パラグラフ・ライティングを習得して、世界に飛び出そう!

 パラグラフ・ライティングをご存じですか?論文やレポートを書く際の世界標準の書式です。
 論理的な内容の文章を短い時間で概要がつかめるとても便利な書き方です。IT化とグローバル化が進み、スピードが重視されている世界では一般的に使われています。欧米では中高校で、一年以上かけて、この書法を習います。日本でも、近年、高校の英作文のカリキュラムに一部取り入れられられたり、大学の卒業論文で指導を受けられたりと、少しずつ広まってきました。しかし、とても普及しているとは言えない状況です。このままでは日本は世界に後れを取るのではないか、という危機感を持ち、この書法を普及させるべく記事を書くことにしました。

1.パラグラフ・ライティングとの出会い
 私がパラグラフ・ライティングと出会ったのは、30年ほど前の大学院修士課程の英会話の授業です。カナダ人のバーバラ先生に教わりました。今と違って、外国人の先生は少なく、ネイティブに英語を習うのは初めてでした。時々レポートの宿題が出たのですが、院生たちのあまりのできの悪さに、バーバラが、欧米式のレポート書き方を教えてくれました。それがパラグラフ・ライティングです。
 その後中学や高校で社会科の講師となり論文から離れていました。しかし、最近再び歴史の論文を書きはじめ、その過程で日本にはパラグラフ・ライティング形式の論文はまだまだ少ないことを知りました。そこで勤務先の図書館の蔵書を調べ、日本語のパラグラフ・ライティングの指南書を探し、まとめました。

2.パラグラフ・ライティングとは何か?
 5で紹介する『論理が伝わる世界標準の「書く技術」「パラグラフ・ライティング」入門』(倉島保美著)を参考に、パラグラフ・ライティングについて、簡単に説明します。
 パラグラフとは、日本の段落とは違って、一つのトピック(主題)だけについて書く文章の集まりを言います。パラグラフ・ライティングでは、このパラグラフを組み合わせて文章を構成します。
 パラグラフの最初の文をトピックセンテンスといい、そのトピックの要約を書きます。そして二文目以下には補足情報を書きます。これをサブセンテンスといいます。時間のないときは、トピックセンテンスだけ読めば、そのレポートの概要がわかるようになっています。
 文章の構成は、総論―各論―結論の三段構成にします。論文のように各論が長い場合は、章立てをしてパラグラフを論理的につなげる必要があります。
 最初の総論(アブストラクト)では、その文章の結論や結果をまとめたものを書きます。ここだけ読むと、その論文の内容がわかります。
 各論では、結論に至った理由やデータの分類、相違点・類似点などを説明していきます。また、各論で章立てをするときは必ずその章の総論をはじめのパラグラフで書きます。
 結論では総論で述べたことと同じ内容でまとめます。ここで、新しいトピックを持ち出してはいけません。
 文章に書く情報は三つにまとめたり、分類したりすると効果的です。例えば、理由を三つ、例を三つ、共通点を三つなどです。ただし無理に三つに絞る必要はありません。
 パラグラフ・ライティングは、情報化社会の中で必要とされている書式です。特に、海外向けの論文などはこの書式を使わないと、全く読んでもらえないこともあるので注意しましょう。ぜひ練習して、この方法を修得してください。

3.パラグラフ・ライティングを使って小論文を書く
 パラグラフ・ライティングは、大学入試やテストの小論文を書く時に使えます。いきなり長文に挑戦するのではなく、最初は短い文章を書いて慣れていくと良いでしょう。 

 しかし、 すべての文章にこの形式を使えるわけではありません。
 以下英語のパラグラフ・ライティングのやり方に沿って、小論文の書き方を説明します。
 英語の文章は次のような四つの分野に分けられます。(『パラグラフ・ライティング指導入門―中高での効果的なライティング指導のために』p24参照)
(1)narration(語り文)
(2)description(描写文)
(3)exposition(説明文)「原因と結果」「分類」「比較・対照」など
(4)argumentation(論証文・意見文)
(1)(2)の場合、パラグラフ・ライティングは使いません。日本でいうと、小説やエッセイのような文章ですね。
(3)(4)の場合はパラグラフ・ライティングを使って書くとうまくまとまります。これは日本語の小論文にも当てはめることができます。
 例えば、「どうしてこの大学を選んだのか」や「将来の夢は」の小論文は(1)に分類されるのでパラグラフ・ライティングは使いません。
 また、歴史の問題、例えば「明治政府の廃藩置県について説明せよ」は(2)に分類されますから、パラグラフ・ライティングは使わずに、年代を追って説明した方がよいです。また、「ビスマルクの外交政策とヴィルヘルム二世の外交政策の違いを説明せよ」でしたら、分類は(3)になりますから、パラグラフ・ライティングを使いましょう。

4.パラグラフ・ライティングの例
 とても分かりやすい小論文の例題を書いてみました。
問 高校の制服はあった方がよいか、ない方がよいか、あなたの考えを述べなさい。
(太文字は、トピックセンテンス)
 私は、高校の制服はあった方がよいと考える。その理由は次のような利点があるからである。
 利点の一つ目は、経済的なことである。制服自体はある程度値が張るが、丈夫にできているため、十分に三年間の使用に耐えうる。ほかの洋服を買う必要がなく、お金がかからない。
 利点の二つ目は、なにを着るか迷う必要ないことである。着るものは決まっているので、安心して時間をほかのことに回すことができる。
 そして、三つ目は、その学校の生徒であるという自覚をもてることである。学校では同じ制服を着た仲間がいることで、安心して勉強や部活に励むことができる。また、学校以外では、制服を着ることによって、その高校の生徒であるという誇りをもつことができる。
 以上の点から、私は制服があった方がよいと結論する

 小論文問題に字数制限がある場合は、無理に改行せず続けて書きます。
 また、字数が足りないときは、最後の結論も省略できます。

5.パラグラフ・ライティングを解説している本の紹介
 勤務先の図書館にある論文の書き方に関する本を50冊ほど調べましたが、パラグラフ・ライティングに言及したものは、数冊でした。その中から、分かりやすい本を紹介したいと思います。
①『論理が伝わる世界標準の「書く技術」「パラグラフ・ライティング」入門』倉島保美 講談社ブルーバックス(2012)
 ズバリ、現役のパラグラフ・ライティング指導者の書き方指南!
学生も参考になりますが、どちらかというとビジネスマン向けです。
後半は添削問題があります。本気で世界と戦いたい方は、必見。
②『パラグラフ・ライティング指導入門―中高での効果的なライティング指導のために』大井恭子編 田畑光義/松井孝志著 大修館書店(2008)
 英語の教師用の英語のパラグラフ・ライティング指導法の本。後半は教師用です。前半は高校生・大学生が読んでも役に立ちます。大学入試の英作文はこれでバッチリ。
③『理科系の作文技術』 木下是雄 中公新書 中央公論社(1981)
 世界と戦う現役の科学者による論文の書き方指南書。データ集めから資料整理、論文の構成まで。パラグラフ・ライティングについても説明してあります。理数系の論文用です。                        
④『レポートの組み立て方』 木下是雄 ちくま学芸文庫 筑摩書房(1994)
 ③と同じ作者による指南書。文系の論文にも使えます。
⑤『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』 戸田山和久 NHK出版(2012)
 論文を書く前の準備について、順番に丁寧に説明してあります。マインドマップによる発想法から、アウトライン(論文の構成)のたて方、パラグラフ・ライティングの書き方まで、イラスト、表解説付きでわかりやすいです。ただし、説明が先生と学生の会話で進むので読みにくい人もいるでしょう。

以上です。ぜひ参考にしてください。




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