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The National Gallery、ヤン ファン アイク、“アルノルフィーニ夫妻”(1434)

まず“神の手”と呼ばれたファンアイクの細密描写の技量に目を奪われる。 シャンデリア反射する光の表現。鏡に映された部屋の細部。窓から差し込んだ光を受け、無限のグラデーションで現された背後の壁。木枠に映る色ガラスを通した緑と赤の光の気配。花婿の毛皮の質感。花婿の衣装の襞の表現。犬の毛一本一本の明暗。などなど、画家の技量が画面全体を支配している。この細密描写によって描かれている物だけではなく、部屋の冷たく、少し淀んだ空気、外界から差し込む光までもが看取できる。つまり、物を絵描くことにより、本来的に不可視な光と空気(空間)までもが表現されており、このことがこの画家の絵画史上の意味をいっそう重要なものとしている。
ファンアイク見出した光と空気は250年後、同じフランドルの画家フェルメールに受け継がれる。但し、フェルメールが再現した光と空気は、繊細に変化する輪郭とその処理(輪郭のぼかし)によって、しっとりとしたより日常的なものと変化しているが。
この絵のテーマはアルノルフィーニ夫妻の婚姻だが、中央の鏡の上に‘Johannes de eyck fuit hic’ (Jan van Eyck was here)と書かれていることからそれにファン アイク自身が立ち会ったという設定になっている。そのことから、鏡に映っている男はファンアイク自身とされている。絵画のシンボル的な意味を読み解くことは絵画鑑賞の楽しみの一つでもあるが、試みに可能な範囲で各アイテムのメタフォリカルな意味を調べてみた。これらのシンボルから何を汲み取るかは鑑賞者の手にゆだねられる。

シンボルについて
オレンジ:     原罪。
手ぼうき:     儀式を前にしての清めの象徴。
鏡:                 賢明、真実、傲慢、虚栄、淫欲の象徴とされる。
数珠:            信仰の象徴。
蝋燭:            信仰の象徴、シャンデリアは7つの燭台があるが(後ろの1つは                   陰になって見えない。)これは通常祭壇の燭台とされる。
生命の象徴ともされるがここでは7つ燭台の内一本だけが光を灯す。
犬:                忠誠の象徴、特に女性の足元に描かれた犬はその女性の夫への貞節を示す。また、夫婦が描かれた肖像の場合も同様の意味を表すが、同時に嫉妬の擬人像の持ち物とされる場合もある。
サンダル:    婚姻の神聖、聖なる場所。
毛皮:             富の象徴

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