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もうひとつの童話24   ぼくは とりの ふんたろう

ぼくは とりの ふんたろう

 みかんの きの はっぱの うえ。
 ぼくは とりの ふんたろう。
 なまえのとおり とりの ふん。
 こげちゃ と しろの まだらもよう。
 まだ ぬくぬくで うごけない。
 よこのはっぱに のっかった
 こげちゃ と しろの まだらの むしが
 むしゃむしゃ むしゃむしゃ はっぱを たべてる。
「きみも、とりのふん?」
「ちがうよ。
 あげはちょうの ようちゅうだよ。」
「でも おなじいろで、おなじかたちで、おなじおおきさだよ?」
「きみのまねを してるんだ。」
「どうして?」
「とりに たべられないようにだよ。」
「ふーん。」
「でも、もうすぐしたら、こんどはおおきな めだまのもようがついた、
みどりいろのようちゅうに、へんしんするんだ。」
「へんしんできるの?」
 おどろいた。
「へんしんするのは、たいへんなんだ。
 だから、もりもりはっぱを、たべないと。
 そしてさいごに、はねがはえて、あげはちょうになって、そらをとぶんだ。」
 ようちゅうは、いそがしそうに、はっぱをたべている。
「いいなあ、ぼくも、へんしんして、そらをとびたいな。」
「いっしょに、そらをとぼうよ。」
 ようちゅうは わらっていったが そらをみあげて あわててはっぱのうらにかくれた。
 むくどりが とんできた。
「ぼうずは、とりのふんか。」
 ざんねんそう。
「ここに、あげはのようちゅうが、いただろう?」
 むくどりは くびを ひねってる。
「いたよ。でも、もうにげたよ。」
「そうか、あいつら、とりのふんにばけたり、
 おおきなめだまをつけて はっぱにばけたり、
 かくれるのがうまいからなあ。」
 そして、ぼくをみて、
「とりのふんは、たべれないなあ。」
 ざんねんそう。
 ぼくは、たずねた。
「おじさん、ぼくもへんしんして、そらをとべるようになるかなあ?」
「それは、むりだ。
 とりのふんは、どこまでいっても、とりのふんだ。」
「なにか、いいほうほうは、ない?」
「そらあ、いっしょうけんめい はっぱをたべて、おおきくなることだな。
 そうしたら、みどりいろになって、はねがはえてくるかもしれんなあ。」
「ほんとう?」
「わからんなあ、わっはっは。」
 おかしそうにわらって、とんでいった。
「くやしいなあ。
 そらを とびたいなあ。
 ようし、がんばるぞ!
 ぼくは、おなかいっぱい みかんのはっぱを たべた。
 あさも ひるも よるも たべて たべて たべまくった。
 すると からだが みどりいろになった。
 あとは、はねだけ。
 でも、いくらたべても へんしんしない。
 あげはちょうの ようちゅうは、とうとう さなぎになって ちょうになって、とんでいった。
「まってるよ。そらでいっしょにあそぼうね。」
 はねをひろげて ひらひら とんでいった。
 ぼくは、やっぱりむり。
 がっかりしてたら、むくどりが またやってきた。
「おー、からだは みどりになってるな。」
 ぼくは、なきそう。
「せっかく、みどりになったのに。
 ぜんぜんはねが、はえてこない。」
「そうだろうなあ。
 それなら、こうしてやろうか。」
 むくどりは、おおきなみかんのはっぱを よんまい とってくると、
ぼくのからだに つけてくれた。
「はねのかわりに。これでどうだ?
 みかんの はっぱ ちょうに へんしんしたぞ。」
 おかしそうに、わらってる。
 へんなかっこう。
 こんなんで、とべるかなあ?
 ぼくは、みかんのはっぱで、はばたいた。
 いっしょうけんめい はばたいた。
 なんどもなんども はばたいた
 おう からだが ういた。
 もういちど おもいきり はばたいた。
「とべる とべる とべるぞ!
 みかんの はっぱ ちょうに へんしんしたぞ!
「おじさん、とべたよ、ありがとう。」
「ぼうず、がんばれよ!」
 おじさんは まんぞくそうに とんでいった。
 ぼくは、あげはちょうを さがした。
「ほら、とべるようになったよ。」
 あげはちょうは、おかしそうにわらった。
「みかんの はっぱで ちょうに なったよ。」
 ぼくも わらった。
 わらいながら いつまでも おいかけっこして そらを とびまわった。

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