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Gemeente Museum、ピート モンドリアン、“ヴィクトリーブギウギ” (1942-1944年)

戦火を逃れニューヨークで描かれたニューヨークブギウギとともよく知られている作品である。
この作品が制作される数年前、1941年ごろからカラー接着テープを材料に制作している。この作品にもまた既製品のテープが使われているが、当初、黒絵の具によるストライプの代替として使われていたものがここでは短く切られ、ストライプ上の点として幾度も張り合わされながらストライプ上を覆っている。マチエールはベースとなっている白、グレイ、青、赤の部分は絵の具の厚塗りで、従来の処理と同じだが、ストライプの部分、あるいはベースの色面上の点は彩色された紙、あるいはカラー接着テープが張られている。場所によっては幾度も張り合わされ、全体としてささくれ立った印象をあたえる。これは前作のブロードウェイブギウギと比べても顕著で、2年以上もの制作期間を経た後も未完というこの作品の特徴となっている。
構成上もこの時期に頻繁に登場する平行した2本の線(これはブロードウェイ ブギウギも同様)はここでは姿を消し、線自体も途中で色面に中断、あるいは吸収されてしまい完結しない。中央の3つの白い色面(中央の面は十字の線により分断されている)が感知できるが、全体としては線、点、面が渾然となり、幾重もの面、空間を感じることが出来る。
1931年、彼の芸術論「新しい芸術‐新しい生命」の中で“間近に迫った芸術の終焉”を予言している。もはや絵画は日常的な経験と関連を持つことはなく、それを承知している芸術家はやがてそれ以上描くことが出来なくなる、と警告している。果たして、この時期に描かれた、“二本の線のある菱形のコンポジション”の後、どのような発展が考えられたのであろう。もはや、画家には白地のキャンバスを提示することしかないように思える。ところが、創作はこの後も続き、色彩、形体も徐々に、おずおずとではあるが作品の中に発ち現れる。
 
題名の“ヴィクトリーブギウギ”は第二次大戦の勝利を予感して付けられた題名と説明されている。
それは同時に、絵画の復活の予感であったのかもしれない。

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