お守り

みんなきっと、これを持っておかないと不安だというものがあるだろう。私は本だ。私はとにかく文字を見てないと落ち着かない時がある。待ち時間だったり、一人でいる時間の時何か文字を追っていたい。本は私に落ち着きをくれる。本があれば私は私でいられる気がする。本を読めば今の世界を忘れられる。読まなくてもカバンに入ってるだけで''大丈夫だ''と言ってもらえてる気がする。辛い時、悲しい時、物語に救われる。大事な大事なお守りで、本さえ持っていればどこへでもいけるようなそんな時がある。

今日スタバで並んでいたら目の前に可愛い女の人がいた。おしゃれだな、可愛いなと思ってその人を見ていたらその人のカバンに一際目立つものが付いていた。防犯ブザーだ。
え?こんなにおしゃれなのにどうして?そう思った。でもそれと同時にこの人にとってきっと何か事情があってこれをどうしてもつけないといけない何かがあるのかと考えて少し泣きそうになった。防犯ブザーをつける理由なんて少し考えれば分かる。考えても考えても悪いことから守るためだと、どんなに頑張って思考してもおしゃれだからという理由には行き当たらなかった。

この人にとってはこれがお守りなのだろう、そう思った。これは全部私の妄想だ。妄想だが、そう思っただけでとても涙が出そうだった。この人も絶対つけたくないだろうおしゃれな服装に防犯ブザーをつけなければいけない過去があるのかと、それを考えただけで苦しかった。乗り越えて欲しいと思った。何も知らないお前が語るなという話なのだが。でも絶対絶対救われて欲しいと思った。救われるべき人だと、助けられるべき人だと。
防犯ブザーを全否定するわけではない。つけたい人だっているはずだ。でも少なからず私は、嫌だった。高校時代カバンに学校で配られる防犯ブザーをつけることが規定だった。女子校だったからだろう。変な人から身を守るためだった。色も学年ごとで決められていて防犯ブザーの色で何年生か分かるようになってたしそれも嫌だった。とにかくダサかったし、他校の人に「え?防犯ブザーつけてるの?やば」と言われるのがとても惨めだった。外せば生徒指導行きで、服装検査でも防犯ブザーのチェックは必ずあった。音が鳴るかまでした。あの甲高い音がどうも苦手だった。体育館で一斉に鳴り響くあの空間に私は3年間通っていても慣れなかった。

あの人が何の目的でしてるかは分からない。つけたくてつけてるかもしれない。でもいつか防犯ブザーをつけずに、大事な大事なお守りを手放すことができることを私は祈る。

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