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彼との別れ道

「ごめん、仕事入った。」
この一文を目にするのは何回目だろう。またかと思ってモヤっとする自分と会わずに済むとホッとする自分がいる。恋人なのに会わなくて済むって思うのはおかしいことだろうか。
彼に悪気はない。今日だってこの間の埋め合わせで夜ご飯行こうとお店も予約してくれてた。でも彼は仕事が1番なのだ。付き合う前、仕事の話をしている熱心なところがが私も好きだった。でも今は付き合うべきではなかったなと後悔している。彼のことを嫌いなわけではない。でもただ恋人としては向いていなかった。付き合うということに関して彼は適してなかった。でも私たちはお互い別れを切り出せない。要はお互い寂しいのだ。都合の良い恋人という関係で、その関係性が寂しさを埋めるには丁度いいのだ。"恋人がいるから寂しくない"そう思えてる私たちは、まだ可愛いのかもしれない。でも、じゃあ私は今幸せなのだろうか。
彼が予約してくれたお店に友人を誘う。了承の返事をもらったので一緒に行った。とてもじゃないけど1人では行きにくい店だった。友人に感謝を伝えると
「いやまあ良いけどさ本当に来てよかったの?」
といつもは揚々としてる友人が心配してくれていた。私たちにとってはいつものことなので「大丈夫」と伝えると「それなら良いけどさ」といつもの彼女に戻って、そこからは2人で楽しく食事した。
お酒も入ったからか私は唐突に「私って幸せなのかな?」と彼女に言ってた。「知らん。」と言う彼女にそりゃそうかと思いながらも彼女は続けて言う。「だけど自分が不幸だと思ったらそれは不幸なんじゃない?彼氏がいるからって別にそれが幸せなわけじゃないしね。」彼女は最近彼氏と別れたばかりだった。そんな人にこんな浅はかな悩みをぶちまけたことが申し訳なくなった。「ごめん。」と言いかけて彼女はまた続ける。
「いじめとかと一緒じゃん?本人がいじめられてるな思ったらいじめだし、彼氏いる人でも別に彼と上手くいってなかったらそれは違うし。恋って幸せだけじゃないし。うーん、なんかさ彼氏がいるから幸せだよなって大半の人思ってると思うけどそんな訳はないんだよね。多分みんなそれ思い込んでるんだよ。だって自分に言い聞かせてることって大体間違ってるじゃん?いじめられてる子は私はいじめられてないって自分に言い聞かせるし、虐待受けてる子は私が悪い子だからって悪いお母さんを庇おうとするし、私は幸せだと言い聞かせてる人は大抵幸せじゃないと思うよ。だって幸せって思い込むものじゃないから。自然に思うことだと思うから。涙とかと一緒。自然に出ちゃうものって感じ。」
彼女の言葉にそういうことだったのかと納得する自分といやでもと否定する自分がいる。私は幸せだとまだ思いたい自分がいる。でもその自分がお前は不幸だと叫んでいる。答えはとうに出ていて、先延ばしにしていた。分かりきったことをちゃんとはっきりと言葉にして欲しかっただけなのかもしれない。
「でも、結局これは2人の問題だし2人でちゃんと話し合いなよ。それとあんたの幸せはあんただけのものだからそれはちゃんと掴み取らないと勿体無いよ。時の流れは早いから無駄にしないほうがいいね。」だから彼女は恋人と別れたのかとまたしても彼女の言葉に納得していた。本当のことは分からないが。
後日、彼と会って別れを告げる。彼はちょっとだけ寂しそうな顔してたけど「分かった。」とあっさり言ってまた仕事に戻って行った。結局彼も自分から言い出せなかっただけで同じことを思っていたのかもしれない。そうだったらいいなと思いながら、お前は私を幸せにしてくれるんじゃなかったのかと腹が立つ自分もいた。
私を幸せにしてくれなかった彼が私以外の誰かを幸せにしてくれてたらいいなと帰り道に願った。

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