かれた15年前、この絵の写生場所から一キロと離れていない海側で、モネが“印象-日の出”を制作している。ほぼ同様の構図で1872年に制作され、第一回印象派展(1874年)に出品された作品だが、晩年のブーダンがこの絵の制作に当たってモネの“印象-日の出”を想起していたのは間違いないだろう。
モネは最初の師でもあるブーダンに対し終生、感謝の意を表していたという。この絵の描かれた時期のモネのブーダン宛の返書に、「私はかねがね、あなたに抱いている愛情と感謝の念は、ご承知の通りです。私に物の見方ととらえ方を最初に教えてくれたのはあなたであるということを、私は忘れていません。」とある。
暮れ行くルアーブルの小品は、新しい絵画の探求のため苦楽を共にしたモネの友情と感謝の念に対する返礼であるのかもしれない。

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