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かくて四月は移りゆく

四月が、もうすぐ終わろうとしている

四月に入ってからのわたしは、

ディケンズの「クリスマスキャロル」さながらに、

「去年の亡霊」に、随所随所で悩まされている

まず、新しいほうの勤務校

学校の入り口のテニスコート

テニスコートをふわ~っと歩いている

とある若者がいそうな気がしてしまう

去年まで車での通りがかり、

いるかな~、あ、いたいた!と

こっそり探していたっけ、と思う

午後の授業までの空き時間

社会科準備室の時計を見上げる

去年はこの時間、

とある少女が帰ってくるのを

編み物をしながら、

居間の時計を見上げて待っていたっけ、と思う

黒いキャップをかぶってランドセルを背負った

とある少女

別な日、別なほうの勤務校に行けば

渡り廊下の向こう、

鏡の取り付けられた廊下の角を曲がると

去年の少年たちがにこにこ笑って

「ちわっす!」「ちわっす!」「せんせい、こんにちは~😊」

と、声を掛けてきそうな気がしてしまう



あ~、もう。

と、首を横に振る

早く慣れなさいよ、

みんなちゃんとまだ居るんだから。




授業が終わって渡り廊下を歩いていると

上の階の窓から、わたしを呼ぶ声がする

亡霊ではない、現実のワイルド科が

こっちを見て、手を振っている


ほらね。


久しぶりに見ると、みんな冬より日に焼けて、

冬より一回り大きくなっている


少年たち、もう、少年じゃなくて

若者だね。




書いたら、亡霊から少し

解放されそうな期待もあったりする



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