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リュック

「雨が降って、ローカル線は動かないから、ちょっと遠いけど、交通局のバス停からなら乗れるみたいやから、そこからバスと◯◯本線で予備校行ってくるわー。」
と、朝早くに出掛けていった とある予備校生から、30分後電話がかかってきた。
 スマホで調べただけの、行ったことのないバス停だったから、スマホの地図の言うとおりに歩いて行ってみると、バス停が移転して「ない。」と言う。もう間に合わないので迎えに来て、◯◯本線の駅まで乗せて行ってくれ、と言う。

 出発前のとある女子中学生に、先払いの「いってらっしゃい」を言って、とある予備校生を探しに出掛けた。

 運転しながら、午前中にやるべきいろんな雑用と仕事が、頭に浮かんできてしまって、ちょっと焦りを感じてしまう。そして、何もこんな電車も動かないような日に、わざわざそこまでして予備校に行く必要があるんだろうか?と、とある予備校生を恨めしく思いもする。
 欠席連絡を入れたり、1日予定がくるったりするのが嫌なのだろうけど、そんなの、大人になっていけば避けられないんだし、とも。


 ぶつぶつ考えながら運転していくと…………、

 あれ? なかなか言われたところに着かないよ?
 頭で思っていたよりも、そこがずっと遠くだということに、気づいた。古いほうの勤務校に行くときに曲がる角を反対に曲がって行った先の辺りなのだけど、歩いてみたことってなかった。

 えー?こんなところまで、雨の中歩いたの?30分で?


 やっと見えたバス停跡に立って、大きなリュックを背負った身長181㎝?がひょろっと立って、一生懸命手を振っている。
 近づくにつれ、雨だけでなく、背中じゅう汗まみれになって濡れているのがよく見える。
 別に、安易に、迎えに来てって言ってたわけじゃなかったんだ。

 なんか、かわいそうなことをしたね? とある予備校生。
 去年までは、要らないよ、と言われるまでは、して欲しいと言うことで、してあげてもいいことなら、喜んでしようなんて思っていたのに。ちょっと忙しくなったぐらいで、わたしは。


 

 

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